心筋梗塞後の左室血栓管理における直接経口抗凝固薬 vs. ビタミンK拮抗薬(メタ解析; Am J Cardiol. 2024)

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左室の血栓管理で優れる薬剤は?

左室(LV)血栓形成は、早期再灌流が可能となった現代においても、急性心筋梗塞(AMI)後の合併症の一つです。この臨床シナリオにおける最適な抗凝固療法レジメンは充分に定義されていません。

そこで今回は、AMI後のLV血栓の管理におけるビタミンK拮抗薬(VKA)と比較した直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性と安全性プロファイルを検討したメタ解析の結果をご報告いたします。

AMI後のLV血栓患者に対するDOACとVKAの使用に関する有効性と安全性の転帰データを報告した研究を同定するために、電子データベースを用いて系統的な文献レビューが行われました。オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、プールされたORを統合するためにランダム効果メタ解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

合計605例の患者からなる8件の研究が組み入れられました。

プールオッズ比(95%CI)
DOAC vs. VKA
血栓消失プールOR 1.95(95%CI 1.25~3.04
p=0.003、I2=0%
全身性塞栓症プールOR 0.30(95%CI 0.12~0.75
p=0.01、I2=0%
出血リスクプールOR 0.46(95%CI 0.26~0.84
p=0.01、I2=0%
安全性と有効性の複合アウトカムプールOR 0.37(95%CI 0.23~0.60
p<0.0001、I2=0%

DOACはVKAと比較して血栓消失の可能性が約2倍高く(プールOR 1.95[95%CI 1.25~3.04]、p=0.003、I2=0%)、全身性塞栓症のリスクを70%減少させた(プールOR 0.30[95%CI 0.12~0.75]、p=0.01、I2=0%)。DOACの使用はVKAと比較して出血リスクを54%減少させた(プールOR 0.46[95%CI 0.26~0.84]、p=0.01、I2=0%)。

全体として、DOACを投与された患者はVKAを投与された患者と比較して、安全性と有効性の複合アウトカムに達するリスクが63%低いことが示されました(プールOR 0.37[95%CI 0.23~0.60]、p<0.0001、I2=0%)。

コメント

左室血栓管理におけるDOACとVKAの比較は充分に行われていません。

さて、8件のメタ解析の結果、急性心筋梗塞(AMI)に関連した血栓の左室血栓の管理において、DOACはVKAと比較してより良好な有効性と安全性プロファイルを有することが示唆されました。

統合された試験数は8報、症例数は605例と小規模な検証結果ではありますが、結果の異質性はいずれも0%です。血栓を消失させる可能性が約2倍高く、安全性評価も優れていることが示されています。

今後の臨床試験の結果により、結果が覆る可能性はゼロではありませんが、現時点では低いと考えられます。左室血栓管理はVKAよりもDOACを優先した方が良いのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 8件のメタ解析の結果、急性心筋梗塞(AMI)に関連した血栓の左室血栓の管理において、DOACはVKAと比較してより良好な有効性と安全性プロファイルを有することが示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:左室(LV)血栓形成は、早期再灌流が可能となった現代においても、急性心筋梗塞(AMI)後の合併症の一つである。この臨床シナリオにおける最適な抗凝固療法レジメンは十分に定義されていない。今回のメタアナリシスでは、AMI後のLV血栓の管理におけるビタミンK拮抗薬(VKA)と比較した直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性と安全性プロファイルを検討した。

方法:AMI後のLV血栓患者に対するDOACとVKAの使用に関する有効性と安全性の転帰データを報告した研究を同定するために、電子データベースを用いて系統的な文献レビューを行った。オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、プールされたORを統合するためにランダム効果メタ解析を行った。

結果:合計605例の患者からなる8件の研究が組み入れられた。DOACはVKAと比較して血栓消失の可能性が約2倍高く(プールOR 1.95[1.25~3.04]、p=0.003、I2=0%)、全身性塞栓症のリスクを70%減少させた(プールOR 0.30[0.12~0.75]、p=0.01、I2=0%)。DOACの使用はVKAと比較して出血リスクを54%減少させた(プールOR 0.46[0.26~0.84]、p=0.01、I2=0%)。全体として、DOACを投与された患者はVKAを投与された患者と比較して、安全性と有効性の複合アウトカムに達するリスクが63%低かった(プールOR 0.37[0.23~0.60]、p<0.0001、I2=0%)。

結論:急性心筋梗塞(AMI)に関連した血栓の左室血栓の管理において、DOACはVKAと比較してより良好な有効性と安全性プロファイルを有すると思われる。

キーワード:直接経口抗凝固薬;左室血栓;メタ解析;心筋梗塞;ビタミンK拮抗薬

引用文献

Direct Oral Anticoagulants Versus Vitamin K Antagonists for the Management of Left Ventricular Thrombus After Myocardial Infarction: A Meta-Analysis
Christos Gogo et al. PMID: 39265798 DOI: 10.1016/j.amjcard.2024.09.008
Am J Cardiol. 2024 Sep 11:232:18-25. doi: 10.1016/j.amjcard.2024.09.008. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39265798/

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