女性のOAB患者においてミラベグロンとビベグロン、どちらが良いのか?
過活動膀胱(OAB)は男女共に示される症状であり男女差に大きな違いはないとされています。2023年に実施された日本のアンケート調査(JaCS 2023試験)において、OABの有病率は20歳以上で11.9%、40歳以上で13.8%であることが示されています。
過活動膀胱の治療薬としては、比較的副作用の少ないβ3アドレナリン受容体作動薬の使用が増えていますが、薬剤間の比較は充分に行われていません。
そこで今回は、女性の過活動膀胱(overactive bladder, OAB)患者を対象に、ミラベグロン(商品名:ベタニス)とビベグロン(商品名:べオーバ)の有効性と安全性を比較することを目的に実施されたランダム化クロスオーバー試験の結果をご紹介します。
女性OAB患者を対象とした多施設共同前向きランダム化クロスオーバー試験において、患者はMV群(ミラベグロン8週間投与後、ビベグロン8週間投与)またはVM群(ビベグロン8週間投与後、ミラベグロン8週間投与)に割り付けられました。
本試験の主要エンドポイントは過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive bladder symptom score)のベースラインからの変化であり、副次的エンドポイントはFVCパラメータの変化でした。試験終了後、各患者はどちらの薬剤が望ましいか質問されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計83例の患者が登録されました(MV群40例、VM群43例)。8週目と16週目の時点で、MV群では33例と29例、VM群では34例と27例が治療を継続していました。
PVRの変化 | |
ミラベグロン(MV)群 | 3.1(SD 26.5)mL |
ビベグロン(VM)群 | 7.9(SD 9.8)mL P=0.43 |
残尿測定(PVR:post-void residual volume)の変化はミラベグロン群とビベグロン群で有意差はありませんでした。
FAS解析 | ミラベグロン(MV)群 (95%CI) | ビベグロン(VM)群 (95%CI) |
OABSS(total)の平均変化 | -4.3(-5.2 〜 -3.3) | -5.1(-5.9 〜 -4.2) P=0.143 |
夜間頻尿の平均変化 | -0.2(-0.5 〜 0.0) | -0.3(-0.6 〜 -0.1) P=0.746 |
平均排尿量の平均変化 | 34(21〜47) | 40(28〜52) P=0.260 |
最大排尿量の平均変化 | 50(23〜77) | 55(27〜83) P=0.689 |
日中の頻尿頻度の平均変化 | -0.9(-1.5 〜 -0.4) | -1.5(-2.1 〜 -1.0) P=0.016 |
OABSS、夜間頻尿、平均排尿量、最大排尿量の変化はミラベグロンとビベグロンで同様でした。
日中の頻尿頻度の平均変化は、ミラベグロンよりもビベグロンで大きいことが示されました。
56人の患者のうち、15人(27%)および30人(53%)がそれぞれミラベグロンおよびビベグロンを好みました。残りの11人の患者(20%)は好みを示しませんでした。
ビベグロン投与中の切迫性尿失禁スコアの変化は、ミラベグロンよりもビベグロンを好む患者の方が良好でした。
コメント
女性の過活動膀胱患者におけるミラベグロン(商品名:ベタニス)とビベグロン(商品名:べオーバ)の比較は充分に行われていません。
さて、日本人女性を対象とした小規模なランダム化クロスオーバー試験の結果、ミラベグロンとビベグロンの有効性は同等でした。ビベグロンに対する患者の嗜好は、ミラベグロンとビベグロンの効果に依存している可能性がありますが、本試験結果をもってビベグロンが優れているとは結論づけられません。
本試験は70歳程度の女性を対象としており、組み入れられた患者数も限られています。また、ウォッシュアウト期間を設けていないことから持越効果の影響を排除できません。その反面、より実臨床に即した試験(プラグマティック)と表現することもできるでしょう。
いずれにせよ、再現性の確認、心血管アウトカムやコストも含めて更なる検証が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 日本人女性を対象とした小規模ランダム化クロスオーバー試験の結果、ミラベグロンとビベグロンの有効性は同等であった。
根拠となった試験の抄録
目的:女性の過活動膀胱(overactive bladder, OAB)患者におけるミラベグロンとビベグロンの有効性と安全性を比較する。
方法:女性OAB患者を対象とした多施設共同前向きランダム化クロスオーバー試験を実施した。患者をMV群(ミラベグロン8週間投与後、ビベグロン8週間投与)またはVM群(ビベグロン8週間投与後、ミラベグロン8週間投与)に割り付けた。
主要エンドポイントは過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive bladder symptom score)のベースラインからの変化であり、副次的エンドポイントはFVCパラメータの変化であった。試験終了後、各患者はどちらの薬剤が望ましいか質問された。
結果:合計83例の患者が登録された(MV群40例、VM群43例)。8週目と16週目の時点で、MV群では33例と29例、VM群では34例と27例が治療を継続していた。残尿測定(PVR:post-void residual volume)の変化はミラベグロン群とビベグロン群で有意差はなかった。OABSS、夜間頻尿、平均排尿量、最大排尿量の変化はミラベグロンとビベグロンで同様であった。昼間頻度の平均変化は、ミラベグロンよりもビベグロンで大きかった。56人の患者のうち、15人(27%)および30人(53%)がそれぞれミラベグロンおよびビベグロンを好んだ。残りの11人の患者(20%)は好みを示さなかった。ビベグロン投与中の切迫性尿失禁スコアの変化は、ミラベグロンよりもビベグロンを好む患者の方が良好であった。
結論:女性患者におけるミラベグロンとビベグロンの有効性は同等であった。ビベグロンに対する患者の嗜好は、ミラベグロンとビベグロンの効果に依存している可能性がある。
引用文献
Comparison of mirabegron and vibegron for clinical efficacy and safety in female patients with overactive bladder: a multicenter prospective randomized crossover trial
Naoki Wada et al. PMID: 38431689 DOI: 10.1007/s00345-024-04799-4
World J Urol. 2024 Mar 2;42(1):113. doi: 10.1007/s00345-024-04799-4.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38431689/
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