アルツハイマー型認知症における興奮・焦燥に対するブレクスピプラゾールの効果は?(DB-RCT; Alzheimers Dement. 2024)

bald man facing white wall 01_中枢神経系
Photo by Nicola Barts on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

アルツハイマー型認知症の興奮に対するブレクスピプラゾールの効果は?

アルツハイマー型認知症はさまざまな症状を呈します。具体的には、記憶障害として、新しい情報の記憶が難しくなり、見当識障害では時間や場所の認識が困難になります。言語障害により言葉の選び方や会話の理解が難しくなり、遂行機能の低下で日常的な複雑な作業が困難になります。判断力の低下により適切な判断ができなくなり、性格や行動の変化として、感情のコントロールが難しくなったり、意欲が低下することもあります。このような症状は、家族や介護者、医療従事者とのコミュニケーションを阻害する要因となります。なかでも興奮や焦燥といった周辺症状(焦燥性興奮, agitation)は介護者の心身への負担となることから、早急な治療立案が求められています。

そこで今回は、日本人アルツハイマー型認知症(AAD)の興奮(agitation)に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を検討した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は第2/3相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であり、AAD患者をブレクスピプラゾール1mg/日、2mg/日、またはプラセボ(3:4:4)にランダムに割り付け、10週間投与しました。

試験結果から明らかになったことは?

最小二乗平均差
(95%CI)
vs. プラセボ
ブレクスピプラゾール1mg群-7.2
-10.0 ~ -4.3
p値<0.0001
ブレクスピプラゾール2mg群-3.7
-6.8 ~ -0.7
p値=0.0175

主要評価項目(ベースラインから10週目までのCohen-Mansfield Agitation Inventory [CMAI]総スコアの変化)において、ブレクスピプラゾール1mg群および2mg群はいずれもプラセボ群に対して統計学的に有意な改善を示しました(2mg群:最小二乗平均差 -7.2、95%信頼区間(CI)-10.0 ~ -4.3、p値<0.0001、1mg群:最小二乗平均差 -3.7、95%信頼区間(CI) -6.8 ~ -0.7、p値=0.0175)。

治療上緊急の有害事象発生率
ブレクスピプラゾール1mg群76.8%
ブレクスピプラゾール2mg群84.6%
プラセボ群73.8%

ブレクスピプラゾール1mg群、2mg群、プラセボ群で報告された治療上緊急の有害事象の発生率は、それぞれ76.8%、84.6%、73.8%でした。

コメント

アルツハイマー型認知症の焦燥性興奮(agitation)に対するブレイクスピラゾールの効果については充分に検証されていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、ブレクスピプラゾールの10週間投与はアルツハイマー型認知症における興奮を改善しました。本試験のよって、ブレクスピプラゾール1mg/日の有効性が初めて確認されたことになります。有害事象の発現率は過去の試験と比較して高いことが示されました。

ただし、対象となったのは410例であり、各群100例強での検証結果です。また、主要評価項目であるCMAI総スコアのMCID(臨床的に重要な治療の最小差)は-17であることが報告されています。このため、実臨床におけるブレイクスピラゾールの効果を実感できるのかについては、更なる検証が求められます。

続報に期待。

monochrome photo of couple holding hands

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、ブレクスピプラゾールの10週間投与はアルツハイマー型認知症における興奮を改善した。ブレクスピプラゾール1mg/日の有効性が初めて確認された。有害事象の発現率は過去の試験と比較して高かった。

根拠となった試験の抄録

はじめに:日本人アルツハイマー型認知症(AAD)における興奮(agitation)に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を検討した。

方法:本試験は第2/3相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験である。AAD患者をブレクスピプラゾール1mg/日、2mg/日、またはプラセボ(3:4:4)にランダムに割り付け、10週間投与した。

結果:主要評価項目(ベースラインから10週目までのCohen-Mansfield Agitation Inventory [CMAI]総スコアの変化)において、ブレクスピプラゾール1mg群および2mg群はいずれもプラセボ群に対して統計学的に有意な改善を示した(2mg群:最小二乗平均差 -7.2、95%信頼区間(CI)-10.0 ~ -4.3、p値<0.0001、1mg群:最小二乗平均差 -3.7、-6.8 ~ -0.7、p値=0.0175)。ブレクスピプラゾール1mg群、2mg群、プラセボ群で報告された治療上緊急の有害事象の発生率は、それぞれ76.8%、84.6%、73.8%であった。

考察:ブレクスピプラゾール1mg/日および2mg/日の10週間投与は有効であり、忍容性も良好であった。

ハイライト:ブレクスピプラゾールの10週間投与はアルツハイマー型認知症における興奮を改善した。ブレクスピプラゾール1mg/日の有効性が初めて確認された。有害事象の発現率は過去の試験と比較して高かった。ブレクスピプラゾール1mg/日、2mg/日ともに忍容性は概ね良好であった。

キーワード:アルツハイマー病、日本、brexpiprazole、有効性、安全性

引用文献

Brexpiprazole treatment for agitation in Alzheimer’s dementia: A randomized study
Yu Nakamura et al. PMID: 39369280 DOI: 10.1002/alz.14282
Alzheimers Dement. 2024 Oct 6. doi: 10.1002/alz.14282. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39369280/

コメント

タイトルとURLをコピーしました