がん関連静脈血栓塞栓症に対するアピキサバンの減量延長療法の効果は?(DB-RCT; API-CAT試験; N Engl J Med. 2025)

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活動性癌と静脈血栓塞栓症に対する最適な抗凝固療法とは?

活動性癌と静脈血栓塞栓症において、経口抗凝固薬の減量による延長治療が血栓塞栓症の再発予防と出血の減少に有効であるかどうかは不明です。

そこで今回は、活動性がんと近位深部静脈血栓症または肺塞栓症を有し、少なくとも6ヵ月の抗凝固療法を完了した連続患者を対象に、アピキサバンの減量用量の有効性・安全性について検証した二重盲検ランダム化比較試験(API-CAT試験)の結果をご紹介します。

試験対象者は、アピキサバンを減量(2.5mg)または全量(5.0mg)1日2回12ヵ月間経口投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けられました。

本試験の主要アウトカムは、中央判定による致死的または非致死的な静脈血栓塞栓症の再発であり、非劣性解析で評価されました(サブハザード比の95%信頼区間の上限マージンは2.00)。主要な副次的アウトカムは臨床的に関連性のある出血で、優越性解析で評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

計1,766例の患者がランダム化を受け、インデックスイベントからの期間中央値は8.0ヵ月(四分位範囲 6.5~12.6)でした。治療期間の中央値は11.8ヵ月(四分位範囲 8.3~12.1)でした。

減量群全量投与群調整サブハザード比
(95%CI)
静脈血栓塞栓症の再発18例
(累積発生率 2.1%)
24例
(累積発生率 2.8%)
調整サブハザード比 0.76
0.41~1.41
非劣性P=0.001
臨床的に関連性のある出血102例
(累積発生率 12.1%)
136例
(累積発生率 15.6%)
調整サブハザード比 0.75
0.58~0.97
P=0.03
死亡率17.7%19.6%調整ハザード比 0.96
0.86~1.06

静脈血栓塞栓症の再発は、減量群で18例(累積発生率 2.1%)、全量投与群で24例(累積発生率 2.8%)に発生しました(調整サブハザード比 0.76、95%信頼区間[CI] 0.41~1.41;非劣性P=0.001)。

臨床的に関連性のある出血は、減量群で102例(累積発生率 12.1%)、全量投与群で136例(累積発生率 15.6%)に発生しました(調整サブハザード比 0.75、95%CI 0.58~0.97;P=0.03)。

死亡率は減量群で17.7%、全量群で19.6%でした(調整ハザード比 0.96、95%CI 0.86~1.06)。

コメント

活動性がん患者において、静脈血栓塞栓症の予防のために抗凝固療法が実施されます。しかし、出血リスクが増加することから、リスクベネフィット評価を基に減量も考慮されます。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、活動性がん患者における静脈血栓塞栓症の再発予防において、減量アピキサバンによる延長抗凝固療法は全用量アピキサバンに対して非劣性でした。アピキサバンの減量投与により、臨床的に重要な出血性合併症の発生率は全用量投与よりも低いことが示されました。

死亡リスクについても大きな差はないことから、アピキサバンを減量したほうが益は大きそうです。再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、活動性がん患者における静脈血栓塞栓症の再発予防において、減量アピキサバンによる延長抗凝固療法は全用量アピキサバンに対して非劣性であった。アピキサバンの減量投与により、臨床的に重要な出血性合併症の発生率は全用量投与よりも低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:活動性癌と静脈血栓塞栓症において、経口抗凝固薬の減量による延長治療が血栓塞栓症の再発予防と出血の減少に有効であるかどうかは不明である。

方法:ランダム化二重盲検非劣性試験を盲検化された中央アウトカム判定で実施した。活動性がんと近位深部静脈血栓症または肺塞栓症を有し、少なくとも6ヵ月の抗凝固療法を完了した連続患者を、アピキサバンを減量(2.5mg)または全量(5.0mg)1日2回12ヵ月間経口投与する群に1:1の割合でランダムに割り付けた。
主要アウトカムは、中央判定による致死的または非致死的な静脈血栓塞栓症の再発であり、非劣性解析で評価した(サブハザード比の95%信頼区間の上限マージンは2.00)。主要な副次的アウトカムは臨床的に関連性のある出血で、優越性解析で評価された。

結果:計1,766例の患者がランダム化を受け、インデックスイベントからの期間中央値は8.0ヵ月(四分位範囲 6.5~12.6)であった。治療期間の中央値は11.8ヵ月(四分位範囲 8.3~12.1)であった。静脈血栓塞栓症の再発は、減量群で18例(累積発生率 2.1%)、全量投与群で24例(累積発生率 2.8%)に発生した(調整サブハザード比 0.76、95%信頼区間[CI] 0.41~1.41;非劣性P=0.001)。臨床的に関連性のある出血は、減量群で102例(累積発生率 12.1%)、全量投与群で136例(累積発生率 15.6%)に発生した(調整サブハザード比 0.75、95%CI 0.58~0.97;P=0.03)。死亡率は減量群で17.7%、全量群で19.6%であった(調整ハザード比 0.96、95%CI 0.86~1.06)。

結論:活動性がん患者における静脈血栓塞栓症の再発予防において、減量アピキサバンによる延長抗凝固療法は通常用量アピキサバンに対して非劣性であった。アピキサバンの減量投与により、臨床的に重要な出血性合併症の発生率は全用量投与よりも低かった。

資金提供:ブリストル・マイヤーズ スクイブ・ファイザーアライアンス

試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT03692065

引用文献

Extended Reduced-Dose Apixaban for Cancer-Associated Venous Thromboembolism
Isabelle Mahé et al. PMID: 40023176 DOI: 10.1016/S0140-6736(25)00333-2
N Engl J Med. 2025 Mar 29. doi: 10.1056/NEJMoa2416112. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40162636/

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