孤立性表在静脈血栓症に対する抗凝固療法において優れているものはどれか?
孤立性表在静脈血栓症(isolated superficial vein thrombosis、iSVT)は、体内の他の血管や深部静脈に影響を及ぼさない、限局した表在静脈に発生する血栓症を指します。
通常、表在静脈血栓症は、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)に進展するリスクがあるため、特別な注意を必要しますが、孤立性表在静脈血栓症は、これらの合併症のリスクが低いとされています。自然緩解することも多く、徐々に症状も消失していくことが知られています。
総じて、孤立性表在静脈血栓症は、適切に管理されれば、予後は非常に良好であり、長期的な健康に与える影響も少ないとされています。しかし、血栓の大きさや発生部位、基礎疾患の有無によりリスクが異なることから、抗凝固療法やNSAIDs、温罨法などが行われます。しかし、積極的治療が適用される症例が比較的少ないことから治療法の比較検討は充分に行われていません。
そこで今回h、iSVTに対する抗凝固薬の安全性と有効性を評価したベイジアンネットワークメタ解析の結果をご紹介します。
iSVT治療における抗凝固薬について検討したランダム化比較試験(RCT)が対象となり、PRISMA2020ガイドラインに従ってシステマティックレビューが行われました。
本解析の主要評価項目である血栓性合併症には、iSVTの進行/再発、新規発症(深部静脈血栓症)DVTまたは(肺塞栓症)PEの発症が含まれました。
試験結果から明らかになったことは?
フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)2.5mg、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)10mg、治療的、(体重調整)中間用量、予防的低分子ヘパリン(LMW)のいずれかを1日1回投与した8件のRCT、4,721例が対象となりました。
すべての抗凝固薬が血栓性合併症とiSVTの進行・再発に関してプラセボと比較して統計学的に有意なリスク減少を示しましたが、フォンダパリヌクスのみがDVT/PEのリスクを減少させました。
また、フォンダパリヌクスは予防的および治療的LMWHと比較して、DVT/PEイベントの減少においてより高い有効性を示した。
リスク比 RR (95%CI) リバーロキサバン vs. フォオンダパリヌクス | |
血栓性合併症の予防 | RR 1.00 (0.51~1.92) |
さらに、リバーロキサバンとフォンダパリヌクスは、LMWHの3つの投与レジメンすべてと比較して、血栓性合併症の予防という点で優れた結果を示し、両者に有意差はみられませんでした(リスク比RR 1.00、95%CI 0.51~1.92)。
フォンダパリヌクス | リバーロキサバン | |
血栓性合併症 | SUCRA 91.6 | (抄録に記載なし) |
DVT/PE | SUCRA 96 | (抄録に記載なし) |
iSVTの進行/再発 | (抄録に記載なし) | SUCRA 94.68 |
SUCRAでは、血栓性合併症(SUCRA 91.6)およびDVT/PE(SUCRA 96)に関してはフォンダパリヌクスが、iSVTの進行/再発(SUCRA 94.68)に関してはリバーロキサバンが最も有効な治療法であることが確認された
。最終的に、モデルには一定の限界があるものの、メタ回帰分析により、血栓性合併症については治療期間が長いほど予後が改善する傾向が示唆されました(β -0.34、95%CI -16.39〜12.23)。
コメント
孤立性表在静脈血栓症(isolated superficial vein thrombosis、iSVT)に対する抗凝固療法の比較検証データは限られています。
ランダム化比較試験を対象としたベイジアンネットワークメタ解析の結果、治療期間や追跡期間にばらつきがあるなど固有の限界はあるものの、孤立性表在静脈血栓症(iSVT)治療におけるフォンダパリヌクス、リバーロキサバン、低分子ヘパリンの有効性が示されました。
特にフォンダパリヌクスの有効性が優れていそうではありますが、試験数・症例数ともに限られており、再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。
また、2024年7月現在、表在静脈血栓症に対して適応を有している抗凝固薬はありません。これはDVTと比較して予後にすぐれているため、治療薬として開発が進んでいないため(比較的ニーズが低い)と考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたベイジアンネットワークメタ解析の結果、治療期間や追跡期間にばらつきがあるなど固有の限界はあるものの、孤立性表在静脈血栓症(iSVT)治療におけるフォンダパリヌクス、リバーロキサバン、低分子ヘパリンの有効性が示された。
根拠となった試験の抄録
目的:孤立性表在静脈血栓症(iSVT)に対する抗凝固薬の安全性と有効性を評価する。
材料と方法:iSVT治療における抗凝固薬について検討したランダム化比較試験(RCT)について、PRISMA2020ガイドラインに従ってシステマティックレビューを行った。
主要評価項目である血栓性合併症には、iSVTの進行/再発、新規発症(深部静脈血栓症)DVTまたは(肺塞栓症)PEの発症を含めた。
結果:フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)2.5mg、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)10mg、治療的、(体重調整)中間用量、予防的低分子ヘパリン(LMW)のいずれかを1日1回投与した8件のRCT、4,721例が対象となった。すべての抗凝固薬が血栓性合併症とiSVTの進行・再発に関してプラセボと比較して統計学的に有意なリスク減少を示したが、フォンダパリヌクスだけがDVT/PEのリスクを減少させた。さらに、フォンダパリヌクスは予防的および治療的LMWHと比較して、DVT/PEイベントの減少においてより高い有効性を示した。さらに、リバーロキサバンとフォンダパリヌクスは、LMWHの3つの投与レジメンすべてと比較して、血栓性合併症の予防という点で優れた結果を示し、両者に有意差はみられなかった(リスク比RR 1.00、95%CI 0.51~1.92)。SUCRAでは、血栓性合併症(SUCRA 91.6)およびDVT/PE(SUCRA 96)に関してはフォンダパリヌクスが、iSVTの進行/再発(SUCRA 94.68)に関してはリバーロキサバンが最も有効な治療法であることが確認された。最終的に、モデルには一定の限界があるものの、メタ回帰分析により、血栓性合併症については治療期間が長いほど予後が改善する傾向が示唆された(β -0.34、95%CI -16.39〜12.23)。
結論:治療期間や追跡期間にばらつきがあるなど固有の限界はあるものの、このレビューではiSVT治療におけるフォンダパリヌクス、リバーロキサバン、LMWHの有効性が示された。フォンダパリヌクスの治療的LMWHに対する有効性は、DVT/PEアウトカムの点で改善されていることから、慎重な解釈が必要であり、十分な検出力を有するRCTによる更なる調査の必要性が強調された。
キーワード:フォンダパリヌクス;低分子ヘパリン;リバロキサバン;表在性血栓性静脈炎;表在性静脈血栓症
引用文献
Anticoagulants for the treatment of isolated lower limb superficial vein thrombosis a Bayesian network meta-analysis of randomized controlled trials
Alkis Bontinis et al.
Thromb Res. 2024 Jul 20:241:109101. doi: 10.1016/j.thromres.2024.109101. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39047307/
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