食物・生薬中のフラノクマリン類含量のはどのくらい?(酵素免疫測定法; 医療薬学 2006)

fruit slices on a chopping board 04_相互作用、薬物相互作用
Photo by Darina Belonogova on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

食物や生薬におけるフラノクマリン類の含有量は?

6′,7’‐ジヒドロキシベルガモチン(DHB)やベルガモチンのようなフラノクマリン誘導体はCYP3A4の阻害剤であり、グレープフルーツジュースから単離されています。同様に他の柑橘類や生薬、野菜にも含まれている可能性がありますが、充分に検証されていません。

そこで今回は、これらのフラノクマリン誘導体の含有量に対する高感度かつ特異的な酵素結合免疫吸着法を用いて多くの柑橘類、野菜および生薬のスクリーニングを行った研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

柑橘類の果汁および果皮に含まれるフラノクマリン類のスクリーニング

対象産地DHB換算量(ug/mL)
果汁
DHB換算量(ug/mL)
グレープフルーツカリフォルニア13.03600.0
スウィーティーカリフォルニア17.52400.0
メロゴールドカリフォルニア12.53400.0
バンペイユ熊本12.575.0
レッドポメロカリフォルニア6.4240.0
ダイダイ佐賀3.272.0
ブンタン高知2.25660.0
ハッサク熊本0.9220.0
サワーポメロ鹿児島1.01000.0
メキシカンライムメキシコ0.9635.0
甘夏ミカン熊本0.61004.0
パール柑熊本0.920.0
サンポウカン和歌山0.440.0
レモンカルフォルニア0.05180.0
日向夏宮崎0.1228.5
ネーブルオレンジオーストラリア0.050.24
スウィートオレンジオーストラリア0.0116.0
ウンシュウミカン宮崎N.D.N.D.
ポンカン大分N.D.0.08
イヨカン愛媛N.D.0.2
デコポン大分N.D.N.D.
ユズ宮崎0.010.4
カボス大分0.011.44
スダチ佐賀N.D.0.14
キンカン佐賀N.D.0.02

25種の柑橘類の果汁と果皮を試験した結果、果汁ではスウィーティー、メロゴールド、バンペイユ、レッドポメロの4種に、果皮ではスウィーティー、メロゴールド、サワーポメロ、甘夏ミカンの4種に有意な反応性が認められました。

ほとんどの柑橘類では、果汁よりも果皮の方が強い反応を示しました。

セリ科の野菜に含まれるフラノクマリン類のスクリーニング

野菜名産地DHB換算量(μg/mL)
パセリ佐賀0.38
イタリアンパセリ大分0.1
セロリ佐賀0.02
セリ大分N.D.
ミツバ大分0.003
ニンジン佐賀N.D.
コリアンダー大分N.D.

N.D.:検出されず DHB換算量は2検体の平均値

野菜7品目を試験しましたが、そのうち4品目(パセリ、イタリアンパセリ、セロリ、ミツバ)にはわずかな反応しか認められませんでした。

生薬に含まれるフラノクマリン類のスクリーニング

生薬名科名DHB換算量(μg/g)
トウヒミカン336.0
キジツミカン20.0
オウバクミカンN.D.
チンピミカンN.D.
ゴシュユミカンN.D.
サンショウミカンN.D.
ビャクシセリ784.0
ゼンコセリ2.1
ハマボウフウセリ0.65
トウキセリ0.54
ボウフウセリ
N.D.
ウイキョウセリN.D.
サイコセリN.D.
オウギマメN.D.
センナマメN.D.
カンゾウマメN.D.
カッコンマメN.D.
クジンマメN.D.
ソウハクヒクワN.D.
ホップクワN.D.

N.D.:検出されず DHB換算量は2検体の平均値

20種類の生薬のうち、アンゼリカ・ダフリカの根(ビャクシ)とビターオレンジの皮(トウヒ)の2種類に有意な反応が認められました。

コメント

医薬品との薬物相互作用において、グレープフルーツジュースが有名ですが、その他の柑橘類や生薬については充分に検証されていません。

さて、酵素免疫測定法を用いたフラノクマリン誘導体の含有量を検出した結果、柑橘類のうち4種(果汁:スウィーティー、メロゴールド、バンペイユ、レッドポメロの4種、果皮:スウィーティー、メロゴールド、サワーポメロ、甘夏ミカンの4種)と生薬のうち2種(トウヒ、ビャクシ)が強い薬物相互作用を有する可能性が示唆されました。

あくまでも1件の研究結果ではありますが、適切な薬物療法を実践するうえで、グレープフルーツと同様に積極的な摂取を避けた方が良さそうな食品、生薬について把握しておくことは有用でしょう。過度に患者を不安にさせる必要はありませんが、例えば血圧やアレルギー症状のコントロールがうまくいかないときに、要因の一つとして食品との相互作用を考慮してはどうでしょうか。

続報に期待。

slice grapefruit

✅まとめ✅ 酵素免疫測定法を用いたフラノクマリン誘導体の含有量を検出した結果、柑橘類のうち4種(果汁:スウィーティー、メロゴールド、バンペイユ、レッドポメロの4種、果皮:スウィーティー、メロゴールド、サワーポメロ、甘夏ミカンの4種)と生薬のうち2種(トウヒ、ビャクシ)が強い薬物相互作用を有する可能性が示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:ベルガモッティンや6′,7′-ジヒドロキシベルガモッティンのようなフラノクマリン誘導体はCYP3A4の阻害剤であり、グレープフルーツジュースから単離されている。

方法:我々は、これらのフラノクマリン誘導体に対する高感度かつ特異的な酵素結合免疫吸着法を開発し、それを用いて多くの柑橘類、野菜および生薬のスクリーニングを行った。

結果:25種の柑橘類の果汁と果皮を試験した結果、果汁ではスウィーティー、メロゴールド、バンペイユ、レッドポメロの4種に、果皮ではスウィーティー、メロゴールド、サワーポメロ、甘夏ミカンの4種に有意な反応性が認められた。ほとんどの柑橘類では、果汁よりも果皮の方が強い反応を示した。野菜7品目を試験したが、そのうち4品目(パセリ、セロリ、イタリアンパセリ、ミツバ)にはわずかな反応しか認められなかった。20種類の生薬のうち、アンゼリカ・ダフリカの根(ビャクシ)とビターオレンジの皮(トウヒ)の2種類に有意な反応が認められた。

結論:これらの結果から、柑橘類のうち4種と生薬のうち2種が強い薬物相互作用を示すことが示唆された。

引用文献

酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含量のスクリーニング
齋田 哲也, 藤戸 博.
医療薬学 2006年32巻7号 p.693-699. https://doi.org/10.5649/jjphcs.32.693.
— 読み進める www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/32/7/32_7_693/_article/-char/ja/

コメント

タイトルとURLをコピーしました