胃食道逆流症患者に共通してみられるライフスタイルの特徴は?
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease, GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することにより不快な症状や合併症が引き起こされる疾患と定義されています。また、軽度の症状が週に2日以上あるいは中等度〜重症の症状が週に1日以上認められる場合に診断されます。
GERDはしばしば原疾患に併発することが知られていますが、ライフスタイルとの関連性については充分に検証されていません。
そこで今回は、特定の不健康な生活習慣と胃食道逆流症(GERD)発症率との相関を調査し、GERD患者のための生活習慣ガイドラインを提供することを目的に実施された中国のアンケート調査の結果をご紹介します。
本調査では、2014年8月から2015年8月にかけて、中南大学第三湘雅病院消化器内科のGERD外来患者402例と非GERD外来患者276例を対象に質問紙調査が行われ、不健康な生活習慣とGERDとの相関が分析されました。
試験結果から明らかになったことは?
GERDによくみられる症状の上位10位 |
逆流 |
酸逆流 |
食後満腹感 |
胸やけ |
嚥下障害・疼痛 |
心窩部灼熱感 |
咽頭知覚麻痺 |
胸骨後痛 |
慢性喉頭咽頭炎 |
慢性咳嗽 |
GERDによくみられる症状上位10位は、逆流、酸逆流、食後満腹感、胸やけ、嚥下障害・疼痛、心窩部灼熱感、咽頭知覚麻痺、胸骨後痛、慢性喉頭咽頭炎、慢性咳嗽でした。
GERDと密接に関連する上位8つの不健康習慣 |
早食い |
過食 |
辛いものを好む食事 |
甘いものを好む食事 |
心配性 |
スープを好む食事 |
高脂肪食 |
熱いものを食べる |
GERDと密接に関連する上位8つの不健康習慣は、早食い、過食、辛いものを好む食事、甘いものを好む食事、心配性、スープを好む食事、高脂肪食、熱いものを食べることでした。
単因子分析によると、GERDはそれぞれ、性別(男性)、年齢(60歳以上)、BMI、喫煙、アルコール、早食い、過食、温食、辛味食、高脂肪食、酸味食、甘味食、硬いもの嗜好、強いお茶嗜好、コーヒー嗜好、食後すぐの就寝、排便困難、排便障害、不安、ベルトの締めすぎと顕著な相関がみられました(P<0.05)。
GERDの危険因子 | オッズ比 OR (95%CI) |
早食い | OR 3.214 (2.171〜4.759) P<0.001 |
過食 | OR 2.936 (1.981〜4.350) P<0.001 |
高齢者 | OR 2.047 (1.291~3.244) P=0.002 |
ベルトの締め過ぎ | OR 2.003 (1.013~3.961) P=0.046 |
暑い食事 | OR 1.570 (1.044~2.362) P=0.030 |
ロジスティック重回帰分析の結果、GERDの最大の危険因子は早食い(OR 3.214、95%CI 2.171〜4.759、P<0.001)であり、次いで過食(OR 2.936、95%CI 1.981〜4.350、P<0.001)、高齢者(OR 2.047、95%CI 1.291~3.244、P=0.002)、ベルトの締め過ぎ(OR 2.003、95%CI 1.013~3.961、P=0.046)、暑い食事(OR 1.570、95%CI 1.044~2.362、P=0.030)があげられました。
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胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease, GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することにより不快な症状や合併症が引き起こされる疾患であり、罹患率が高いことから、発症要因と対策の立案が求められています。
さて、中国のアンケート調査の結果、高齢者はGERDのリスクが高く、早食い、過食、ベルトの締めすぎ、高温の食事などの不健康な生活習慣はGERDの発症と密接な関係があることが示されました。
あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、ライフスタイルとGERD発症との関連性を捉えるためには重要な研究であると考えられます。日本人でも同様の結果が得られるのかについては不明ですが、人種差はそこまで大きくないと考えられることから、参考にできると考えられます。
体重や運動習慣、接種カロリーなどのパラメータも影響することから、試験参加者の背景が気にかかるところです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 中国のアンケート調査の結果、高齢者はGERDのリスクが高く、早食い、過食、ベルトの締めすぎ、高温の食事などの不健康な生活習慣はGERDの発症と密接な関係があることが示された。
根拠となった試験の抄録
背景及び目的:特定の不健康な生活習慣と胃食道逆流症(GERD)発症率との相関を調査し、GERD患者のための生活習慣ガイドラインを提供すること。
方法:2014年8月から2015年8月にかけて、中南大学第三湘雅病院消化器内科のGERD外来患者402例と非GERD外来患者276例を対象に質問紙調査を行い、不健康な生活習慣とGERDとの相関を分析した。
結果:GERDによくみられる症状上位10位は、逆流、酸逆流、食後満腹感、胸やけ、嚥下障害・疼痛、心窩部灼熱感、咽頭知覚麻痺、胸骨後痛、慢性喉頭咽頭炎、慢性咳嗽であった。GERDと密接に関連する上位8つの不健康習慣は、早食い、過食、辛いものを好む食事、甘いものを好む食事、心配性、スープを好む食事、高脂肪食、熱いものを食べることであった。単因子分析によると、GERDはそれぞれ、性別(男性)、年齢(60歳以上)、BMI、喫煙、アルコール、早食い、過食、温食、辛味食、高脂肪食、酸味食、甘味食、硬いもの嗜好、強いお茶嗜好、コーヒー嗜好、食後すぐの就寝、排便困難、排便障害、不安、ベルトの締めすぎと顕著な相関がみられた(P<0.05)。ロジスティック重回帰分析の結果、GERDの最大の危険因子は早食い(OR 3.214、95%CI 2.171〜4.759、P<0.001)であり、次いで過食(OR 2.936、95%CI 1.981〜4.350、P<0.001)であった。 高齢者(OR 2.047、95%CI 1.291~3.244、P=0.002)、ベルトの締め過ぎ(OR 2.003、95%CI 1.013~3.961、P=0.046)、暑い食事(OR 1.570、95%CI 1.044~2.362、P=0.030)が続いた。
結論:高齢者はGERDのリスクが高く、早食い、過食、ベルトの締めすぎ、高温の食事などの不健康な生活習慣はGERDと密接な関係がある。GERD患者には、よく噛む、食事を分割する、温冷食、ベルトを締めすぎないなどの生活習慣が必要である。
引用文献
[Study on lifestyle in patients with gastroesophageal reflux disease]
Zhong Nan Da Xue Xue Bao Yi Xue Ban. 2017 May 28;42(5):558-564. doi: 10.11817/j.issn.1672-7347.2017.05.013.
Lingzhi Yuan et al. PMID: 28626103 DOI: 10.11817/j.issn.1672-7347.2017.05.013
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28626103/
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