高齢者におけるCOVID-19入院後の長期的な転帰は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数は増減を繰り返しており、感染の終息が困難であることから共生(withコロナ)の道を辿っています。
高齢者においては、感染症による入院や死亡リスクが高いことが知られていますが、COVID-19による転帰への影響については明らかとなっていません。
そこで今回は、米国メディケアの有料サービス受給者において、COVID-19による指標入院後の死亡および再入院の長期リスクを明らかにし、インフルエンザで入院した過去の対照患者とこれらの転帰を比較することを目的に実施されたレトロスペクティブコホート研究の結果をご紹介します。
本試験では、2020年3月1日~2022年8月31日の間にCOVID-19による指標入院後に生存退院した65歳以上のメディケア有料サービス受給者883,394例と、2018年3月1日~2019年8月31日の間にインフルエンザによる入院後に生存退院した過去の対照患者56,409例とを比較しました。観察された特性の差を考慮するために重み付け法が用いられました。
本試験の主要アウトカム評価項目は退院後180日以内の全死因死亡、副次的転帰は最初の全原因再入院、180日以内の死亡または再入院の複合でした。
試験結果から明らかになったことは?
COVID-19コホートはインフルエンザコホートと比較して若年(77.9歳 vs. 78.9歳、標準化平均差 -0.12)であり、女性の割合が低く(51.7% vs. 57.3%、-0.11)、心房細動(24.3% vs. 29.5%、-0.12)、心不全(43.4% vs. 49.9%、-0.13)、慢性閉塞性肺疾患(39.2% vs. 52.9%、-0.27)などの合併症負担が低いことが示されました。両群とも、黒人受給者(10.3% vs. 8.1%、0.07)とメディケイド/メディケアの二重受給者(20.1% vs. 19.2%、0.02)の割合は同程度でした。
全死因死亡リスク (累積発生率) | COVID-19コホート | インフルエンザコホート | 標準化リスク差 (95%信頼区間) |
30日後 | 10.9% | 3.9% | 7.0% (6.8%~7.2%) |
90日後 | 15.5% | 7.1% | 8.4% (8.2%~8.7%) |
180日後 | 19.1% | 10.5% | 8.6% (8.3%~8.9%) |
COVID-19コホートでは、重み付け後、COVID-19コホートは、インフルエンザコホートと比較して、30日後(10.9% vs. 3.9%;標準化リスク差 7.0%、95%信頼区間 6.8%~7.2%)、90日後(15.5% vs. 7.1%;8.4%、8.2%~8.7%)、180日後(19.1% vs. 10.5%;8.6%、8.3%~8.9%)の全死因死亡のリスク(すなわち累積発生率)が高かいことが示されました。
再入院リスク (累積発生率) | COVID-19コホート | インフルエンザコホート | 標準化リスク差 (95%信頼区間) |
30日後 | 16.0% | 11.2% | 4.9% (4.6%〜5.1%) |
90日後 | 24.1% | 21.3% | 2.8% (2.5%〜3.2%) |
180日後 | 30.6% | 30.6% | -0.1% (-0.5% 〜 0.3%) |
COVID-19コホートでは、30日後(16.0% vs. 11.2%;4.9%、4.6%〜5.1%)と90日後(24.1% vs. 21.3%;2.8%、2.5%〜3.2%)の再入院リスクも高かったものの、180日後(30.6% vs. 30.6%;-0.1%、-0.5% 〜 0.3%)のリスクは同程度でした。
研究期間中、COVID-19入院後に退院した患者の30日死亡リスクは17.9%から7.2%に減少しました。
コメント
COVID-19の長期的な転帰についてエビデンス創出が求められています。特に高齢者では感染症により転帰が悪化しやすいことから、高齢者における検証が求められています。
さて、米国のデータベースを用いた後向き研究の結果、COVID-19による入院後に生存退院したメディケア受給者は、過去のインフルエンザ対照者と比較して退院後の死亡リスクが高いことが示されました。この差は退院後早期に集中しており、180日後には差がなくなりました。
解析対象となった期間はオミクロン流行期の前後であることから、期間により死亡/再入院リスクが異なる可能性があります。2023年にはオミクロン変異株の亜型であるEG.5株・EG.5.1株(通称:エリス)やFL.1.5.1(フォルナックス)が流行してきており、より免疫逃避する可能性も指摘されています。このような背景から、COVID-19患者の転帰について定期的な検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ COVID-19による入院後に生存退院したメディケア受給者は、過去のインフルエンザ対照者と比較して退院後の死亡リスクが高かった。しかしながら、この差は退院後早期に集中していた。
根拠となった試験の抄録
目的:メディケアの有料サービス受給者において、COVID-19による指標入院後の死亡および再入院の長期リスクを明らかにし、インフルエンザで入院した過去の対照患者とこれらの転帰を比較すること。
デザイン:レトロスペクティブコホート研究
設定:米国
試験参加者:2020年3月1日~2022年8月31日の間にCOVID-19による指標入院後に生存退院した65歳以上のメディケア有料サービス受給者883,394例と、2018年3月1日~2019年8月31日の間にインフルエンザによる入院後に生存退院した過去の対照患者56,409例とを比較した。観察された特性の差を考慮するために重み付け法を用いた。
主要アウトカム評価項目:退院後180日以内の全死因死亡。副次的転帰は、最初の全原因再入院、180日以内の死亡または再入院の複合。
結果:COVID-19コホートはインフルエンザコホートと比較して若年(77.9歳 vs. 78.9歳、標準化平均差 -0.12)であり、女性の割合が低かった(51.7% vs. 57.3%、-0.11)。両群とも、黒人受給者(10.3% vs. 8.1%、0.07)とメディケイドとメディケアの二重受給者(20.1% vs. 19.2%、0.02)の割合は同程度であった。COVID-19コホートでは、心房細動(24.3% vs. 29.5%、-0.12)、心不全(43.4% vs. 49.9%、-0.13)、慢性閉塞性肺疾患(39.2% vs. 52.9%、-0.27)などの合併症負担が低かった。重み付け後、COVID-19コホートは、インフルエンザコホートと比較して、30日後(10.9% vs. 3.9%;標準化リスク差 7.0%、95%信頼区間 6.8%~7.2%)、90日後(15.5% vs. 7.1%;8.4%、8.2%~8.7%)、180日後(19.1% vs. 10.5%;8.6%、8.3%~8.9%)の全死因死亡のリスク(すなわち累積発生率)が高かった。COVID-19コホートでは、30日後(16.0% vs. 11.2%;4.9%、4.6%〜5.1%)と90日後(24.1% vs. 21.3%;2.8%、2.5%〜3.2%)の再入院リスクも高かったが、180日後(30.6% vs. 30.6%;-0.1%、-0.5% 〜 0.3%)のリスクは同程度であった。研究期間中、COVID-19入院後に退院した患者の30日死亡リスクは17.9%から7.2%に減少した。
結論:COVID-19による入院後に生存退院したメディケア受給者は、過去のインフルエンザ対照者と比較して退院後の死亡リスクが高かった。しかしながら、この差は退院後早期に集中していた。COVID-19関連入院後に退院した患者の死亡リスクは、パンデミックの経過とともに大幅に低下した。
引用文献
Long term risk of death and readmission after hospital admission with covid-19 among older adults: retrospective cohort study
Andrew S Oseran et al. PMID: 37558240 DOI: 10.1136/bmj-2023-076222
BMJ. 2023 Aug 9;382:e076222. doi: 10.1136/bmj-2023-076222.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37558240/
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