レジオネラ症に対するキノロン系薬とマクロライド系薬の併用療法は有効なのか?
レジオネラ肺炎(レジオネラ症)はレジオネラ属菌により引き起こされる細菌感染症です。早期診断、早期治療が重要な疾患の一つです。 治療薬としてマクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬、リファンピシン等が挙げられます。
一方、レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の単独療法および併用療法の有効性は依然として不明です。
そこで今回は、3つの治療法の有効性を比較評価することを目的に実施されたデータベース研究の結果をご紹介します。
本研究では、全国の入院患者データベースを用いて、2014年4月1日から2021年3月31日までにレジオネラ症で入院した対象患者3,560例が解析されました。患者は、入院後2日以内に投与された抗生物質によって、併用療法群、キノロン単独療法群、マクロライド単独療法群に分けられました。
治療の逆確率重み付けを用いた多重傾向スコア解析により、これらの群間で院内死亡率、総入院費用、入院期間が比較されました。
試験結果から明らかになったことは?
3,560例のうち、併用療法群、キノロン単独療法群、マクロライド単独療法群にはそれぞれ564例(15.8%)、2,221例(62.4%)、775例(21.8%)が含まれていました。
併用療法群 564例(15.8%) | キノロン単独療法群 2,221例(62.4%) | マクロライド単独療法群 775例(21.8%) | |
院内死亡率 | Reference | 0.1%(95%CI -2.3 〜 2.4) P=0.940 | -1.4%(95%CI -3.8 〜 1.0) P=0.267 |
入院総費用 (1,000円) | Reference | -47 (95%CI -130 〜 36) P=0.271 | -89 (95%CI -186 〜 8) P=0.073 |
入院期間 (日) | Reference | -0.4 (95%CI -2.0 〜 1.1) P=0.593 | -1.6 (95%CI -3.4 〜 0.2) P=0.073 |
院内死亡率は、併用療法群とキノロン単独療法群、併用療法群とマクロライド単独療法群で有意差は認められませんでした。
入院総費用や入院期間についても、3群間で有意差は認められませんでした。
コメント
レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の単独療法および併用療法の有効性は依然として不明です。
さて、日本のDPC入院患者データを用いた後向き研究の結果、レジオネラ症の治療にキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法を用いることに、単独療法と比較して有意な利点はない可能性が示唆されました。あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、基本的には第一選択薬であるニューキノロン系抗菌薬で治療、使用できない患者に対してはマクロライド系抗菌薬で治療することで差し支えないと考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 本研究において、レジオネラ症の治療にキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法を用いることに、単独療法と比較して有意な利点はない可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
はじめに:レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の単独療法および併用療法の有効性は依然として不明であり、本研究では3つの治療法の有効性を比較評価することを目的とした。
方法:全国の入院患者データベースを用いて、2014年4月1日から2021年3月31日までにレジオネラ症で入院した対象患者3,560例を解析した。患者は、入院後2日以内に投与された抗生物質によって、併用療法群、キノロン単独療法群、マクロライド単独療法群に分けられた。治療の逆確率重み付けを用いた多重傾向スコア解析を用いて、これらの群間で院内死亡率、総入院費用、入院期間を比較した。
結果:3,560例のうち、併用療法群、キノロン単独療法群、マクロライド単独療法群にはそれぞれ564例(15.8%)、2,221例(62.4%)、775例(21.8%)が含まれていた。院内死亡率は、併用療法群とキノロン単独療法群、併用療法群とマクロライド単独療法群で有意差は認められなかった。入院総費用や入院期間についても、3群間で有意差は認められなかった。
結論:本研究は、レジオネラ症の治療にキノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法を用いることに、単独療法と比較して有意な利点はない可能性を示唆している。副作用が増加する可能性を考慮すると、この併用療法を選択する際には慎重な検討が必要である。
キーワード:レジオネラ症、抗菌薬、併用療法、単剤療法
引用文献
Analysis of the effectiveness of combination antimicrobial therapy for Legionnaires’ Disease: A nationwide inpatient database study
Satoshi Kutsuna et al. PMID: 38367954 DOI: 10.1016/j.ijid.2024.02.008
Int J Infect Dis. 2024 Feb 15:S1201-9712(24)00032-8. doi: 10.1016/j.ijid.2024.02.008. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38275097/
コメント