川崎病にアスピリンは本当に必要か?高用量アスピリンの有無を比較(PROBE; JAMA Netw Open. 2025)

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川崎病治療の“当たり前”を再検証する

川崎病(Kawasaki disease:KD)は、小児に発症する血管炎であり、最も重大な合併症は冠動脈病変(Coronary Artery Lesions:CALs)の形成です。現在、標準治療は免疫グロブリン静注療法(IVIG)と高用量アスピリンの併用とされていますが、アスピリンの適切な用量と投与期間は施設間でばらつきがあり、エビデンスも十分ではありません

この疑問に答えるため、台湾の多施設共同研究チームがIVIG単独療法と、IVIG+高用量アスピリン併用療法を比較する非劣性試験を実施しました。

試験結果から明らかになったことは?

試験概要

項目内容
試験デザイン多施設共同・プロスペクティブ・評価者盲検・非劣性ランダム化比較試験
対象アメリカ心臓協会(AHA)基準によるKD診断例(6歳未満)
登録期間2016年9月1日~2018年8月31日(追跡:6週間および6か月)
総患者数134人(平均年齢 1.8歳、男性 61.2%)
介入IVIG単独 vs. IVIG+高用量アスピリン(80–100 mg/kg/日)
主要評価項目6週後の冠動脈病変(CALs)の発症率
非劣性マージン10%

主な結果

評価項目IVIG+アスピリン群IVIG単独群
ベースラインのCAL頻度13.0%10.8%
6週間後のCAL頻度2.9%1.5%
6か月後のCAL頻度1.4%3.1%
群間差0.7ポイント
(95% CI -4.5 ~ 5.8
P値P=0.65(統計的有意差なし)
  • 非劣性が確認された(非劣性マージン10%以内)
  • 治療効果・予防効果においても有意差なし

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このRCTは、IVIG単独療法が、IVIG+高用量アスピリン併用療法に対して非劣性であることを初めて示しました。つまり、初期治療時に高用量アスピリンを併用しなくても、冠動脈病変の発症予防に実質的な差はないと結論付けられます。

これまで高用量アスピリンは、抗炎症効果や血小板凝集抑制を目的に投与されてきましたが、その臨床的意義が必ずしも明確ではないことが今回の結果で裏付けられました。

今後は、アスピリンの副作用(胃腸障害や出血リスク)を考慮し、治療を個別化する方向が求められます。また、本試験は台湾人児童を対象としているため、人種・民族差を超えた一般化可能性を確認するための国際共同研究が期待されます。

また、アウトカムは6か月後までの検証結果であるため、より長期的なモニタリングが求められます。

続報に期待。

medical equipment with test results on table

✅まとめ✅ 非劣性ランダム化比較試験の結果、IVIG単独療法は、IVIG+高用量アスピリン療法に対して非劣性であり、高用量アスピリン追加は臨床的に有意な差をもたらさなかった。今後、アジア人以外を対象とした追加研究が必要である。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:アスピリン(アセチルサリチル酸)と免疫グロブリン静注療法(IVIG)は、冠動脈病変(CALs)リスク低減のため、川崎病(KD)治療の標準とされている。しかし、アスピリンの最適な用量・期間は病院間で統一されておらず、大規模な多施設ランダム化比較試験の欠如により、高用量アスピリンの有効性は明確でない。

目的:IVIG単独療法と、IVIG+高用量アスピリン併用療法を比較し、KD治療における効果を評価する。

試験デザイン・対象:台湾5施設で行われたプロスペクティブ・評価者盲検・多施設共同非劣性RCT。対象は、AHA基準に基づき診断された6歳未満の小児。

介入:標準群:IVIG(2g/kg)+高用量アスピリン(80-100 mg/kg/日、解熱後48時間まで)
介入群:IVIG(2g/kg)のみ

主要アウトカム:6週後のCAL発生率。非劣性マージンは10%。

結果:134名が解析対象(IVIG+アスピリン群69人、IVIG単独群65人)。年齢・体格・性別に有意差なし。CAL発生率は両群で有意差がなかった(0.7ポイント、95% CI -4.5 ~ 5.8、P=0.65)。治療効果・予防効果も有意差なし。

結論と意義IVIG単独療法は、IVIG+高用量アスピリン療法に対して非劣性であり、高用量アスピリン追加は臨床的に有意な差をもたらさなかった。今後、アジア人以外を対象とした追加研究が必要である。

引用文献

Intravenous Immunoglobulin Alone vs With High-Dose Aspirin for Kawasaki Disease: A Randomized Clinical Trial
Chien-Chang Chen et al. PMID: 40178858 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2025.0609
JAMA Netw Open. 2025 Apr 7:e250360. doi: 10.1001/jamaneurol.2025.0360. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40178858/

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