透析患者におけるデノスマブと経口ビスホスホネート製剤の心血管安全性と骨折予防効果の比較(標的試験模倣研究; Ann Intern Med. 2025)

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デノスマブ vs. 経口ビスホスホネート

透析患者は骨折罹患率が高いが、骨粗鬆症に対する最適な管理戦略に関するエビデンスは不充分です。

そこで今回は、透析依存患者におけるデノスマブと経口ビスホスホネート製剤との比較による心血管イベントリスクと骨折予防効果を明らかにすることを目的に実施された標的試験模倣研究の結果をご紹介します。

本研究は、標的試験を模擬した観察研究であり、日本の行政請求データベース(2014年4月~2022年10月)が用いられました。

透析かつ骨粗鬆症治療薬としてデノスマブまたはビスホスホネート経口薬の投与を開始した50歳以上の成人が対象となりました。

本研究の評価項目は、安全性のアウトカムは主要心疾患有害事象(MACE)でした。有効性のアウトカムは全骨折の複合であり、追跡期間は3年でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計1,032例の患者が同定されました(デノスマブ使用者 658例、経口ビスホスホネート使用者 374例)。全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性でした。

デノスマブ vs. 経口ビスホスホネート系薬加重3年リスク差
(95%CI)
加重3年リスク比
(95%CI)
MACE8.2%
-0.2%~16.7%
1.36
0.99~1.87
複合骨折アウトカム-5.3%
-11.3% ~ -0.6%
0.55
0.28~0.93

MACEの加重3年リスク差は8.2%(95%CI -0.2%~16.7%)、加重3年リスク比は1.36(CI 0.99~1.87)でした。複合骨折の加重3年リスク差は-5.3%(CI -11.3% ~ -0.6%)、加重3年リスク比は0.55(CI 0.28~0.93)でした。

コメント

透析患者は骨折や心血管イベントがハイリスクであることが報告されていますが、これらのアウトカムに対する治療薬間の比較は充分に行われていません。

さて、日本の行政請求データベースを用いた標的試験模倣研究の結果、経口ビスホスホネート製剤と比較して、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させることが推定されました。

腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足しており、交絡が残存しています。また安全性アウトカムには腎臓に関する項目は含まれていないことから、上記の結果をそのまま受け入れることはできません。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

とはいえ、骨折リスクについては、これまでの報告結果やデノスマブの作用機序等を踏まえると矛盾のない結果です。そして骨折リスクや心血管リスクの高い患者において、デノスマブの方がより使用されると考えられることから、MACEイベントの発生が高かったのも理解できます。デノスマブそのものに心血管イベントのリスクを低減する作用がないことから、他の治療と組み合わせる必要があります。

本研究において、どこまで交絡因子を調整できているかは定かではありませんが、上記に関する患者背景の調整は最低限求められるでしょう。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 日本の行政請求データベースを用いた標的試験模倣研究の結果、経口ビスホスホネート製剤と比較して、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。

根拠となった試験の抄録

背景:透析患者は骨折罹患率が高いが、骨粗鬆症に対する最適な管理戦略に関するエビデンスは乏しい。

目的:透析依存患者におけるデノスマブと経口ビスホスホネート製剤との比較による心血管イベントリスクと骨折予防効果を明らかにすること。

試験デザイン:標的試験を模擬した観察研究

試験設定:日本の行政請求データベース(2014年4月~2022年10月)。

対象患者:透析依存症患者において骨粗鬆症治療薬としてデノスマブまたはビスホスホネート経口薬の投与を開始した50歳以上の成人。

評価項目:安全性のアウトカムは主要心疾患有害事象(MACE)とした。有効性のアウトカムは全骨折の複合とした。追跡期間は3年。

結果:合計1,032例の患者が同定された(デノスマブ使用者 658例、経口ビスホスホネート使用者 374例)。全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性であった。MACEの加重3年リスク差は8.2%(95%CI -0.2%~16.7%)、加重3年リスク比は1.36(CI 0.99~1.87)であった。複合骨折の加重3年リスク差は-5.3%(CI -11.3% ~ -0.6%)、加重3年リスク比は0.55(CI 0.28~0.93)であった。

試験の限界:腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足しており、交絡が残存していた。安全性のアウトカムには腎臓のエンドポイントは含まれていなかった。

結論:経口ビスホスホネート製剤と比較して、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。しかし、この推定値は不正確であり、今後の研究で確認する必要がある。

主な資金源:なし

引用文献

Cardiovascular Safety and Fracture Prevention Effectiveness of Denosumab Versus Oral Bisphosphonates in Patients Receiving Dialysis : A Target Trial Emulation
Soichiro Masuda et al. PMID: 39761590 DOI: 10.7326/ANNALS-24-03237
Ann Intern Med. 2025 Jan 7. doi: 10.7326/ANNALS-24-03237. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39761590/

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