腎機能低下者においても尿酸降下療法は有効なのか?
臨床医は、痛風で腎機能が低下している患者に対して尿酸降下療法(ULT)を慎重に行うことが多いでしょう。しかし、この関連性に関するランダム化臨床試験からのエビデンスは、依然として結論が出ていません。
そこで今回は、痛風で腎機能が低下している患者において、ULTによる血清尿酸値の目標値達成と慢性腎臓病(CKD)の重症または末期への進行との関連を評価することを目的に実施されたコホート研究の結果をご紹介します。
本研究は、2000年から2023年までの一般診療データベース(IQVIA Medical Research Database)のデータを用いた標的試験エミュレーション法によるコホート研究です。対象は40~89歳の痛風およびCKDステージ3の患者でした。データ解析は2023年11月から2024年9月まで行われました。曝露は、ULTによる血清尿酸値の目標値(6mg/dL未満)への低下でした。
本研究の主要評価項目は、1年以内に90日以上の間隔をあけて少なくとも2回、推定糸球体濾過量が30mL/分/1.73m2未満、またはCKDステージ4または5のReadコード(Refined Etiology, Anatomical Site, and Diagnosis classificationによる)が1つ以上、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかに該当する重症または末期腎臓病でした。
事前に規定されたハザード比(HR)の非劣性マージンは1.2に設定され、血清尿酸値の目標値を達成した群と達成しなかった群とが比較されました。
試験結果から明らかになったことは?
血清尿酸値の目標値を達成した群 | 達成しなかった群 | 調整後5年リスク差およびHR (95%CI) | |
主要評価項目 | 10.32% | 12.73% | 調整後5年リスク差 -2.41%(-4.61% ~ -0.21%) HR 0.89 (0.80~0.98) |
痛風でCKDステージ3の参加者14,792人(平均年齢 73.1[SD 9.5]歳;男性9,215人[62.3%]、女性5,577人[37.7%])において、重症または末期腎臓病の5年リスクは、血清尿酸値の目標値を達成した群で10.32%、達成しなかった群で12.73%でした。
目標値を達成しなかった患者と比較して、目標血清尿酸値を達成した患者における重症または末期腎臓病の調整後5年リスク差およびHRは、それぞれ-2.41%(95%CI -4.61% ~ -0.21%)および0.89(95%CI 0.80~0.98)でした。
コメント
痛風およびステージ3のCKD患者において、血清尿酸値を6mg/dL未満に低下させることの効果については充分に検証されていません。
さて、一般診療データベース(IQVIA Medical Research Database)のデータを用いた標的試験エミュレーション法によるコホート研究の結果、痛風およびCKDステージ3の患者において、尿酸降下療法を用いて血清尿酸値を6mg/dL未満に低下させることは、6mg/dL以上と比較して、重症または末期腎疾患のリスク上昇とは関連しないことが示されました。
再現性の確認も含めて、より長期的な検証が求められます、
続報に期待。
✅まとめ✅ 一般診療データベース(IQVIA Medical Research Database)のデータを用いた標的試験エミュレーション法によるコホート研究の結果、痛風およびCKDステージ3の患者において、尿酸降下療法を用いて血清尿酸値を6mg/dL未満に低下させることは、6mg/dL以上と比較して、重症または末期腎疾患のリスク上昇とは関連しないことが示された。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:臨床医は、痛風で腎機能が低下している患者に対して尿酸降下療法(ULT)を慎重に行うことが多い。しかし、この関連性に関するランダム化臨床試験からのエビデンスは、依然として結論が出ていない。
目的:痛風で腎機能が低下している患者において、ULTによる血清尿酸値の目標値達成と慢性腎臓病(CKD)の重症または末期への進行との関連を評価すること。
試験デザイン、設定、参加者:2000年から2023年までの一般診療データベース(IQVIA Medical Research Database)のデータを用いた標的試験エミュレーション法によるコホート研究。対象は40~89歳の痛風およびCKDステージ3の患者であった。データ解析は2023年11月から2024年9月まで行われた。
曝露:ULTによる血清尿酸値の目標値(6mg/dL未満)への低下。
主要アウトカムと評価基準:1年以内に90日以上の間隔をあけて少なくとも2回、推定糸球体濾過量が30mL/分/1.73m2未満、またはCKDステージ4または5のReadコード(Refined Etiology, Anatomical Site, and Diagnosis classificationによる)が1つ以上、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかに該当する重症または末期腎臓病。事前に規定されたハザード比(HR)の非劣性マージンは1.2に設定され、血清尿酸値の目標値を達成した群と達成しなかった群とが比較された。
結果:痛風でCKDステージ3の参加者14,792人(平均年齢 73.1[SD 9.5]歳;男性9,215人[62.3%]、女性5,577人[37.7%])において、重症または末期腎臓病の5年リスクは、血清尿酸値の目標値を達成した群で10.32%、達成しなかった群で12.73%であった。目標値を達成しなかった患者と比較して、目標血清尿酸値を達成した患者における重症または末期腎臓病の調整後5年リスク差およびHRは、それぞれ-2.41%(95%CI -4.61% ~ -0.21%)および0.89(95%CI 0.80~0.98)であった。
結論と関連性:このコホート研究の結果は、痛風およびCKDステージ3の患者において、ULTを用いて血清尿酸値を6mg/dL未満に低下させることは、6mg/dL以上と比較して、重症または末期腎疾患のリスク上昇とは関連しないことを示している。これらの知見は、痛風で腎機能が低下している患者を治療する際に、血清尿酸値の目標値を達成するためにULTを最適化することを支持するものである。
引用文献
Target Serum Urate Achievement and Chronic Kidney Disease Progression in Patients With Gout and Kidney Disease
Yilun Wang et al. PMID: 39585678 DOI: 10.1001/jamainternmed.2024.6212
JAMA Intern Med. 2024 Nov 25. doi: 10.1001/jamainternmed.2024.6212. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39585678/
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