フレイル高齢者に対する脱処方プロトコルに従った介入効果とは?
高齢者施設に住む高齢者では、潜在的に有害なポリファーマシーが非常に多くみられます。しかし、これまでに多剤処方の解除(脱処方、減処方、減薬)に関する二重盲検ランダム化比較試験は行われていません。
そこで今回は、住宅型高齢者施設の65歳以上の高齢者を対象に、脱処方プロトコルに基づく介入効果を検証した二重盲検ランダム化比較試験(Opti-med試験)の結果をご紹介します。
本試験は3群(オープン介入、盲検化介入、盲検化対照)のランダム化比較試験であり、高齢者施設に住む65歳以上の高齢者(n=303、事前に指定した募集目標n=954)を登録しました。盲検群では、減薬の対象となる薬剤をカプセル化し、減薬(盲検化介入)または継続(盲検化対照)しました。第3のオープン介入群では、対象となる薬剤の処方が非盲検化されました。
試験結果から明らかになったことは?
参加者の76%が女性で、平均年齢は85.0±7.5歳でした。脱処方は、対照群(-0.3薬剤、95%CI -1.0 〜 0.4、P=0.053)と比較して、両介入群で12ヵ月間に参加者1人あたりが使用した薬の総数の有意な減少(盲検化介入群 -2.7薬剤、95%CI -3.5 〜 -1.9;オープン介入群 -2.3薬剤、95%CI -3.1 〜 -1.4)と関連していました。
常備薬の脱処方は、「必要なときに」投与される薬剤数の有意な増加とは関連していませんでした。
対照群と比較して、盲検化介入群(HR 0.93、95%CI 0.50〜1.73、P=0.83)、オープン介入群(HR 1.47、95%CI 0.83〜2.61、P=0.19)の死亡率に有意差はありませんでした。
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ポリファーマシーは潜在的な不適切処方のリスク増加と関連性が示されていることから、deprescribing(脱処方、減処方、減薬)介入が求められますが、質の高い試験は実施されていません。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、プロトコルベースの脱処方により、1人あたり2~3種類の医薬品の脱処方が達成されました。一方、死亡率について群間差は認められませんでした。最大で12ヵ月間の介入結果であることから、群間差がみとめられなかった可能性があります。また、住宅型高齢者施設、一般開業医、研修医の募集は採用目標数に到達しなかったため、サンプルサイズが不足していた可能性を否定できません。より臨床上重要となるアウトカム(転倒や長期的な生存率など)への影響について更なる検証が求められます。
続報に期待。
ちなみに本試験の方法として、医薬品は、以前に記載された構造化された脱処方プロトコルに従い休薬の対象となりました(PMID: 26942907、PMID: 27451330、PMID: 26453002)。2名の研究薬剤師が、すべての参加者の定期的に服用する経口薬(固形剤形)と少なくとも週に1回使用するPRN(pro re nata:必要に応じて使用する)医薬品を独立してレビューし、脱処方アルゴリズムを用いて離脱対象医薬品のリストを作成しました。参加者にとって有益である可能性が最も低く、薬物離脱有害事象(ADWE)を引き起こす可能性が最も低い薬剤は、最初に中止するよう計画し、ADWEを引き起こす可能性が最も高い、または何らかの症状的利益をもたらす可能性が高い薬剤は、ゆっくりと漸減して最後に中止するよう計画されました。漸減が必要な場合は、一般に2週間間隔で最低用量の半分の用量に達するまで用量を半減した後に薬剤が中止されました。半減期の長い薬剤は、2日ごと、あるいは3日ごとの投与に減らし中止されました。ADWEを引き起こす可能性が低い場合、または離脱効果が個々の薬剤に明確に帰属する場合は、最大3つの薬剤を同時に休薬しました。研究薬剤師は、休薬計画の相違をコンセンサスによって解決しました。最終的な休薬計画には、各参加者の標的薬、休薬の根拠、介入群にランダムに割り付けられた場合の漸減/中止の順序が記載されていました。また、モニタリング計画や各対象薬剤の潜在的なADWEの詳細についても記載されていました。
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