血液透析患者に対する認知行動療法、トラゾドンの有効性は?(小規模DB-RCT; Ann Intern Med. 2024)

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血液透析患者の不眠症状に対するトラゾドン vs. 認知行動療法 vs. プラセボ

慢性不眠症は血液透析を受けている患者によくみられるが、この集団に対する有効な治療法に関するエビデンスは限られています。

そこで今回は、長期血液透析を受けている患者の不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)、トラゾドン、プラセボの有効性を比較したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本研究は、ランダム化、多施設、二重盲検、プラセボ対照試験あり(ClinicalTrials.gov: NCT03534284)、ニューメキシコ州アルバカーキおよびワシントン州シアトルの26の透析施設で実施されました。

研究の対象者は、不眠症重症度指数(ISI)が10点以上で、週3日以上の睡眠障害が3ヵ月以上続いている患者でした。組み入れ後、6週間のCBT-I、トラゾドンまたはプラセボにランダムに割り付けられました。

本研究の主要アウトカムはランダム化から7週後と25週後のISIスコアでした。

試験結果から明らかになったことは?

合計923例の患者が事前にスクリーニングされ、慢性不眠症患者411例のうち126例がCBT-I(n=43)、トラゾドン(n=42)、またはプラセボ(n=41)にランダムに割り付けられました。

不眠症重症度指数(ISI)認知行動療法(CBT-I)トラゾドンプラセボ
7週後-3.7
(95%CI -5.5 ~ -1.9
-4.2
(95%CI -5.9 ~ -2.4
-3.1
(95%CI -4.9 ~ -1.3
25週後-4.8
(95%CI -7.0 ~ -2.7
-4.0
(95%CI -6.0 ~ -1.9
-4.3
(95%CI -6.4 ~ -2.2

ベースラインから7週間後までのCBT-IまたはトラゾドンによるISIスコアの変化は、プラセボと同様でした:CBT-Iでは-3.7(95%CI -5.5 ~ -1.9)、トラゾドンでは-4.2(CI -5.9 ~ -2.4)、プラセボでは-3.1(CI -4.9 ~ -1.3)であった。

ベースラインから25週までのISIスコアには有意な変化はみられませんでした:CBT-I -4.8(CI -7.0 ~ -2.7);トラゾドン -4.0(CI -6.0 ~ -1.9);プラセボ -4.3(CI -6.4 ~ -2.2)。

重篤な有害事象(SAE)、特に重篤な心血管イベントはトラゾドンでより頻度が高いことが明らかとなりました(年率換算した心血管SAE発生率:CBT-I 0.05[CI 0.00~0.29];トラゾドン 0.64[CI 0.34~1.10];プラセボ 0.21[CI 0.06~0.53])。

コメント

腎機能低下に伴う掻痒症状などにより、長期間の血液透析患者において不眠症との関連性が報告されています。しかし、有効な治療法については充分に検討されていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、軽度または中等度の慢性不眠症を有する血液透析患者において、6週間の認知行動療法またはトラゾドンの有効性はプラセボと差がありませんでした。一方、重篤な有害事象、特に心血管関連の重篤な有害事象の発生率はトラゾドンの方が高いことが明らかとなりました。

ただし、本研究は小規模かつ短期間の検証結果です。今後の検討結果により結果が異なる可能性があります。また認知行動療法の詳細、トラゾドン用量は抄録に記載がないため批判的吟味することができません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、軽度または中等度の慢性不眠症を有する血液透析患者において、6週間の認知行動療法またはトラゾドンの有効性はプラセボと差がなかった。重篤な有害事象の発生率はトラゾドンの方が高かった。

根拠となった試験の抄録

背景:慢性不眠症は血液透析を受けている患者によくみられるが、この集団に対する有効な治療法に関するエビデンスは限られている。

目的:長期血液透析を受けている患者における不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)、トラゾドン、プラセボの有効性を比較すること。

試験デザイン:ランダム化、多施設、二重盲検、プラセボ対照試験
(ClinicalTrials.gov: NCT03534284)。

試験設定:ニューメキシコ州アルバカーキおよびワシントン州シアトルの26の透析施設。

試験参加者:不眠症重症度指数(ISI)が10点以上で、週3日以上の睡眠障害が3ヵ月以上続いている患者。

介入:参加者は6週間のCBT-I、トラゾドンまたはプラセボにランダムに割り付けられた。

測定:主要アウトカムはランダム化から7週後と25週後のISIスコアであった。

結果:合計923例の患者が事前にスクリーニングされ、慢性不眠症患者411例のうち126例がCBT-I(n=43)、トラゾドン(n=42)、またはプラセボ(n=41)にランダムに割り付けられた。ベースラインから7週間後までのCBT-IまたはトラゾドンによるISIスコアの変化は、プラセボと変わらなかった:CBT-Iでは-3.7(95%CI -5.5 ~ -1.9)、トラゾドンでは-4.2(CI -5.9 ~ -2.4)、プラセボでは-3.1(CI -4.9 ~ -1.3)であった。ベースラインから25週までのISIスコアには有意な変化はみられなかった:CBT-I -4.8(CI -7.0 ~ -2.7);トラゾドン -4.0(CI -6.0 ~ -1.9);プラセボ -4.3(CI -6.4 ~ -2.2)。重篤な有害事象(SAE)、特に重篤な心血管イベントはトラゾドンでより頻度が高かった(年率換算した心血管SAE発生率:CBT-I 0.05[CI 0.00~0.29];トラゾドン 0.64[CI 0.34~1.10];プラセボ 0.21[CI 0.06~0.53])。

試験の限界:標本数が少なく、ほとんどの参加者が軽度または中等度の不眠症であった。

結論:軽度または中等度の慢性不眠症を有する血液透析患者において、6週間のCBT-Iまたはトラゾドンの有効性はプラセボと差がなかった。SAEの発生率はトラゾドンの方が高かった。

主要資金源:米国国立衛生研究所/国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所

引用文献

Effectiveness of Existing Insomnia Therapies for Patients Undergoing Hemodialysis : A Randomized Clinical Trial
Rajnish Mehrotra et al. PMID: 38224591 DOI: 10.7326/M23-1794
Ann Intern Med. 2024 Jan 16. doi: 10.7326/M23-1794. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38224591/

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