SGLT-2阻害薬治療後の尿路感染症は心血管アウトカムのリスク上昇と関連する?(観察研究; Endocr Pract. 2025)

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尿路感染症の有無により心血管イベントのリスクは異なるのか?

ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)は血糖降下作用を示すことから糖尿病治療薬として承認されました。その後、多面的な作用を示すことから心不全や腎臓病についても使用されています。特に腎・心血管イベントのリスクを低減することから、患者予後に有効です。

一方、副作用の一つとして尿路感染症(UTI)があげられます。しかし、2型糖尿病(T2DM)患者における心血管転帰への影響は不明です。

そこで今回は、SGLT2i治療に伴うUTIの有無により、患者予後、特に心血管イベントへの影響について検証した後向き研究の結果をご紹介します。

この多施設レトロスペクティブ観察研究では、2016年1月~2019年1月にSGLT2阻害薬(SGLT2i)の投与を受けた糖尿病患者が対象となりました。本研究の評価項目は主要有害心血管イベント(MACE)であり、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心臓死、全死亡、心不全による入院の複合と定義されました。

転帰は尿路感染症(UTI)の有無で比較されました。転帰に影響を及ぼす可能性のあるベースライン特性を調整するために多変量解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

SGLT2iによる治療を受けたT2DM患者8,862例がレトロスペクティブに検討されました。SGLT2i治療後に尿路感染症を発症し、抗生物質を必要とした患者は合計550例でした。SGLT2i治療後30ヵ月の心血管アウトカムが追跡されました。

(尿路感染症を有する群)調整後ハザード比 aHR
(95%CI)
MACEaHR 2.03
1.60~2.57
p<0.0001
心不全による入院aHR 1.66
1.32~2.09
p<0.0001
全死亡aHR 2.67
2.10~3.40
p<0.0001

有意なベースラインの特徴を調整した結果、尿路感染症を有する群ではMACE(aHR 2.03、95%CI 1.60~2.57、p<0.0001)、心不全による入院(aHR 1.66、95%CI 1.32~2.09、p<0.0001)、全死亡(aHR 2.67、95%CI 2.10~3.40、p<0.0001)のリスクが上昇しました。

コメント

薬剤使用において、有効性だけでなく安全性の評価が求められます。ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)は多面的な作用を示すことから、さまざまな疾患に使用されていますが、副作用である尿路感染症を発症した場合の転帰については充分に検証されていません。

さて、多施設後向き研究の結果、2型糖尿病患者におけるSLGT2i治療後の尿路感染症は、最長30ヵ月の心血管イベントのリスク上昇と関連することが示唆されました。

ただし、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。また心血管イベントリスクを検証する期間について疑問が残ります。検証ウインドウについて短期間、長期間にわけて交絡因子の調整を行い、評価することで結果の信頼性が高まると考えられます。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 多施設後向き研究の結果、2型糖尿病患者におけるSLGT2i治療後の尿路感染症は、最長30ヵ月の心血管イベントのリスク上昇と関連することが示唆された。

根拠となった試験の抄録

目的:尿路感染症(UTI)はナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)の副作用である。しかし、2型糖尿病(T2DM)患者における心血管転帰への影響は不明である。

方法:この多施設レトロスペクティブ観察研究では、2016年1月~2019年1月にSGLT2阻害薬(SGLT2i)の投与を受けた糖尿病患者を対象とした。
主要有害心血管イベント(MACE)は、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心臓死、全死亡、心不全による入院の複合と定義した。
転帰は尿路感染症(UTI)の有無で比較した。転帰に影響を及ぼす可能性のあるベースライン特性を調整するために多変量解析を行った。

結果:SGLT2iによる治療を受けたT2DM患者8,862例をレトロスペクティブに検討した。SGLT2i治療後に尿路感染症を発症し、抗生物質を必要とした患者は合計550例であった。SGLT2i治療後30ヵ月の心血管アウトカムを追跡した。有意なベースラインの特徴を調整した結果、尿路感染症群ではMACE(aHR 2.03、95%CI 1.60~2.57、p<0.0001)、心不全による入院(aHR 1.66、95%CI 1.32~2.09、p<0.0001)、全死亡(aHR 2.67、95%CI 2.10~3.40、p<0.0001)のリスクが上昇した。

結論:T2DM患者におけるSLGT2i治療後の尿路感染症は、最長30ヵ月のMACEリスクの上昇と関連する。

キーワード:心血管アウトカム;SGLT2阻害薬;2型糖尿病;尿路感染症

引用文献

Cardiovascular Outcomes of Patients With Type 2 Diabetes With Urinary Tract Infection Post Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors Treatment: A Multicenter Observational Study
Tse-Lun Hsu et al. PMID: 40043846 DOI: 10.1016/j.eprac.2025.02.014
Endocr Pract. 2025 Mar 3:S1530-891X(25)00061-8. doi: 10.1016/j.eprac.2025.02.014. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40043846/

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