SARS-CoV-2迅速抗原検査の感度・特異度は?
逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)を用いたウイルスRNAの同定は、SARS-CoV-2による感染を同定するためのゴールドスタンダードである。RT-qPCRには、高価な装置、訓練されたスタッフ、検査設備が必要であるという限界があるため、迅速抗原検査(RAT)が開発された。RATの性能は広く評価されており、様々な環境において異なることが判明している。今回のシステマティックレビューの目的は、市販されているRATの感度と特異度をプールして評価することである。
本レビューはPROSPEROに登録された(登録番号:CRD42021278105)。文献検索は、PubMed、Embase、Cochrane COVID-19 Study Registerを用いて行い、2021年8月26日までに発表された研究を検索した。RATの全体的なプール感度および特異度、ならびにサブグループ解析を算出した。Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies 2(QUADAS-2)を用いて各試験のバイアスリスクを評価した。
試験結果から明らかになったことは?
感度 | 特異度 | |
迅速抗原検査 | 70%(95%CI 69〜71) | 98%(95%CI 98〜98) |
迅速抗原検査のプールされた全体の感度と特異度は、それぞれ70%(95%CI 69〜71)および98%(95%CI 98〜98)でした。
採取検体 | 感度 |
鼻スワブ | 83%(95%CI 80〜86) |
鼻咽頭スワブ | 71%(95%CI 70〜72) |
咽頭スワブ | 69%(95%CI 63〜75) |
唾液 | 68%(95%CI 59〜77) |
サブグループ解析では、鼻スワブの感度が83%(95%CI 80〜86)と最も高く、次いで鼻咽頭スワブ71%(95%CI 70〜72)、咽頭スワブ69%(95%CI 63〜75)、唾液68%(95%CI 59〜77)でした。
症候性患者からの検体は、無症候性患者の68%(95%CI 65〜71)に比べて82%(95%CI 82〜82)と高い感度を示しました。
また、Cycle threshold(Ct)値≦25は、Ct値が高い場合に比べて96%(95%CI 95〜97)と高い感度を示しました。
コメント
2019年のSARS-CoV-2による感染流行から迅速検査キット(抗原・抗体)の使用数が急増しているが、その感度・特異度に関する試験結果は一貫していません。
さて、システマティックレビュー・メタ解析の結果によれば、迅速抗原検査のプールされた全体の感度は70%(95%CI 69〜71)、特異度は98%(95%CI 98〜98)でした。
感度を向上させる必要があるものの、検査施設が不足している場所では、疾患の初期段階における診断目的のために、依然として有効な選択肢であると考えられます。確定診断におけるゴールドスタンダードであるPCR検査は、検査結果が得られるまでに数時間かかることから刻一刻と状況が変化する実臨床において現実的な選択肢とはいえません。依然として迅速検査が第一選択であり、PCR検査はあくまでも迅速検査の精度確認・検証にために使用されています。引き続き追っていきたいテーマです。
続報に期待。
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