脂質異常症と顔面老化リスクとの因果関係は?(公開ゲノムワイド関連研究; Skin Res Technol. 2024)

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脂質の種類と顔面老化との関連性は?

新たな観察研究により、脂質異常症と加齢との関連が示されました。しかし、この関連において因果関係があるかどうか、特に他の大陸よりも急速に老化が進行しているアジア人の場合は不明です。

そこで今回は、東アジア人集団における脂質異常症と顔貌の老化との因果関係を評価することを目的に実施された公開ゲノムワイド関連研究(GWAS)の結果をご紹介します。

総コレステロール(TC)、高比重-リポ蛋白コレステロール(HDL)、低比重-リポ蛋白コレステロール(LDL)、トリグリセリド(TG)などの東アジア人の脂質異常症に関連するSNPと、顔の老化に関するアウトカムデータが、公開ゲノムワイド関連研究(GWAS)から抽出されました。

次に、公開されているGWASデータによる2標本メンデルランダム化(MR)解析が行われ、潜在的な因果関係が調査されました。

効果推定値は主に固定効果逆分散重み付け(IVW)法により算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

東アジアの70,657人のGWAS参加者のうち、HDLに関連するSNPは88個でした。

顔面老化リスク
オッズ比 OR
(95%CI)
HDL高値OR 1.060
1.005~1.119
p=0.034
TC高値OR 0.995
0.920~1.076
p=0.903)
LDL高値OR 0.980
0.924~1.041
p=0.515
TG高値OR 0.999
0.932~1.07
p=0.974

IVW法を用いたMR解析による一次因果効果モデルに基づくと、HDL高値は顔面老化リスクと有意に関連することが示されました(OR 1.060、95%CI 1.005~1.119, p=0.034)。

一方、TC高値(OR 0.995、95%CI 0.920~1.076、p=0.903)、LDL高値(OR 0.980、95%CI 0.924~1.041、p=0.515)、およびTG高値(OR 0.999、95%CI 0.932~1.071、p=0.974)は、顔面老化と有意な相関を示しませんでした。

コメント

アジア人は、他の人種と比較して急速に老化が進行する傾向にあります。この背景因子として脂質があげられますが、その影響度について充分に検証されていません。

さて、公開ゲノムワイド関連研究のデータを用いた2標本メンデルランダム化解析により、HDLコレステロール高値と顔面老化との間に正の因果関係があることが明らかになりました。一方、顔の老化はTC、LDLコレステロール、TGの高値とは有意な相関を示しませんでした。

抄録からは、交絡因子の調整がどの程度実施されたのかは不明です。具体的には屋外での有酸素運動があげられ、HDLコレステロールを増加させる要因となります。一方、日光への曝露により、肌の老化が進行することが知られています。他にも調整できていない交絡因子があるものと考えられます。

再現性の確認も含めて、より臨床に即した前向き研究の実施が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 公開ゲノムワイド関連研究のデータを用いた2標本メンデルランダム化解析により、HDL高値と顔面老化との間に正の因果関係があることが明らかになった。対照的に、顔の老化はTC、LDL、TGの高値とは有意な相関を示さなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:新たな観察研究により、脂質異常症と加齢との関連が示された。しかし、この関連が因果関係があるかどうか、特に他の大陸よりも急速に老化が進行しているアジア人の場合は不明である。老化の目に見える症状にはしばしば顔貌の変化が含まれることから、本研究の目的は、東アジア人集団における脂質異常症と顔貌の老化との因果関係を評価することである。

方法:総コレステロール(TC)、高比重-リポ蛋白コレステロール(HDL)、低比重-リポ蛋白コレステロール(LDL)、トリグリセリド(TG)などの東アジア人の脂質異常症に関連するSNPと、顔の老化に関するアウトカムデータを、公開ゲノムワイド関連研究(GWAS)から抽出した。次に、公開されているGWASデータを用いて2標本メンデルランダム化(MR)解析を行い、潜在的な因果関係を調査した。効果推定値は主に固定効果逆分散重み付け(IVW)法を用いて算出した。

結果:東アジアの70,657人のGWAS参加者のうち、HDLに関連するSNPは88個であった。IVW法を用いたMR解析による一次因果効果モデルに基づくと、HDL高値は顔面老化リスクと有意に関連することが示された(OR 1.060、95%CI 1.005~1.119, p=0.034)。一方、TC高値(OR 0.995、95%CI 0.920~1.076、p=0.903)、LDL高値(OR 0.980、95%CI 0.924~1.041、p=0.515)、およびTG高値(OR 0.999、95%CI 0.932~1.071、p=0.974)は、顔面老化と有意な相関を示さなかった。

結論:本研究で実施した2標本メンデルランダム化解析により、HDL高値と顔面老化との間に正の因果関係があることが明らかになった。対照的に、顔の老化はTC、LDL、TGの高値とは有意な相関を示さなかった。これらの知見を検証し、東アジアの高齢患者の老化プロセスを遅らせるための栄養管理に関する適切な推奨を提供するためには、さらなる大規模サンプルの前向き研究が必要である。

キーワード:東アジア人;メンデルランダム化;脂質異常症;顔の老化;高密度リポ蛋白質コレステロール

引用文献

Causal relationship between dyslipidemia and risk of facial aging: Insights from Mendelian randomization in East Asian populations
Yu Deng et al. PMID: 38716757 PMCID: PMC11077566 DOI: 10.1111/srt.13717
Skin Res Technol. 2024 May;30(5):e13717. doi: 10.1111/srt.13717.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38716757/

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