敗血症の重症患者におけるメロペネムの持続投与と間欠投与どちらが良いのか?(DB-RCT; MERCY試験; JAMA. 2023)

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メロペネムは持続投与と間欠投与で効果に差はあるのか?

メロペネムは広く処方されているβ-ラクタム系抗生物質です。メロペネムは、最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration, MIC)以上の薬物濃度を一定に保つために持続点滴で投与すると、薬力学的に最大の効果を示します。したがって、メロペネムの持続投与は、間欠投与と比較して臨床転帰を改善する可能性があります。しかし、耐性菌の出現リスクがあることから保険適用上は投与間隔の制限があります。

そこで今回は、敗血症を有する重症患者において、メロペネムの持続投与が、間欠投与と比較して死亡率およびパンドラッグ耐性菌(pandrug:汎薬剤耐性、汎耐性)または広範囲薬剤耐性菌の出現の複合を減少させるかどうかを検証したMERCY試験の結果をご紹介します。

本試験は、4ヵ国(クロアチア、イタリア、カザフスタン、ロシア)の26病院の31集中治療室で、担当臨床医からメロペネムを処方された敗血症または敗血症性ショックの重症患者を登録した二重盲検ランダム化臨床試験です。患者は2018年6月5日~2022年8月9日に登録され、最終90日追跡は2022年11月に完了しました。

患者を連続投与(n=303)または間欠投与(n=304)のいずれかにランダムに割り付け、同量のメロペネムを投与しました。

本試験の主要アウトカムは、全死亡と28日目のパンドラッグ耐性菌または広範囲薬剤耐性菌の出現の複合でした。副次的転帰は、28日目の生存日数および抗生物質の投与なし、28日目の生存日数および集中治療室からの退室なし、90日目の全死亡の4項目でした。

有害事象として発作、アレルギー反応、死亡が記録されました。

試験結果から明らかになったことは?

全607例(平均年齢64[SD 15]歳;203例が女性[33%])が28日目の主要転帰の測定に組み入れられ、90日目の死亡率追跡を完了しました。大多数(369例、61%)は敗血症性ショックでした。入院からランダム化までの期間中央値は9日(IQR 3~17日)、メロペネム治療期間中央値は11日(IQR 6~17日)でした。クロスオーバーイベントは1件のみ記録されました。

持続投与群間欠投与群相対リスク
(95%CI)
主要転帰
全死亡、28日目のパンドラッグ耐性菌または広範囲薬剤耐性菌の出現の複合)
142例(47%)149例(49%)相対リスク 0.96
0.81〜1.13
P=0.60

主要転帰は、持続投与群では142例(47%)、間欠投与群では149例(49%)で発生しました(相対リスク 0.96、95%CI 0.81〜1.13、P=0.60)。4つの副次的アウトカムのうち、統計的に有意なものはありませんでした。

試験薬に関連した発作やアレルギー反応の有害事象は報告されませんでした。90日後の死亡率は、持続投与群(303例中127例)、間欠投与群(304例中127例)ともに42%でした。

コメント

広域スペクトラムを有するメロペネムは、さまざまな感染症に使用できますが、耐性菌の出現リスクの観点から日常診療においては間欠投与が一般的です。重症患者を対象とした研究では、MICの観点から長時間あるいは持続投与することで耐性菌の発現や致死率が低下することを期待し検証された研究結果は一貫していません。日本の敗血症ガイドライン(2020年版)や国際的な敗血症診療ガイドラインであるSurviving Sepsis Campaign Guidelines(PMID: 36928012)においても、βラクタム系抗菌薬の投与時間、投与間隔について明確なエビデンスは示されておらず、推奨度はまちまちです。

さて、二十も王権ランダム化比較試験の結果によれば、敗血症の重症患者において、メロペネムの持続投与は間欠投与と比較して、複合転帰(28日目における死亡率およびパンドラッグ耐性菌または広範囲薬剤耐性菌の出現)を改善しませんでした。したがって、どちらを選択しても良いことになります。

耐性菌の出現に差がなかったことは意外でしたが、フォローアップが28日間だったためであると考えられます。より長期間にわたり使用した場合、病院や地域の耐性菌のシェアが変化する可能性があります。患者背景により、持続投与と間欠投与、どちらを選択した方が良いのか検証が求められます。

続報に期待。

notes on board

✅まとめ✅ 敗血症の重症患者において、メロペネムの持続投与は間欠投与と比較して、28日目における死亡率およびパンドラッグ耐性菌または広範囲薬剤耐性菌の出現という複合転帰を改善しなかった。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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