肥満を有する小児に対してもリラグルチドは有効なのか?
2024年10月現在、12歳未満の小児の非単発性、非シンドローム性肥満の治療薬として承認されている薬剤はありません。リラグルチドの使用は成人および青年の肥満症において体重減少を誘導することが示されていますが、小児における安全性と有効性は確立されていません。
そこで今回は、6~12歳未満の肥満患者を対象にリラグルチドの効果を検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
56週間の治療期間と26週間の追跡期間からなるこの第3a相試験において、肥満のある小児(6~12歳未満)が、1日1回3.0mg(または最大耐容量)のリラグルチド皮下投与群とプラセボ群にランダムに割り付けられ、さらに生活習慣への介入も行われました。
本研究の主要エンドポイントは、体格指数(BMI;体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値)の変化率でした。確認のための副次的エンドポイントは、体重の変化率とBMIの5%以上の低下でした。
試験結果から明らかになったことは?
合計82人の参加者がランダム割付けを受け、56人がリラグルチド群に、26人がプラセボ群に割り付けられました。
リラグルチド群 | プラセボ群 | 推定群間差あるいは調整オッズ比 (95%CI) | |
56週目のBMIのベースラインからの平均変化率 | -5.8% | 1.6% | 推定差 -7.4%ポイント (-11.6 ~ -3.2) P<0.001 |
体重の平均変化率 | 1.6% | 10.0% | 推定差 -8.4%ポイント (-13.4 ~ -3.3) P=0.001 |
BMIが少なくとも5%低下した患者割合 | 46% | 9% | 調整オッズ比 6.3 (1.4~28.8) P=0.02 |
56週目のBMIのベースラインからの平均変化率はリラグルチド群で-5.8%、プラセボ群で1.6%であり、推定差は-7.4%ポイントでした(95%信頼区間[CI] -11.6 ~ -3.2;P<0.001)。
体重の平均変化率は、リラグルチド群で1.6%、プラセボ群で10.0%であり、推定差は-8.4%ポイント(95%信頼区間[CI] -13.4 ~ -3.3;P=0.001)でした。
BMIが少なくとも5%低下したのは、リラグルチド群で46%、プラセボ群で9%でした(調整オッズ比 6.3、95%CI 1.4~28.8;P=0.02)。
有害事象はリラグルチド群で89%、プラセボ群で88%の参加者に発現しました。消化器系の有害事象はリラグルチド群でより多く(80% vs. 54%)、重篤な有害事象はリラグルチド群で12%、プラセボ群で8%に報告されました。
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経済協力開発機構(OECD)およびEU加盟国の41か国のうち、日本を除くすべての国で、5~19歳の子どもの5人に1人以上(20%以上)が過体重であるとされています(ユニセフ、2019年)。一方、日本では、2021年の調査で11歳の男児における肥満傾向児の割合は約9%であることが報告されており(文部科学省、2021年)、国や地域における人口割合は異なるものの小児における過体重/肥満患者に対する対策が求められています。
さて、ランダム化比較試験の結果、肥満の小児(6~12歳未満)において、リラグルチドによる56週間の治療+生活習慣介入は、プラセボ+生活習慣介入よりもBMIの低下が大きいことが示されました。消化器系の有害事象が多い点については成人と同様です。漸増スケジュールも含めて用量設定が課題であると考えられます。
同種同効薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチドにおいて、非動脈炎性前部虚血性視神経症(nonarteritic anterior ischemic optic neuropathy, NAION)の発症リスク増加の可能性が示唆されています。現時点においては、関連性が示されていませんが、リラグルチドを含めたGLP-1受容体作動薬全般において、NAIONリスク増加の可能性があることから、長期的な使用、リスクベネフィットを踏まえた治療選択が求められます。
GLP-1受容体作動薬による体重減少、体重コントロールの効果は疑いようのない事実ではありますが、安全性アウトカムについて、より長期的なモニタリングが求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、肥満の小児(6~12歳未満)において、リラグルチドによる56週間の治療+生活習慣介入は、プラセボ+生活習慣介入よりもBMIの低下が大きかった。
根拠となった試験の抄録
背景:現在、12歳未満の小児の非単発性、非シンドローム性肥満の治療薬として承認されている薬剤はない。リラグルチドの使用は成人および青年の肥満症において体重減少を誘導することが示されているが、小児における安全性と有効性は確立されていない。
方法:56週間の治療期間と26週間の追跡期間からなるこの第3a相試験において、肥満のある小児(6~12歳未満)を、1日1回3.0mg(または最大耐容量)のリラグルチド皮下投与群とプラセボ群にランダムに割り付け、さらに生活習慣への介入を行った。
主要エンドポイントは、体格指数(BMI;体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値)の変化率であった。確認のための副次的エンドポイントは、体重の変化率とBMIの5%以上の低下であった。
結果:合計82人の参加者がランダム割付けを受け、56人がリラグルチド群に、26人がプラセボ群に割り付けられた。56週目のBMIのベースラインからの平均変化率はリラグルチド群で-5.8%、プラセボ群で1.6%であり、推定差は-7.4%ポイントであった(95%信頼区間[CI] -11.6 ~ -3.2;P<0.001)。体重の平均変化率は、リラグルチド群で1.6%、プラセボ群で10.0%であり、推定差は-8.4%ポイント(95%信頼区間[CI] -13.4 ~ -3.3;P=0.001)であった。BMIが少なくとも5%低下したのは、リラグルチド群で46%、プラセボ群で9%であった(調整オッズ比 6.3、95%CI 1.4~28.8;P=0.02)。有害事象はリラグルチド群で89%、プラセボ群で88%の参加者に発現した。消化器系の有害事象はリラグルチド群でより多く(80% vs. 54%)、重篤な有害事象はリラグルチド群で12%、プラセボ群で8%に報告された。
結論:肥満の小児(6~12歳未満)において、リラグルチドによる56週間の治療+生活習慣介入は、プラセボ+生活習慣介入よりもBMIの低下が大きかった。
資金提供:Novo Nordisk社
試験登録番号:ClinicalTrials.gov番号 NCT04775082
引用文献
Liraglutide for Children 6 to <12 Years of Age with Obesity – A Randomized Trial
Claudia K Fox et al. PMID: 39258838 DOI: 10.1056/NEJMoa2407379
N Engl J Med. 2024 Sep 10. doi: 10.1056/NEJMoa2407379. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39258838/
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