リウマチと心血管疾患|アジア人RA患者で判明したリスクと予防のヒントとは?(後向きコホート研究; Semin Arthritis Rheum. 2018)

eldery woman opening a box of pills 08_炎症・免疫・アレルギー系
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🔍 リウマチ患者に潜む心血管リスクとは?

関節リウマチ(RA)は関節の炎症や破壊を引き起こす疾患として知られていますが、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中といった心血管疾患(CVD)のリスクが高まることも近年注目されています。

しかし、アジア人集団での具体的なリスクや、薬物治療がCVDに与える影響については十分に明らかではありませんでした。

そこで今回は、韓国のデータベースを用いた後向きコホート研究の結果をご紹介します。


🔬 試験の概要|韓国全国データベースを用いた大規模研究

本研究は、韓国の国民健康保険請求データベース(2009〜2013年)を用いた後ろ向きコホート研究です。

項目内容
対象関節リウマチ(RA)患者 137,512人
除外基準登録前6か月間にCVDの既往がある者
平均観察期間抄録に記載なし(観察期間5年間)
主要評価項目心血管疾患の発症率(CVD:心筋梗塞、脳卒中など)
サブ解析CVD発症群と非発症群の1:4マッチングによるネステッドケースコントロール(n = 7,102 vs. 27,018)

📊 結果|RA患者では年間約1.8%がCVDを発症

  • CVDの発症率:182.1 / 10,000人・年(95%CI 178.4–185.9)
  • RA患者のうち、年間で約1.8%が心血管疾患を発症していたことになります。

💊 各治療薬の影響|DMARDsは保護的、NSAIDsはリスク増大

条件付き多変量ロジスティック回帰モデルによる解析結果(CVDリスクへの影響)は以下の通りです。

薬剤カテゴリオッズ比(OR)
DMARDs(抗リウマチ薬)0.79
生物学的DMARDs0.85
ステロイド1.26
非選択的NSAIDs1.32
COX-2阻害薬1.31

💡 コメント|治療選択が心血管の未来を左右する

✅ 意義と臨床応用

  • 抗リウマチ薬(DMARDs)による炎症コントロールは、CVD予防にも寄与する可能性が示されました。
  • 一方で、ステロイドやNSAIDsは心血管系に悪影響を及ぼす可能性があるため、慢性的な使用には慎重な判断が求められます

⚠ 限界と注意点

  • 観察研究であるため、交絡因子(例:生活習慣、疾患重症度)を完全に排除できない
  • 医師の処方意図や服薬アドヒアランスに関する情報が不明。

🔍 今後の課題

  • 生物学的製剤の長期使用による心血管リスクへの影響を検討した研究の蓄積が必要です。
  • NSAIDsとステロイドに代わる炎症制御と疼痛管理の選択肢の探索が望まれます。

🧾 まとめ|RA治療戦略に心血管保護の視点を

この大規模コホート研究は、RA患者におけるCVD発症リスクを定量化し、治療薬がリスクに与える影響を初めてアジア人集団で評価した点で重要です。

炎症をコントロールしながら、心血管イベントを予防するために、DMARDs中心の治療戦略とNSAIDs・ステロイドの最小化が、今後のスタンダードとなるかもしれません。

心血管イベントの発症と治療にかかるコスト評価、QOLなどの患者報告アウトカム評価などを踏まえた薬剤選択が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ アジア人患者を対象とした後向きコホート研究の結果、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の使用はCVDを予防する一方、コルチコステロイドとNSAIDはRA患者のCVDリスクを高めるようであった。

根拠となった試験の抄録

目的: 関節リウマチ (RA) を患うアジア人患者における心血管疾患 (CVD) の発生率を推定し、抗リウマチ治療がCVDの発症に及ぼす影響を評価する。

方法: RA患者におけるCVDの発症率(IR)を明らかにするために、RAを患うアジア人患者の後ろ向きコホートを構築した。コホートは、2009年1月から2013年12月までの請求を含む韓国の国民医療保険請求データベースを用いて作成した。合計137,512人のRA患者を特定し、インデックス日前に6か月以上CVDの病歴がある個人は除外した。全研究集団から、症例:対照比1:4(症例n = 7102、CVDのない対照n = 27,018)でネストされた症例対照サンプルを抽出した。年齢、性別、RAインデックス日、併存疾患、および薬剤使用(抗血小板薬およびコレステロール低下薬など)でマッチングさせた後、条件付き多変量回帰モデルを用いて、RA患者における抗リウマチ治療がCVDの発症に及ぼす影響を評価した。

結果: RA患者におけるCVD発症リスクは、1万人・年あたり182.1(95%信頼区間 178.4~185.9)であった。他のCVDリスク因子を調整したモデルでは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)(オッズ比0.79)はCVD発症を予防したが、生物学的DMARDはCVD発症リスクと有意な関連が認められなかった(オッズ比 0.85)。RA患者におけるCVDの危険因子としては、コルチコステロイド(オッズ比 1.26)とNSAID(非選択的NSAID:オッズ比 1.32、Cox-2阻害薬:オッズ比 1.31)が認められた。

結論: 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の使用はCVDを予防しますが、コルチコステロイドとNSAIDはRA患者のCVDのリスクを高めます。

キーワード: 心血管疾患、コルチコステロイド、DMARD、NSAID、関節リウマチ。

引用文献

Impact of anti-rheumatic treatment on cardiovascular risk in Asian patients with rheumatoid arthritis
Soo-Kyung Cho et al. PMID: 28863826 DOI: 10.1016/j.semarthrit.2017.08.002
Semin Arthritis Rheum. 2018 Feb;47(4):501-506. doi: 10.1016/j.semarthrit.2017.08.002. Epub 2017 Aug 3.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28863826/

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