短時間睡眠と精神病リスクとの関連性は?
小児期の長期間にわたる短時間睡眠は、精神病の発症を含む長期的な精神的健康に有害な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの関連性の潜在的な基礎となる機序は依然として不明です。
そこで今回は、小児期の持続的な夜間睡眠時間の短縮と、24歳時点での精神病体験(psychotic experiences, PEs)および/または精神病性障害(psychotic disorder, PD)との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白[CRP]およびインターロイキン6[IL-6])が関連性を媒介する可能性があるかどうかを検討することを目的に実施されたコホート研究の結果をご紹介します。
このコホート研究では、Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenのデータが用いられました。データ解析は2023年1月30日から8月1日に実施されました。
夜間の睡眠時間は6ヵ月、18ヵ月、30ヵ月、および3歳半、4~5歳、5~6歳、6~7歳の時点で収集されました。
本試験の主要転帰は、24歳時にPEsとPDについて精神病様症状面接(Psychosis-like Symptoms Interview)によって評価されました。9歳と15歳のCRP値と9歳のIL-6値を媒介因子とされました。夜間睡眠時間の軌跡を検出するために潜在クラス成長分析(LCGA)が適用され、夜間睡眠時間の軌跡と24歳時の精神病転帰との縦断的関連についてロジスティック回帰が用いられました。CRPとIL-6が潜在的な媒介因子であることを検証するためにパス解析が適用されました。
試験結果から明らかになったことは?
潜在クラス成長分析(LCGA)では小児12,394例(女性6,254例[50.5%])、ロジスティック回帰分析およびパス分析では若年成人3,962例(女性2,429例[61.3%])のデータが得られました。LCGAにより、小児期を通じて夜間の睡眠時間が持続的に短い集団が同定されました。
クラス1:夜間の睡眠時間が持続的に短かった(301例[2.4%])
クラス2:夜間の睡眠時間が中短時間で持続する(2,743例[21.7%])
クラス3:夜間の睡眠時間が持続的に長い(1,684例[13.6%])
クラス4、夜間の睡眠時間が中等度より長く持続する(7,666例[61.9%])
24歳時における精神病様症状面接による評価 | オッズ比 OR (95%CI) |
精神病性障害(PD) | OR 2.50 (1.51〜4.15) P<0.001 |
精神病体験(PEs) | OR 3.64 (2.23〜5.95) P<0.001 |
クラス1の群では、クラス4と比較して、24歳時にPD(オッズ比[OR] 2.50、95%CI 1.51〜4.15;P<0.001)およびPEs(OR 3.64、95%CI 2.23〜5.95;P<0.001)を発症する可能性が高いことが示されました。
9歳時のIL-6レベルの上昇は、9歳時または15歳時のCRPレベルではなく、若年成人期における持続的な睡眠時間の短さとPD(バイアス補正推定値=0.003、95%CI 0.002〜0.005;P=0.007)およびPEs(バイアス補正推定値=0.002、95%CI 0〜0.003;P=0.03)との関連を部分的に媒介していました。
コメント
小児期の長期間にわたる短時間睡眠は、青年期における精神衛生上の有害な影響と関連している可能性があります。しかし、充分に検証されていません。
コホート研究の結果、睡眠問題の持続がその後の精神病と関連していることが示されました。この結果は、小児における短時間睡眠への対処の必要性を強調しています。また、短時間睡眠は、9歳時のIL-6レベルの上昇との関連性についても示唆されました。
睡眠時間に関する結果の再現性の確認、抗炎症介入により精神病リスクが低減できるのか、今後の前向き研究の結果が待たれるところです。
続報に期待。
✅まとめ✅ コホート研究の結果、この睡眠問題の持続がその後の精神病と関連していたことから、小児における短時間睡眠への対処の必要性を強調している。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:小児期の長期間にわたる短時間睡眠は、精神病の発症を含む長期的な精神的健康に有害な影響を及ぼす可能性がある。さらに、これらの関連性の潜在的な基礎となる機序は依然として不明である。
目的:小児期の持続的な夜間睡眠時間の短縮と、24歳時点での精神病体験(psychotic experiences, PEs)および/または精神病性障害(psychotic disorder, PD)との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白[CRP]およびインターロイキン6[IL-6])が関連性を媒介する可能性があるかどうかを検討すること。
試験デザイン、設定、参加者:このコホート研究はAvon Longitudinal Study of Parents and Childrenのデータを用いた。データ解析は2023年1月30日から8月1日に実施された。
曝露:夜間の睡眠時間は6ヵ月、18ヵ月、30ヵ月、および3歳半、4~5歳、5~6歳、6~7歳の時点で収集された。
主要転帰と測定:24歳時にPEsとPDを精神病様症状面接(Psychosis-like Symptoms Interview)により評価した。9歳と15歳のCRP値と9歳のIL-6値を媒介因子とした。夜間睡眠時間の軌跡を検出するために潜在クラス成長分析(LCGA)を適用し、夜間睡眠時間の軌跡と24歳時の精神病転帰との縦断的関連についてロジスティック回帰を適用した。CRPとIL-6が潜在的な媒介因子であることを検証するためにパス解析を適用した。
結果:LCGAでは小児12,394例(女性6,254例[50.5%])、ロジスティック回帰分析およびパス分析では若年成人3,962例(女性2,429例[61.3%])のデータが得られた。LCGAにより、小児期を通じて夜間の睡眠時間が持続的に短い集団が同定された。これらの群では、24歳時にPD(オッズ比[OR] 2.50、95%CI 1.51〜4.15;P<0.001)およびPEs(OR 3.64、95%CI 2.23〜5.95;P<0.001)を発症する可能性が高かった。9歳時のIL-6レベルの上昇は、9歳時または15歳時のCRPレベルではなく、若年成人期における持続的な睡眠時間の短さとPD(バイアス補正推定値=0.003、95%CI 0.002〜0.005;P=0.007)およびPEs(バイアス補正推定値=0.002、95%CI 0〜0.003;P=0.03)との関連を部分的に媒介した。
結論と関連性:このコホート研究の結果は、この睡眠問題の持続がその後の精神病と関連していたことから、小児における短時間睡眠への対処の必要性を強調している。この研究はまた、睡眠と炎症反応の両方に対処する、小児を対象とした将来の介入に関する予備的な証拠となる。
引用文献
Role of Inflammation in Short Sleep Duration Across Childhood and Psychosis in Young Adulthood
Isabel Morales-Muñoz et al. PMID: 38717746 PMCID: PMC11079792 DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2024.0796
JAMA Psychiatry. 2024 May 8:e240796. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2024.0796. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38717746/
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