モルヌピラビルとCOVID-19急性期後の後遺症リスクとの関連性は?(コホート研究; BMJ. 2023)

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モルヌピラビル投与と急性期以降の後遺症リスクとの関連性は?

COVID-19患者数は増減を繰り返し、感染収束の兆しはみえません。基本的な感染予防対策を講じつつ、共生していく方向で進んでいます。ワクチン接種などによる感染予防対策により、患者数の爆発的な増加は抑えられていますが、解決困難な課題としてlong-COVID(コロナ後遺症)があげられます。

ワクチン接種によりコロナ後遺症リスクの低減が示されていますが、まだまだ充分とは言えません。

そこで今回は、SARS-CoV-2感染後5日間の抗ウイルス剤モルヌピラビルによる治療が、急性期以降の有害な健康アウトカムのリスク低減と関連するかどうかを検証したコホート研究の結果をご紹介します。

コホートに用いられたのは米国の退役軍人省データベースでした。2022年1月5日から2023年1月15日の間にSARS-CoV-2陽性と判定され、重症COVID-19に進行する危険因子を少なくとも1つ有し、陽性判定後30日間生存した229,286例が登録されました。11,472例の参加者は、検査結果が陽性になってから5日以内にモルヌピラビルの処方を受け、217,814例はCOVID-19の抗ウイルス薬や抗体治療を受けませんでした(無治療群)。

本試験の主要アウトカム評価項目は、SARS-CoV-2の急性期以降の後遺症(13の急性期後遺症の事前指定セットに基づいて定義)、急性期死亡、急性期入院、および個々の急性期以降の後遺症であり、モルヌピラビル群と無治療群のリスクを、治療群と無治療群のバランスをとるために逆確率加重を適用した後に検討しました。急性期以降の転帰は、最初のSARS-CoV-2陽性の検査結果の30日後から追跡調査終了まで確認され、相対スケール(相対リスクまたはハザード比)および絶対スケール(180日後の絶対リスク減少)のリスクが推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

モルヌピラビル使用 vs. 無治療相対リスク
または
ハザード比
(95%CI)
180日後の絶対リスク低減率
(95%信頼区間)
急性期以降の後遺症相対リスク 0.86
0.83~0.89
2.97%
2.31~3.60
急性期以降の死亡ハザード比 0.62
0.52~0.74
0.87%
0.62~1.13
急性期以降の入院0.86
0.80~0.93
1.32%
0.72~1.92

無治療と比較して、SARS-CoV-2検査結果陽性から5日以内のモルヌピラビル使用は、急性期以降の後遺症(相対リスク 0.86、95%信頼区間 0.83~0.89、180日後の絶対リスク低減率 2.97%、95%信頼区間 2.31~3.60)、急性期以降の死亡(ハザード比 0.62、0.52~0.74; 絶対リスク低減率 0.87%、0.62~1.13)、急性期以降の入院(0.86、0.80~0.93; 1.32%、0.72~1.92)のリスク低減と関連していました。

モルヌピラビルは、急性期後の後遺症13項目のうち、不整脈、肺塞栓症、深部静脈血栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、神経認知障害の8項目のリスク低減と関連していました。また、モルヌピラビルは、COVID-19ワクチンを接種していない人、1回または2回接種した人、ブースター投与を受けた人、SARS-CoV-2初感染および再感染者における急性期後遺症リスクの低減と関連していました。

コメント

コロナ後遺症に対する治療戦略の確立が求められています。

さて、米国退役軍人コホートを用いたコホート研究の結果、SARS-CoV-2感染者で、重症COVID-19への進行のリスク因子を少なくとも1つ有する場合、無治療と比較して、感染後5日以内のモルヌピラビルの使用は、急性期以降の後遺症リスクの低減と関連がありました。

