スタチンに対するLDL-Cの反応は併存疾患や併用薬に影響を受けますか?(コホート研究; Am Heart J. 2024)

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スタチン治療に影響する要因には何があるのか?

スタチン治療に対する低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の反応は様々であり、合併症の有無や併用薬の使用によって影響を受ける可能性があります。これらの要因に基づくスタチンに対する反応の系統的な変動は、集団のサブグループにおけるスタチン治療レジメンの選択に影響を及ぼす可能性があります。しかし、どのような要因が影響しているのかについては、充分に検証されていません。

そこで今回は、一般的な併存疾患や併用薬が個々の患者におけるスタチン反応において臨床的に重要な影響を及ぼすかどうかを検討したコホート研究の結果をご紹介します。

この登録ベースのコホート研究は、2008~2018年にデンマークで、スタチン投与前およびスタチン投与中のLDL-C値を測定したシンバスタチンまたはアトルバスタチン開始者89,006例が対象となりました。

スタチン反応性をLDL-Cの低下率と定義し、175の慢性合併症と99の併用薬に応じて、線形回帰を用いて低下率の差(percentage reduction differences, PRD)が推定されました。観察された関連について、統計学的有意性(多重検定で補正したp値)と臨床的重要性(PRDが5%ポイント以上)の両方が評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

メトホルミンを含む経口血糖降下薬の併用は、統計学的に有意かつ臨床的に重要なスタチン治療への反応性と関連しており、そのPRDは5.18(95%信頼区間 4.79~5.57)でした。メトホルミンのみの使用ではPRD 5.14(4.71〜5.56)、メトホルミンを含まない経口血糖降下薬ではPRD 2.75(1.06〜4.44)でした。

他の併存疾患や併用薬は、スタチン反応に臨床的に重要な影響を及ぼす有意な閾値には達しませんでした。

全体として、併存疾患と併用薬はスタチン反応にほとんど影響を及ぼさず、全体で観察された母集団の分散のわずか1.7%しか説明できませんでした。

コメント

スタチン治療に対する低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の反応性に対する併存疾患や併用薬の影響については充分に検証されていません

さて、デンマークで実施された登録ベースのコホート研究の結果、検討された併存疾患や併用薬のほとんどはスタチン反応性において臨床的に重要な影響を及ぼさず、治療レジメンを変更する必要はないことが示唆されました。

一方、メトホルミンの使用(正確にはメトホルミンを含む経口血糖降下薬)はスタチンに対するLDL-C反応性の有意な増強と関連しており、メトホルミンを服用している患者ではより低用量のスタチンが有効であることが示唆されました。

メトホルミン(商品名:メトグルコ)1,500mgは、日本人を対象にした第2相試験において、LDLコレステロールを13.6mg/dL低下させることが示されています。このLDL-C低下作用が影響している可能性がるものの、今回のコホート研究におけるメトホルミン用量は不明です。他の要因(交絡因子)が影響している可能性も高いと考えられます。また、メトホルミンを併用することで、スタチン使用に伴う副作用の発生リスクを低減できるのかについては検証されていません。更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ コホート研究の結果、検討された併存疾患や併用薬のほとんどはスタチン反応性において臨床的に重要な影響を及ぼさず、治療レジメンを変更する必要はないことが示唆された。しかし、メトホルミンの使用はスタチンに対するLDL-C反応性の有意な増強と関連しており、メトホルミンを服用している患者ではより低用量のスタチンが有効であることが示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:スタチン治療に対する低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の反応は様々であり、合併症の有無や併用薬の使用によって影響を受ける可能性がある。これらの要因に基づくスタチンに対する反応の系統的な変動は、集団のサブグループにおけるスタチン治療レジメンの選択に影響を及ぼす可能性がある。我々は、一般的な併存疾患や併用薬が個々の患者におけるスタチン反応において臨床的に重要な影響を及ぼすかどうかを検討した。

方法:この登録ベースのコホート研究は、2008~2018年にデンマークで、スタチン投与前およびスタチン投与中のLDL-C値を測定したシンバスタチンまたはアトルバスタチン開始者89,006例を対象とした。スタチン反応性をLDL-Cの低下率と定義し、175の慢性合併症と99の併用薬に応じて、線形回帰を用いて低下率の差(percentage reduction differences, PRD)を推定した。観察された関連について、統計学的有意性(多重検定で補正したp値)と臨床的重要性(PRDが5%ポイント以上)の両方を評価した。

結果:メトホルミンを含む経口血糖降下薬の併用は、統計学的に有意かつ臨床的に重要なスタチン治療への反応性と関連しており、そのPRDは5.18(95%信頼区間 4.79~5.57)であった。他の併存疾患や併用薬は、スタチン反応に臨床的に重要な影響を及ぼす有意な閾値には達しなかった。全体として、併存疾患と併用薬はスタチン反応にほとんど影響を及ぼさず、全体で観察された母集団の分散のわずか1.7%しか説明できなかった。

結論:検討された併存疾患や併用薬のほとんどはスタチン反応性において臨床的に重要な影響を及ぼさず、治療レジメンを変更する必要はないことが示唆された。しかし、メトホルミンの使用はスタチンに対するLDL-C反応性の有意な増強と関連しており、メトホルミンを服用している患者ではより低用量のスタチンが有効であることが示唆された。

キーワード:LDL-コレステロール、薬剤疫学、アトルバスタチン、心血管予防、シンバスタチン、スタチン反応

引用文献

Low-density lipoprotein cholesterol response to statins according to comorbidities and co-medications: a population-based study
Giulia Corn et al. PMID: 38710378 DOI: 10.1016/j.ahj.2024.04.018
Am Heart J. 2024 May 4:S0002-8703(24)00105-4. doi: 10.1016/j.ahj.2024.04.018. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38710378/

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