バレニクリン vs. ニコチン含有電子タバコ(EC)
禁煙補助薬としてバレニクリンと比較したニコチン含有電子タバコ(electronic cigarettes, ECs)が使用されていますが、これらの相対的有効性については充分に検証されていません。
そこで今回は、禁煙におけるECsの相対的有効性を明らかにすることを目的に実施されたランダム化プラセボ対照単施設試験の結果をご紹介します。
本試験は、フィンランド北部で実施されました。毎日喫煙し、禁煙を志願した25~75歳の参加者を、2018年8月1日から2020年2月20日まで、地元メディアを通じて募集しました(52週間の追跡調査が含む)。すべてのデータ解析は、2022年9月1日から2024年1月15日まで行われた。参加者、試験看護師、研究者は、群割り付けについてマスクされていました。
試験参加者はブロックランダム化により、18mg/mLのニコチン含有ECsとプラセボ錠を併用する群、標準用量でバレニクリンとニコチン非含有ECを併用する群、プラセボ錠とニコチン非含有ECを併用する群に割り付けられ、すべてに動機付け面接が併用され、介入期は12週間継続しました。
本試験の主要評価項目は、26週目の呼気一酸化炭素濃度によって確認された、自己申告による7日間の従来型タバコ禁煙でした。解析はintent-to-treatの原則に従って行われました。
試験結果から明らかになったことは?
募集された561人の参加者のうち、458人(81.6%)の適格参加者(女性257人[56%];男性201人[44%];平均年齢、51[SD 11.6]歳)がランダム化されました。
ECs群 | バレニクリン群 | プラセボ群 | |
主要転帰 | 152人中61人 (40.4%) | 153人中67人 (43.8%) | 153人中30人 (19.7%) |
リスク差 RD vs. プラセボ | RD 20.7% (95%CI 10.4〜30.4) P<0.001 | RD 24.1% (95%CI 13.7〜33.7) P<0.001 | – |
リスク差 RD vs. バレニクリン | RD 3.4% (95%CI -7.6〜14.3) P=0.56 | – | – |
主要転帰は、EC群152人中61人(40.4%)、バレニクリン群153人中67人(43.8%)、プラセボ群153人中30人(19.7%)で認められました(P<0.001)。一対比較では、プラセボはEC(リスク差[RD] 20.7%;95%CI 10.4〜30.4;P<0.001)およびバレニクリン(RD 24.1%;95%CI 13.7〜33.7;P<0.001)と統計学的に有意な差がありましたが、ECとバレニクリン(RD 3.4%;95%CI -7.6〜14.3;P=0.56)との差は統計学的に有意ではありませんでした。
重篤な有害事象は報告されませんでした。
コメント
禁煙補助として、バレニクリンとニコチン含有電子タバコが用いられていますが、これらの有効性比較は充分に行われていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、ランダム化臨床試験により、バレニクリンとニコチン含有電子タバコはともに、最長6ヵ月間、従来のタバコの禁煙を支援する効果があることが明らかになりました。
課題としては禁煙の継続期間です。喫煙による肺がんリスクを下げるには、10年単位での禁煙継続が求められます。
なお、以前にバレニクリンによる心血管イベントのリスク上昇の可能性について報告がありましたが、その後の調査結果で「心血管イベントのリスク上昇はない」と結論づけられています。
喫煙による肺がんなどのリスク上昇を踏まえると、バレニクリンをはじめとする禁煙補助薬やニコチン含有電子タバコを活用した方が良さそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、ランダム化臨床試験により、バレニクリンとニコチン含有電子タバコはともに、最長6ヵ月間、従来のタバコの禁煙を支援する効果があることが明らかになった。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:禁煙補助薬としてバレニクリンと比較したニコチン含有電子タバコ(EC)の相対的有効性についてはほとんど知られていない。
目的:禁煙におけるECの相対的有効性を明らかにすること。
試験デザイン、設定、参加者:このランダム化プラセボ対照単施設試験はフィンランド北部で実施された。毎日喫煙し、禁煙を志願した25~75歳の参加者を、2018年8月1日から2020年2月20日まで、地元メディアを通じて募集した。試験には52週間の追跡調査が含まれた。すべてのデータ解析は、2022年9月1日から2024年1月15日まで行われた。参加者、試験看護師、研究者は、群割り付けについてマスクされた。
介入:参加者はブロックランダム化により、18mg/mLのニコチン含有ECとプラセボ錠を併用する群、標準用量でバレニクリンとニコチン非含有ECを併用する群、プラセボ錠とニコチン非含有ECを併用する群に割り付けられ、すべてに動機付け面接が併用され、介入期は12週間継続した。
主要評価項目:主要評価項目は、26週目の呼気一酸化炭素濃度によって確認された、自己申告による7日間の従来型タバコ禁煙であった。解析はintent-to-treatの原則に従った。
結果:募集された561人の参加者のうち、458人(81.6%)の適格参加者(女性257人[56%];男性201人[44%];平均年齢、51[SD 11.6]歳)がランダム化された。主要転帰は、EC群152人中61人(40.4%)、バレニクリン群153人中67人(43.8%)、プラセボ群153人中30人(19.7%)で発現した(P < 0.001)。一対比較では、プラセボはEC(リスク差[RD] 20.7%;95%CI 10.4〜30.4;P<0.001)およびバレニクリン(RD 24.1%;95%CI 13.7〜33.7;P<0.001)と統計学的に有意な差があったが、ECとバレニクリン(RD 3.4%;95%CI -7.6〜14.3;P=0.56)との差は統計学的に有意ではなかった。重篤な有害事象は報告されなかった。
結論:このランダム化臨床試験により、バレニクリンとニコチン含有電子タバコはともに、最長6ヵ月間、従来のタバコの禁煙を支援する効果があることが明らかになった。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT03235505
引用文献
Electronic Cigarettes vs Varenicline for Smoking Cessation in Adults: A Randomized Clinical Trial
Anna Tuisku et al.
JAMA Intern Med. 2024 Jun 17:e241822. doi: 10.1001/jamainternmed.2024.1822. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38884987/
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