がん性悪液質治療におけるポンセグロマブの効果はどのくらい?(RCT; N Engl J Med. 2024)

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体重増加や悪液質に対するGDF-15阻害薬ポンセグロマブの効果は?

悪液質は、がんの一般的な合併症であり、死亡リスクの増加と関連しています。循環性サイトカインである増殖分化因子15(growth differentiation factor 15, GDF-15)のレベルは、がん性悪液質で上昇することが知られています。したがって、GDF-15阻害薬であるponsegromab(ポンセグロマブ)により、がん性悪液質が改善する可能性がありますが、実臨床における検証は充分ではありません。

そこで今回は、がん性悪液質患者を対象としたポンセグロマブの効果を検証した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

この第2相ランダム化二重盲検12週間試験では、がん性悪液質で血清GDF-15値が上昇(1,500pg/ml以上)している患者が、ポンセグロマブを100mg、200mg、400mgの用量で投与する群と、プラセボを4週間ごとに3回皮下投与する群に割り付けられました(1:1:1:1の割合)。

本試験の主要エンドポイントは12週時点の体重のベースラインからの変化でした。主な副次的エンドポイントは、食欲と悪液質症状、身体活動のデジタル測定値、安全性でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計187例の患者がランダム化を受けました。これらの患者のうち40%が非小細胞肺癌、32%が膵癌、29%が大腸癌でした。

(12週時点におけるプラセボ群との比較)群間差中央値
(95%信頼区間)
vs. プラセボ群
ポンセグロマブ100mg群1.22kg(0.37〜2.25)
ポンセグロマブ200mg群1.22kg(0.37〜2.25)
ポンセグロマブ400mg群2.81kg(1.55〜4.08)

12週時点で、ポンセグロマブ群の患者の体重増加はプラセボ群より有意に大きく、群間差中央値は100mg群で1.22kg(95%信頼区間 0.37〜2.25)、200mg群で1.92kg(95%信頼区間 0.92〜2.97)、400mg群で2.81kg(95%信頼区間 1.55〜4.08)でした。

ポンセグロマブ400mg群では、プラセボ群と比較して、食欲と悪液質の症状、身体活動性の各測定項目で改善が認められました。

何らかの原因による有害事象は、ポンセグロマブ群の70%、プラセボ群の80%で報告されました。

コメント

がん悪液質(cancer cochexia, コヘキシア)は「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されます(PMID: 21296615、がん悪液質ハンドブック2019)。

がん悪液質は進行がん患者で高率に認められ、体重減少や食欲不振、化学療法の効果の減弱だけでなく、治療に伴う副作用や治療中断の増加、さらには生存率にまで影響を及ぼします。がん患者における体重減少は予後悪化と関連していることから、早急な対応が求められます。現時点で承認されている治療薬としては、グレリン受容体作動薬であるアナモレリンのみであり、新たな治療選択肢が求められています。

さて、ランダム化比較試験の結果、がん性悪液質およびGDF-15レベルの上昇を有する患者において、ポンセグロマブによるGDF-15の阻害は、体重増加および全体的な活動レベルを増加させ、悪液質の症状を減少させました。主要評価項目である体重の変化において、プラセボと比較して用量依存的に体重減少を抑えることから、悪液質に対する有効な治療薬候補となる可能性が高いと考えられます。

また、悪液質の症状についても改善が認められており、具体的にはCRCSD-Appetiteの改善度が大きくいようです。この他、CRCSD-Nausea、CRCSD-Vomiting Frequency、CRCSD-Physical Fatigueなどの項目についても改善が示唆されています。ただし、薬剤用量としては400mgでの改善度が大きいことから、リスクベネフィットについて更なる評価が求められます。

続報に期待。

✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、がん性悪液質およびGDF-15レベルの上昇を有する患者において、ポンセグロマブによるGDF-15の阻害は、体重増加および全体的な活動レベルを増加させ、悪液質の症状を減少させた。

根拠となった試験の抄録

背景:悪液質は、がんの一般的な合併症であり、死亡リスクの増加と関連している。循環性サイトカインである増殖分化因子15(GDF-15)のレベルは、がん性悪液質で上昇する。がん性悪液質患者を対象とした小規模の非盲検第1b相試験において、GDF-15を阻害するヒト化モノクローナル抗体であるponsegromabは、血清GDF-15レベルの抑制とともに、体重、食欲、身体活動の改善と関連していた。

方法:この第2相ランダム化二重盲検12週間試験では、がん性悪液質で血清GDF-15値が上昇(1,500pg/ml以上)している患者を1:1:1:1の割合で、ポンセグロマブを100mg、200mg、400mgの用量で投与する群と、プラセボを4週間ごとに3回皮下投与する群に割り付けた。
主要エンドポイントは12週時点の体重のベースラインからの変化であった。主な副次的エンドポイントは、食欲と悪液質症状、身体活動のデジタル測定値、安全性であった。

結果:合計187例の患者がランダム化を受けた。これらの患者のうち40%が非小細胞肺癌、32%が膵癌、29%が大腸癌であった。12週時点で、ポンセグロマブ群の患者の体重増加はプラセボ群より有意に大きく、群間差中央値は100mg群で1.22kg(95%信頼区間 0.37〜2.25)、200mg群で1.92kg(95%信頼区間 0.92〜2.97)、400mg群で2.81kg(95%信頼区間 1.55〜4.08)であった。ポンセグロマブ400mg群では、プラセボ群と比較して、食欲と悪液質の症状、身体活動性の各測定項目で改善が認められた。何らかの原因による有害事象は、ポンセグロマブ群の70%、プラセボ群の80%で報告された。

結論:がん性悪液質およびGDF-15レベルの上昇を有する患者において、ポンセグロマブによるGDF-15の阻害は、体重増加および全体的な活動レベルを増加させ、悪液質の症状を減少させるという所見をもたらし、悪液質の促進因子としてのGDF-15の役割を確認した。

試験登録番号:ClinicalTrials.gov. NCT05546476

引用文献

Ponsegromab for the Treatment of Cancer Cachexia
John D Groarke et al. PMID: 39282907 DOI: 10.1056/NEJMoa2409515
N Engl J Med. 2024 Sep 14. doi: 10.1056/NEJMoa2409515. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39282907/

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