抗生物質治療の最適な期間とは?
血流感染症はかなりの罹患率と死亡率を伴います。早期の適切な抗生剤治療が重要ですが、治療期間は不明です。
そこで今回は、血流感染症に罹患した入院患者(集中治療室[ICU]に入院中の患者を含む)を7日間または14日間抗生物質治療を受ける群にランダムに割り付け、治療期間の比較検証を行った多施設共同非劣性試験の結果をご紹介します。
抗生物質の選択、投与量、投与経路は治療チームの裁量に任されました。重篤な免疫抑制のある患者、長期治療を必要とする病巣のある患者、汚染の可能性のある単一培養の患者、黄色ブドウ球菌が検出された培養の患者は除外されました。
本試験の主要転帰は、血流感染診断後90日までに何らかの原因で死亡した場合であり、非劣性マージンは4%でした。
試験結果から明らかになったことは?
7ヵ国74病院において、3,608例の患者がランダム化を受け、intention-to-treat解析に組み入れられました;1,814例が7日間の抗生剤治療に、1,794例が14日間の抗生剤治療に割り付けられました。登録時の患者の55.0%はICUに、45.0%は病棟に入院していました。感染症は市中感染(75.4%)、病棟感染(13.4%)、ICU感染(11.2%)でした。
菌血症は尿路(42.2%)、腹部(18.8%)、肺(13.0%)、血管カテーテル(6.3%)、皮膚または軟部組織(5.2%)から発生しました。
死亡リスク | 7日間抗生物質を投与 | 14日間抗生物質を投与 | 群間差 (95.7%CI) |
intention-to-treat(ITT)解析 | 261例(14.5%) | 286例(16.1%) | 差 -1.6%ポイント (-4.0 ~ 0.8) ※非劣性が検証された |
per-protocol(pp)解析 | 23.1% | 10.7% | 差 -2.0%ポイント (-4.5 ~ 0.6) ※非劣性が検証された |
90日までに、7日間抗生物質を投与された261例(14.5%)が死亡し、14日間抗生物質を投与された286例(16.1%)が死亡しました(差 -1.6%ポイント、95.7%信頼区間{CI} -4.0 ~ 0.8)ことから、治療期間が短い方の非劣性が示されました。
7日間投与群では23.1%、14日間投与群では10.7%の患者で、決められた治療期間よりも長い治療が行われました。
Per-protocol解析でも非劣性が示されました(差 -2.0%ポイント、95%CI -4.5 ~ 0.6)。
これらの所見は、副次的な臨床転帰、および患者、病原体、症候群の特徴に従って定義された事前に規定されたサブグループ間で概ね一貫していました。
コメント
敗血症やカテーテル関連血流感染症の治療において、抗菌薬(抗生物質)の適切な投与期間に関する検証は充分に行われていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、血流感染症の入院患者において、7日間の抗生物質投与は14日間の投与に対して非劣性でした。
ただし、治療期間の延長は7日間治療群で多く認められています。また組入基準としては、血液培養で病原性細菌陽性と報告された時点で参加病院に入院していた患者を登録対象でした。一方、過去に本試験に登録したことのある患者、重篤な免疫不全患者(好中球減少症、固形臓器移植や造血幹細胞移植後の免疫抑制療法を受けている患者など)、人工心臓弁や血管内グラフトを有する患者、長期の治療が必要な感染症候群(心内膜炎、骨髄炎、敗血症など)が記録されている、または疑われる患者、 心内膜炎、骨髄炎、敗血症性関節炎、未排水の膿瘍、または未抜去の人工関節関連感染症)、一般的な汚染物質(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など)による培養陽性、黄色ブドウ球菌またはS.lugdunensis菌血症、長期の治療を必要とするまれな生物による菌血症、または真菌血症を有する患者は除外されています。
つまり、単純性血流感染症を有する患者を対象とした試験結果であり、複雑性血流感染症など、より重症化リスクを有する患者においては適用できません。
とはいえ、早急な治療開始が求められる血流感染症患者においては、アンピリック治療が行われることが多く、その後に血液培養の結果を踏まえた抗生物質の選択が行われます。この判断期間を短縮できることは、多剤耐性菌の発生リスク低減やコストカット、患者負担の軽減などの面で有益であると考えられます。
再現性を含めた更なる検証が待たれるとことです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、血流感染症の入院患者において、7日間の抗生物質投与は14日間の投与に対して非劣性であった。
根拠となった試験の抄録
背景:血流感染症はかなりの罹患率と死亡率を伴う。早期の適切な抗生剤治療が重要であるが、治療期間は不明である。
方法:多施設共同非劣性試験において、血流感染症に罹患した入院患者(集中治療室[ICU]に入院中の患者を含む)を7日間または14日間抗生物質治療を受ける群にランダムに割り付けた。抗生物質の選択、投与量、投与経路は治療チームの裁量に任された。重篤な免疫抑制のある患者、長期治療を必要とする病巣のある患者、汚染の可能性のある単一培養の患者、黄色ブドウ球菌が検出された培養の患者は除外した。
主要転帰は、血流感染診断後90日までに何らかの原因で死亡した場合とし、非劣性マージンは4%とした。
結果:7ヵ国74病院において、3,608例の患者がランダム化を受け、intention-to-treat解析に組み入れられた;1,814例が7日間の抗生剤治療に、1,794例が14日間の抗生剤治療に割り付けられた。登録時の患者の55.0%はICUに、45.0%は病棟に入院していた。感染症は市中感染(75.4%)、病棟感染(13.4%)、ICU感染(11.2%)であった。菌血症は尿路(42.2%)、腹部(18.8%)、肺(13.0%)、血管カテーテル(6.3%)、皮膚または軟部組織(5.2%)から発生することが最も多かった。90日までに、7日間抗生物質を投与された261例(14.5%)が死亡し、14日間抗生物質を投与された286例(16.1%)が死亡した(差 -1.6%ポイント、95.7%信頼区間{CI} -4.0 ~ 0.8)ことから、治療期間が短い方の非劣性が示された。7日間投与群では23.1%、14日間投与群では10.7%の患者で、決められた治療期間よりも長い治療が行われた。per-protocol解析でも非劣性が示された(差 -2.0%ポイント、95%CI -4.5 ~ 0.6)。これらの所見は、副次的な臨床転帰、および患者、病原体、症候群の特徴に従って定義された事前に規定されたサブグループ間で概ね一貫していた。
結論:血流感染症の入院患者において、7日間の抗生物質投与は14日間の投与に対して非劣性であった。
資金提供:カナダ保健研究機構 他
試験登録:ClinicalTrials.gov番号 NCT03005145
引用文献
Antibiotic Treatment for 7 versus 14 Days in Patients with Bloodstream Infections
BALANCE Investigators. PMID: 39565030 DOI: 10.1056/NEJMoa2404991
N Engl J Med. 2024 Nov 20. doi: 10.1056/NEJMoa2404991. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39565030/
コメント