アレルギー免疫療法が早期に実施されている患者の特徴とは?(後向きコホート研究; REACT試験; Front Pediatr. 2023)

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アレルギー免疫療法を開始する患者の特徴に年齢差はあるのか?

呼吸器アレルギーは、一般的にアレルギー性鼻炎(AR)や喘息として現れる慢性進行性疾患であり、小児期に発症することが多いことが知られています。

アレルギー免疫療法(AIT)は呼吸器アレルギーの唯一の原因療法(根治療法)であり、アレルギーの根本原因を修正し、最終的に疾患の進行を予防する可能性があります。

アレルギー免疫療法は早期に実施された方が効果が高いことが期待されていますが、実際に早期投与されているのかについては不明であり、また、どのような患者に対して実施されているのかは明らかになっていません。

そこで今回は、実際の臨床現場におけるアレルギー免疫療法開始前の小児における疾患の負担と進行を特徴づけることにより、アレルギー免疫療法がアレルギー疾患の進行を阻止するために十分に早期に投与されているかどうかを明らかにすることを目的とした後向きコホート研究の結果をご紹介します。

このREAl-world effeCtiveness in allergy immunoTherapy(REACT)研究は、2007年から2017年のドイツの請求データを用いた大規模レトロスペクティブコホート研究です。あらかじめ定義された2つのアレルギー免疫療法の年齢コホート(小児:18歳未満、成人:18歳以上)の特徴について、最初のアレルギー免疫療法の処方前の1年間に評価されました。比較のために、アレルギー性鼻炎と確定診断され、AITの処方を受けていない全対照群も含められました。

疾患負荷は、アトピー性合併症[例:アトピー性皮膚炎(AD)、喘息、急性アレルギー性結膜炎]および非アトピー性合併症(例:片頭痛、頭痛)の診断コードを用いて評価され、また、アレルギー性鼻炎の症状緩和薬および喘息の緩和薬/調節薬の処方として記録された薬剤使用も評価されました。

データは要約統計を用いて記述的に分析されました。

試験結果から明らかになったことは?

小児(n=11,036)および成人(n=30,037)ともに、アレルギー免疫療法による治療を受けていないアレルギー性鼻炎患者(n=1,003,332)と比較して、アレルギー免疫療法開始前のアトピー併存疾患の有病率が高く、薬剤負担が大きいことが示されました。

2つの年齢別AITコホートにおいて、小児は成人と比較して一貫してアトピー併存疾患の有病率が高いことが示されました(AIT小児、AIT成人- 喘息:41.4%、34.5%;アトピー性皮膚炎:19.9%、10.2%;急性アレルギー性結膜炎:13.6%、10.2)。

一般に、症状緩和を目的としたアレルギー性鼻炎および喘息治療薬の年間処方量も、アレルギー免疫療法を開始した小児では成人より多いことが明らかとなりました(AIT小児、AIT成人 – 被験者1人当たりのアレルギー性鼻炎処方:1.72、0.73;被験者1人当たりの喘息処方:1.42、0.79)。

コメント

アレルギー免疫療法(AIT)は呼吸器アレルギーの唯一の原因療法です。アレルギーの根本原因を修正し、最終的に疾患の進行を予防する可能性がありますが、実臨床における検証が求められています。

さて、コホート研究の結果、早期にアレルギー免疫療法を開始した患者では疾患負担が大きく、特にアトピー併存疾患、アレルギー性鼻炎、喘息の有病率が高いことが示されました。

アレルギー免疫療法により、関連するアレルギー疾患症状の緩和など患者転帰への影響についてさらなる検証が求められます。アレルギー免疫療法の治療期間は、数年〜数十年かかることから、長期に渡り定期的に検証する必要があると考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 早期にアレルギー免疫療法を開始した患者では疾患負担が大きく、特に小児ではアトピー併存疾患、アレルギー性鼻炎、喘息の有病率が高かった。アレルギー免疫療法により、関連するアレルギー疾患症状の緩和など患者転帰への影響についてさらなる検証が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:呼吸器アレルギーは、一般的にアレルギー性鼻炎(AR)や喘息として現れる慢性進行性疾患であり、小児期に発症することが多い。アレルギー免疫療法(AIT)は呼吸器アレルギーの唯一の原因療法であり、アレルギーの根本原因を修正し、最終的に疾患の進行を予防する可能性がある。この解析では、実際の臨床現場におけるAIT開始前の小児における疾患の負担と進行を特徴づけることにより、アレルギー免疫療法がアレルギー疾患の進行を阻止するために十分に早期に投与されているかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法:REAl-world effeCtiveness in allergy immunoTherapy(REACT)研究は、2007年から2017年のドイツの請求データを用いた大規模レトロスペクティブコホート研究である。REACT研究であらかじめ定義された2つのAIT年齢コホート(小児:18歳未満、成人:18歳以上)の特徴を、最初のAIT処方前の1年間に評価した。比較のために、ARと確定診断され、AITの処方を受けていない全対照群も含めた。疾患負荷は、アトピー性合併症[例:アトピー性皮膚炎(AD)、喘息、急性アレルギー性結膜炎]および非アトピー性合併症(例:片頭痛、頭痛)の診断コードを用いて評価された。また、ARの症状緩和薬および喘息の緩和薬/調節薬の処方として記録された薬剤使用も評価された。データは要約統計を用いて記述的に分析された。

結果:小児(n=11,036)および成人(n=30,037)ともに、アレルギー免疫療法による治療を受けていないアレルギー性鼻炎患者(n=1,003,332)と比較して、アレルギー免疫療法開始前のアトピー性合併症の有病率が高く、薬剤負担が大きいことが示された。2つの年齢別AITコホートにおいて、小児は成人と比較して一貫してアトピー併存疾患の有病率が高かった(AIT小児、AIT成人- 喘息:41.4%、34.5%;アトピー性皮膚炎:19.9%、10.2%;急性アレルギー性結膜炎:13.6%、10.2)。
一般に、症状緩和を目的としたアレルギー性鼻炎および喘息治療薬の年間処方量も、アレルギー免疫療法を開始した小児では成人より多かった(AIT小児、AIT成人 – 被験者1人当たりのアレルギー性鼻炎処方:1.72、0.73;被験者1人当たりの喘息処方:1.42、0.79)。

結論:実生活でアレルギー免疫療法を提供されたアレルギー性鼻炎の小児は、開始前にかなりの疾患負担を示した。アレルギー免疫療法は疾患負担を軽減し、アレルギー性疾患の進行を止める可能性があるため、疾患経過の早い段階でアレルギー免疫療法を考慮することが正当化されるかもしれない。

キーワード:アレルギー性鼻炎、アレルギー免疫療法、喘息、アトピー性合併症、アトピー性皮膚炎、疾患負担、小児、実世界エビデンス(RWE)

引用文献

High baseline prevalence of atopic comorbidities and medication use in children treated with allergy immunotherapy in the REAl-world effeCtiveness in allergy immunoTherapy (REACT) study
Benedikt Fritszching et al. PMID: 37063677 PMCID: PMC10098718 DOI: 10.3389/fped.2023.1136942
Front Pediatr. 2023 Mar 28;11:1136942. doi: 10.3389/fped.2023.1136942. eCollection 2023.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37063677/

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