ただし、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。そもそもの後遺症リスクが低い患者がモルヌピラビルを投与されていた可能性があります。また、米国退役軍人のコホートであることから、男性が多く(男性率 約91%)、体格が良く筋肉量が多い可能性が高く(BMI 約31)、中年以降の年齢層が多い(平均年齢 約70歳)です。他の国や地域、人種においても同様の結果が得られるのかについては明らかになっていません。

ランダム化比較試験や前向きコホート研究の実施が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ SARS-CoV-2感染者で、重症COVID-19への進行の危険因子が少なくとも1つある場合、無治療と比較して、感染後5日以内のモルヌピラビルの使用は、急性期以降の後遺症リスクの低減と関連があった。

根拠となった試験の抄録

目的:SARS-CoV-2感染後5日間の抗ウイルス剤モルヌピラビルによる治療が、急性期以降の有害な健康アウトカムのリスク低減と関連するかどうかを検討する。

試験デザイン:コホート研究

試験設定: 米国退役軍人省。

試験参加者:2022年1月5日から2023年1月15日の間にSARS-CoV-2陽性と判定され、重症COVID-19に進行する危険因子を少なくとも1つ有し、陽性判定後30日間生存した229,286例が登録された。11,472例の参加者は、検査結果が陽性になってから5日以内にモルヌピラビルの処方を受け、217,814例はCOVID-19の抗ウイルス薬や抗体治療を受けなかった(無治療群)。

主要アウトカム評価項目:SARS-CoV-2の急性期以降の後遺症(13の急性期後遺症の事前指定セットに基づいて定義)、急性期死亡、急性期入院、および個々の急性期以降の後遺症のモルヌピラビル群と無治療群のリスクを、治療群と無治療群のバランスをとるために逆確率加重を適用した後に検討した。急性期以降の転帰は、最初のSARS-CoV-2陽性の検査結果の30日後から追跡調査終了まで確認された。相対スケール(相対リスクまたはハザード比)および絶対スケール(180日後の絶対リスク減少)のリスクが推定された。

結果:無治療と比較して、SARS-CoV-2検査結果陽性から5日以内のモルヌピラビル使用は、急性期以降の後遺症(相対リスク 0.86、95%信頼区間 0.83~0.89、180日後の絶対リスク低減率 2.97%、95%信頼区間 2.31~3.60)、急性期以降の死亡(ハザード比 0.62、0.52~0.74; 絶対リスク低減率 0.87%、0.62~1.13)、急性期以降の入院(0.86、0.80~0.93; 1.32%、0.72~1.92)のリスク低減と関連していた。モルヌピラビルは、急性期以降の後遺症13項目のうち、不整脈、肺塞栓症、深部静脈血栓症、疲労・倦怠感、肝疾患、急性腎障害、筋肉痛、神経認知障害の8項目のリスク低減と関連した。また、モルヌピラビルは、COVID-19ワクチンを接種していない人、1回または2回接種した人、ブースター投与を受けた人、SARS-CoV-2初感染および再感染者における急性期以降の後遺症リスクの低減と関連していた。

結論:SARS-CoV-2感染者で、重症COVID-19への進行の危険因子が少なくとも1つある場合、無治療と比較して、感染後5日以内のモルヌピラビルの使用は、COVID-19ワクチンを接種していない人、1~2回接種した人、ブースター接種を受けた人、SARS-CoV-2の初感染者、再感染者における急性期以降の後遺症リスクの低減と関連があった。重症COVID-19への進行リスクが高い人では、SARS-CoV-2感染後5日以内にモルヌピラビルを使用することが、急性期以降の後遺症リスクを低減する有効なアプローチとなる可能性がある。

引用文献

Molnupiravir and risk of post-acute sequelae of covid-19: cohort study
Yan Xie et al. PMID: 37161995 PMCID: PMC10126525 DOI: 10.1136/bmj-2022-074572
BMJ. 2023 Apr 25;381:e074572. doi: 10.1136/bmj-2022-074572.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37161995/

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