メラトニンは神経障害性疼痛に有効か?(二重盲検クロスオーバー試験; Pain. 2025)

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睡眠ホルモン“メラトニン”は、痛みに効くのか?

神経障害性疼痛(neuropathic pain, NP)は、夜間に悪化しやすく、不眠症や気分障害を伴うことが多い疾患です。こうした背景から、睡眠を整えることで疼痛が改善される可能性が注目されています。

メラトニンは松果体から分泌されるホルモンで、睡眠と概日リズムを調整する作用を持ちます。一部の臨床研究では、メラトニンの鎮痛作用が報告されていましたが、そのエビデンスは限定的でした。

本試験では、神経障害性疼痛に対するメラトニンの鎮痛効果を、二重盲検クロスオーバー法で検証しています。


試験結果から明らかになったことは?

試験概要

項目内容
試験名記載なし(試験登録番号も記載なし)
デザインランダム化二重盲検クロスオーバー試験
対象神経障害性疼痛を有する成人 31名(30名が完遂)
介入メラトニン(最大耐容量投与) vs. プラセボを4週間ずつ服用(7日間のウォッシュアウト期間あり)
主要評価項目最大耐容量での日平均疼痛スコア(0–10)
副次評価項目有害事象、睡眠、気分、QOL

主な結果

指標メラトニンプラセボP値
最大耐容量(平均)11.9 mg/日
日平均疼痛スコア(SE)4.1(±0.3)4.2(±0.3)0.8
副次評価項目(睡眠、気分、QOLなど)有意差なし有意差なし
有害事象まれであり、プラセボと有意差なし

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本試験において、メラトニンの神経障害性疼痛に対する有効性は示されませんでした。ポイントを整理します。

  • 主要評価項目において有意差なし(p=0.8)
  • 副次評価項目(睡眠、気分、QOL)も差なし
  • 有害事象は少なく安全性は高いが、臨床的有効性は不明

これまでの観察研究や予備的試験では「メラトニンが痛みに効く可能性」が示唆されていましたが、本試験では客観的な鎮痛効果は確認されなかった点が重要です。

安全性は確認されているため「睡眠改善目的での補助的使用」は否定されるものではありませんが、疼痛緩和を主目的とした使用は推奨できない結果と言えます。

小規模な検証結果であることから、本試験結果のみで結論付けることは困難ですが、疼痛を有する患者引退して益がないことから、更なる検証を行うのは困難でしょう。他の鎮痛薬と併用した場合に相乗効果があるのか等、異なる角度からの検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検クロスオーバー試験の結果、メラトニンは神経障害性疼痛に有効ではなかった。


根拠となった試験の抄録

背景:神経障害性疼痛(Neuropathic pain, NP)はよくある難題であり、安全で効果的な非オピオイド治療法の開発がますます求められています。NPでは疼痛が夜間に悪化することが多いため、睡眠障害はNPとよく関連しています。臨床現場では、松果体ホルモンであるメラトニンが疼痛を軽減する可能性があることを示すエビデンスがあります。私たちは、NPに対するメラトニンの有効性を評価する臨床試験を実施しました。

方法:二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を用いて、NPの成人31名をメラトニンとプラセボを用いた2種類の治療シーケンスのいずれかにランダムに割り付けました。2つの治療期間のそれぞれで、参加者はメラトニンまたはプラセボを含むカプセルを4週間服用し、その後7日間のウォッシュアウト期間がありました。
主要評価項目は、各期間の最大耐量(maximally tolerated doses, MTD)における平均1日疼痛強度(0~10)でした。MTDで評価した副次評価項目には、有害事象、睡眠、気分、生活の質の指標が含まれていました。

結果:31名の参加者が登録され、30名が試験の両治療期間を完了しました。本試験におけるメラトニンの最大耐用量の平均は11.9 mg/日でした。メラトニン投与中に発現した有害事象はまれであり、プラセボとの統計学的有意差は認められませんでした。最終耐用量(MTD)における1日平均疼痛(標準誤差)は、メラトニン投与群で4.1(0.3)、プラセボ投与群で4.2(0.3)でした(P=0.8)。副次評価項目において、プラセボとメラトニンの間に統計学的有意差は認められませんでした。

結論:全体として、本試験の結果は、メラトニンがNPの有効な治療法として有望であることを示唆するエビデンスを提供していません。

キーワード: 鎮痛療法、慢性疼痛、臨床試験、メラトニン、神経障害性疼痛、プラセボ、睡眠

引用文献

Melatonin for neuropathic pain: a double-blind, placebo-controlled, randomized, crossover trial
Ian Gilron et al. PMID: 40359364 DOI: 10.1097/j.pain.0000000000003651
Pain. 2025 May 13. doi: 10.1097/j.pain.0000000000003651. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40359364/

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