がん患者の静脈血栓塞栓症二次予防におけるアピキサバン減量の効果はどのくらい?(DB-RCT; EVE試験; J Thromb Haemost. 2024)

white pills in row on yellow background 12_血液・造血器系
Photo by Karolina Grabowska on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

がん関連VTEにおけるアピキサバン減量の効果は?

がん関連静脈血栓塞栓症(VTE)管理ガイドラインの推奨事項には、がんの活動性が持続している間は抗凝固療法を継続することが含まれています。

アピキサバンの連邦医薬品局の添付文書には、VTE二次予防のための用量として、治療開始6ヵ月後に1回2.5mgを1日2回に減量することが記載されていますが、患者転帰への影響については充分に検証されていません。

そこで今回は、がん関連VTEに対してアピキサバン減量が望ましいかどうかを判断するために実施されたランダム化比較試験(EVE試験)の結果をご紹介します。

6~12ヵ月の抗凝固療法を完了したVTEを有するがん患者を対象に、アピキサバン2.5mgと5mgを1日2回12ヵ月間投与するランダム化二重盲検比較試験が実施されました。

本試験の主要アウトカムは、大出血と臨床的に関連性のある非大出血の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

試験に組み入れられた370例のうち、360例がintention-to-treat解析に組み入れられました。

アピキサバン2.5mg群5mg群ハザード比 HR
(95%CI)
大出血および臨床的に関連性のある非大出血179例中16例
(8.9%)
181例中22例
(12.2%)
HR] 0.72
0.38〜1.37
P=0.39
 大出血2.8%2.2%HR 1.26
0.34〜4.66
P=0.73
VTEまたは動脈血栓症の再発179例中9例
(5.0%)
181例中9例
(5.0%)
HR 1.0
0.40〜2.53
P=1.00
全死因死亡率13%12%HR 1.14
0.63〜2.04
P=0.67

大出血および臨床的に関連性のある非大出血は、アピキサバン2.5mg群では179例中16例(8.9%)にみられたのに対し、5mg群では181例中22例(12.2%)にみられました(ハザード比[HR] 0.72、95%CI 0.38〜1.37;P=0.39)。

大出血はアピキサバン2.5mg群の2.8%、5mg群の2.2%に発生しました(HR 1.26、95%CI 0.34〜4.66;P=0.73)。

VTEまたは動脈血栓症の再発は、アピキサバン2.5mg群では179例中9例(5.0%)、5mg群では181例中9例(5.0%)に認められました(HR 1.0、95%CI 0.40〜2.53;P=1.00)。

全死因死亡率は13% vs. 12%(HR 1.14、95%CI 0.63〜2.04;P=0.67)と群間で同程度でした。

コメント

がん関連静脈血栓塞栓症(VTE)の予防的管理において、抗凝固薬の減量が患者転帰を改善できるかについては充分に検証されていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験(追跡期間12ヵ月)の結果、がん関連VTEの二次予防において、アピキサバン2.5mg1日2回投与は5mg1日2回投与と比較して、複合出血イベントを低下させませんでした。

VTEまたは動脈血栓症の再発を含めて、他のアウトカムについても群間差がないことから、コストも踏まえるとアピキサバンを2.5mgに減量することは合理的であるように考えられます。どのような患者でアピキサバン5mgが必要となるのか、更なる検証が求められます。

続報に期待。

woman showing paper with prohibition sign

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、がん関連VTEの二次予防において、アピキサバン2.5mg1日2回投与は5mg1日2回投与と比較して、複合出血イベントを低下させなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:がん関連静脈血栓塞栓症(VTE)管理ガイドラインの推奨事項には、がんの活動性が持続している間は抗凝固療法を継続することが含まれている。VTE二次予防のためのアピキサバンの連邦医薬品局の添付文書には、治療開始6ヵ月後に1回2.5mgを1日2回に減量することが記載されている。

目的:本研究の目的は、がん関連VTEに対してこの減量が望ましいかどうかを判断することである。

方法:6~12ヵ月の抗凝固療法を完了したVTEのがん患者を対象に、アピキサバン2.5mgと5mgを1日2回12ヵ月間投与するランダム化二重盲検比較試験を実施した。
主要アウトカムは、大出血と臨床的に関連性のある非大出血の複合とした。

結果:試験に組み入れられた370例のうち、360例がintention-to-treat解析に組み入れられた。大出血および臨床的に関連性のある非大出血は、アピキサバン2.5mg群では179例中16例(8.9%)にみられたのに対し、5mg群では181例中22例(12.2%)にみられた(ハザード比[HR] 0.72、95%CI 0.38〜1.37;P=0.39)。大出血はアピキサバン2.5mg群の2.8%、5mg群の2.2%に発生した(HR 1.26、95%CI 0.34〜4.66;P=0.73)。VTEまたは動脈血栓症の再発は、アピキサバン2.5mg群では179例中9例(5.0%)、5mg群では181例中9例(5.0%)に認められた(HR 1.0、95%CI 0.40〜2.53;P=1.00)。全死因死亡率は13% vs. 12%(HR 1.14、95%CI 0.63〜2.04;P=0.67)と群間で同程度であった。

結論:がん関連VTEの二次予防において、アピキサバン2.5mgは5mg1日2回投与と比較して、複合出血イベントを低下させなかった(EVE試験, NCT03080883)。

キーワード:アピキサバン、がん、二次予防、静脈血栓塞栓症

引用文献

Extending venous thromboembolism secondary prevention with apixaban in cancer patients. The EVE trial
Robert D McBane 2nd et al. PMID: 38537780 DOI: 10.1016/j.jtha.2024.03.011
J Thromb Haemost. 2024 Mar 25:S1538-7836(24)00169-7. doi: 10.1016/j.jtha.2024.03.011. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38537780/

コメント

タイトルとURLをコピーしました