小児喘息急性増悪の救急外来治療―デキサメタゾンへの切り替えが進んでいる?(米国の横断研究; Pediatrics. 2025)

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小児喘息に用いられるステロイドの傾向は?

小児喘息の急性増悪に対する経口ステロイド療法は、従来プレドニゾロン/プレドニゾンが主流でしたが、デキサメタゾンも同等の有効性を持つと報告されています。しかし、各薬剤の使用傾向の変化については充分にデータがありません。

そこで今回は、2010年から2024年にかけて米国小児救急外来でのステロイド選択の傾向を調査し、さらに選択された薬剤と再受診率・入院率の関連を評価した横断研究の結果をご紹介します。


試験結果から明らかになったことは?

試験デザイン:後ろ向き横断的解析
対象:

  • 米国内28病院の小児救急外来
  • 18歳未満
  • 急性喘息増悪で救急外来から退院
  • デキサメタゾンまたはプレドニゾロン/プレドニゾンを投与された症例

解析期間:2010年〜2024年
主要評価項目

  • ステロイド選択の年次推移(ブレークポイント解析)
  • 7日以内の救急外来再受診率
  • 7日以内の入院率(再受診に伴うもの)

主な結果

◆患者背景

  • 総症例数:491,576件
  • 中央年齢:6.2歳(IQR 4.0〜9.8)
  • 男児:62.4%
  • プレドニゾロン/プレドニゾン:216,874件(44.1%)
  • デキサメタゾン:274,702件(55.9%)

◆ステロイド選択の変化

  • 2010年:91.1%がプレドニゾロン/プレドニゾン
  • 2024年:95.3%がデキサメタゾン
  • 明確な変化点(ブレークポイント):2013年9月2015年12月
  • 両ブレークポイント間(27か月間):デキサメタゾン採用率は月あたり0.7%増加(95%CI 0.6〜0.9%)

◆臨床アウトカム

  • 7日以内の再受診率
     デキサメタゾン群:やや高い(調整オッズ比 aOR 1.07, 95%CI 1.03–1.11)
  • 7日以内の入院率(再受診伴うもの)
     デキサメタゾン群:低い(aOR 0.90, 95%CI 0.84–0.97)

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◆臨床的意義

本研究は、過去15年間で小児喘息急性増悪における経口ステロイドがプレドニゾロン/プレドニゾンからデキサメタゾンへ大きくシフトしたことを明らかにしました。
特に2013〜2015年にかけて採用が急速に進み、現在ではほとんどの症例でデキサメタゾンが選択されています。
臨床アウトカムとして、デキサメタゾンは再受診率がやや高いものの、入院率の低下と関連しており、外来治療後の重症化防止に寄与している可能性があります。


◆試験の限界

  • 観察研究であり、因果関係は証明できない
  • 投与量や投与回数、服薬アドヒアランスの詳細が不明
  • 米国のデータであり、日本など他国への一般化には注意が必要
  • 再受診理由が喘息増悪以外かどうかの詳細分析は行われていない

◆今後の検討課題

  • 再受診率増加の背景解明(症状再燃か、別の要因か)
  • 服薬コンプライアンスや副作用発生率の比較
  • 日本を含む国際比較研究
  • 在宅管理指導や吸入薬併用との組み合わせ効果の検討

同種同効薬の比較研究とまでは言えませんが、薬剤の使用傾向の変化、そしてアウトカムの比較参考データとして、非常に意義のある研究結果です。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 米国の横断研究の結果、小児救急外来を退院した喘息患児におけるデキサメタゾン使用への移行が明らかになった。これは、最初のデキサメタゾン臨床試験が発表されてから約15年後の2013年から2015年の間に特に顕著であった。

根拠となった試験の抄録

背景: これまでの研究で、デキサメタゾンは喘息増悪の管理においてプレドニゾロン/プレドニゾンと同等の有効性を示すことが示されています。本研究では、救急外来(ED)退院後の小児における喘息に対するデキサメタゾンの使用傾向を評価し、コルチコステロイドの選択と再診および入院との関連を評価することを目的としました。

方法: 2010年から2024年の間に28病院を対象に、急性喘息増悪で救急外来から退院し、デキサメタゾンまたはプレドニゾロン/プレドニゾンを投与された18歳未満の小児を対象とした後ろ向き横断解析を実施した。ブレークポイント解析を用いてコルチコステロイド選択の傾向を明らかにし、コルチコステロイド選択と救急外来への再診および7日以内の入院につながる再診との関連を評価した。

結果: 491,576件の受診(年齢中央値6.2歳[IQR 4.0-9.8]、男児62.4%)を対象とした。このうち、216,874人(44.1%)がプレドニゾロン/プレドニゾンを、274,702人(55.9%)がデキサメタゾンを投与された。デキサメタゾンの使用が増加した(2010年にはプレドニゾロン/プレドニゾン投与率が91.1%であったのに対し、2024年にはデキサメタゾン投与率が95.3%に増加する)。2013年9月と2015年12月にブレークポイントを設定した。これらの時点間の27ヶ月間に、デキサメタゾンの使用率は月あたり0.7%増加した(95%信頼区間0.6-0.9%)。デキサメタゾンは、プレドニゾロン/プレドニゾンと比較して、再診の調整オッズが高く(1.07、95% CI 1.03-1.11)、7 日以内の入院の調整オッズが低い(0.90、95% CI 0.84-0.97)ことが示されました。

結論: 小児救急外来を退院した喘息患児におけるデキサメタゾン使用への移行が明らかになった。これは、最初のデキサメタゾン臨床試験が発表されてから約15年後の2013年から2015年の間に特に顕著であった。

引用文献

Adoption of Dexamethasone for Asthma Exacerbations
Sriram Ramgopal et al. PMID: 40467067 DOI: 10.1542/peds.2024-070153
Pediatrics. 2025 Jul 1;156(1):e2024070153. doi: 10.1542/peds.2024-070153.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40467067/

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