頻脈性の心房細動に対するメトプロロールとジルチアゼムの比較(SR&MA; Am J Emerg Med. 2024)

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心室頻拍を有する心房細動患者の心拍コントロールに適した薬剤は?

頻脈性(心室頻拍 rapid ventricular rate, RVR)の心房細動(Afib with RVR)に対する心拍コントロールにはジルチアゼムとメトプロロールの静脈内投与が一般的であり、国際的な診療ガイドラインでは両剤とも第一選択薬として推奨されています。

これらの薬剤の有効性は先行研究で検討されていますが、使用による有害事象(AE)のリスクに関するエビデンスはほとんどありません。そこで今回は、RVRを有するAfib患者におけるジルチアゼムとメトプロロールの有害事象について検証したメタ解析の結果をご紹介します。

本解析では、PubMed,SCOPUS,EMBASE,Cochrane Libraryで検索され、RVRを有するAfibに対するジルチアゼムとメトプロロールの静注投与後のAE発生率を報告したランダム化比較試験(RCT)および観察研究が同定されました。

本解析の主要アウトカムはAE、特に低血圧と徐脈の発生率であり、副次的アウトカムとして個別に検討されました。

ランダム効果メタ解析により、それぞれのAE発生率が同定されました。リスク因子の評価には、モデレーター分析とメタ回帰が用いられました。研究の質を評価するためにCochrane Risk-of-Bias 2ツールとNewcastle-Ottawa Scaleが用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

13件の研究をレビューし、1,660例の患者を対象としました。888例(53%)がメトプロロールで、772例(47%)がジルチアゼムで治療されました。

ジルチアゼムメトプロロールRR
(95%CI)
AEの総発生率19%10%RR 0.74
0.56~0.98
p=0.034
 徐脈RR 0.44
0.15~1.30
p=0.14
 低血圧RR 0.80
0.61~1.04
p=0.10

メトプロロールは、ジルチアゼム(総発生率 19%)と比較して、AE(総発生率 10%)のリスクが26%低く(RR 0.74、95%CI 0.56~0.98、p=0.034)、予測区間は0.50~1.10でした。

初期心拍数が高い患者ほどAE発生率が高いことが示されました(相関係数 0.11、95%CI 0.03~0.19、p=0.006)。

徐脈(RR 0.44、95%CI 0.15~1.30、p=0.14)や低血圧(RR 0.80、95%CI 0.61~1.04、p=0.10)の発生率に差はなかった。

コメント

一般的に、心室頻拍を伴う心房細動患者の初期管理には、β遮断薬(多くの場合メトプロロール)の静脈内投与や非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(多くの場合ジルチアゼム)の使用が含まれます。血行動態が安定している患者では、最初はレートコントロールが試みられ、不安定な患者では電気的除細動が推奨されます。レートコントロール戦略の中では、β遮断薬の静注とCCBの静注の両方が国際的な診療ガイドラインで同等に推奨されています。しかし、最近の研究では、メトプロロール静注と比較して、ジルチアゼム静注の方がレートコントロール成功率が高いことが報告されており、有効性に関してはジルチアゼムの方が優れている可能性が示唆されています。一方で、有害事象として特に徐脈や低血圧の発生リスクについては比較検討が行われていません。

さて、ランダム化比較試験及びコホート研究を対象としたメタ解析の結果、メトプロロールで治療された心室頻拍を有する心房細動患者では、ジルチアゼムで治療された患者と比較してAE(徐脈や低血圧)の発生率が低いことが示されましたが、個別に評価した場合には低血圧や徐脈の発生率に差はみられませんでした。

注意点として、日本で使用されているメトプロロール酒石酸と、米国で使用されているメトプロロールコハク酸は塩の違いに基づく作用時間の違いがあり、患者アウトカムに対する有効性も異なっています。

本メタ解析に組み入れられた試験数は充分ですが、患者数は限定的であり、より多くの患者を含めた検証が求められます。これまでの検証結果も含めると、現時点においてはジルチアゼムの方がレートコントロールに優れており、徐脈や低血圧の発生リスクに差はなさそうです。あくまでも救急外来や入院患者で使用されるケースが想定されますので、外来患者には適用できない結果です。

更なる検証結果に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験及びコホート研究を対象としたメタ解析の結果、メトプロロールで治療された心室頻拍を有する心房細動患者では、ジルチアゼムで治療された患者と比較してAE(徐脈や低血圧)の発生率が低かったが、個別に評価した場合には低血圧や徐脈の発生率に差はみられなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:頻脈性(rapid ventricular rate, RVR)の心房細動(Afib with RVR)に対する心拍コントロールにはジルチアゼムとメトプロロールの静脈内投与が一般的であり、現在のガイドラインでは両剤とも第一選択薬として推奨されている。これらの薬剤の有効性は先行研究で検討されているが、使用による有害事象(AE)のリスクに関するエビデンスはほとんどない。

方法:PubMed,SCOPUS,EMBASE,Cochrane Libraryを検索し、RVRを有するAfibに対するジルチアゼムとメトプロロールの静注投与後のAE発生率を報告したランダム化比較試験(RCT)および観察研究を同定した。
主要アウトカムはAE、特に低血圧と徐脈の発生率とし、副次的アウトカムとして個別に検討した。
ランダム効果メタ解析を行い、それぞれのAE発生率を同定した。リスク因子の評価には、モデレーター分析とメタ回帰を用いた。研究の質を評価するためにCochrane Risk-of-Bias 2ツールとNewcastle-Ottawa Scaleを用いた。

結果:13件の研究をレビューし、1,660例の患者を対象とし、888例(53%)がメトプロロールで、772例(47%)がジルチアゼムで治療された。メトプロロールは、ジルチアゼム(総発生率 19%)と比較して、AE(総発生率 10%)のリスクが26%低く(RR 0.74、95%CI 0.56~0.98、p=0.034)、予測区間は0.50~1.10であった。初期心拍数が高い患者ほどAE発生率が高かった(相関係数 0.11、95%CI 0.03~0.19、p=0.006)。徐脈(RR 0.44、95%CI 0.15~1.30、p=0.14)や低血圧(RR 0.80、95%CI 0.61~1.04、p=0.10)の発生率に差はなかった。

結論:メトプロロールで治療されたRVRを有するAfibは、ジルチアゼムで治療された患者と比較してAE(徐脈や低血圧)の発生率が低かったが、個別に評価した場合には低血圧や徐脈の発生率に差はみられなかった。既存のデータは、サンプルサイズが小さいこと、投与量にばらつきがあること、重要な患者サブグループの代表が限られていることなどにより、制限されている。

キーワード:アドレナリン作動性β拮抗薬;心房細動;カルシウム拮抗薬;ジルチアゼム;メトプロロール

引用文献

Metoprolol vs diltiazem for atrial fibrillation with rapid ventricular rate: Systematic review and meta-analysis of adverse events
Trager D Hintze et al. PMID: 39764905 DOI: 10.1016/j.ajem.2024.12.070
Am J Emerg Med. 2024 Dec 27:89:230-240. doi: 10.1016/j.ajem.2024.12.070. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39764905/

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