心房細動で合併症負荷が高い患者における早期リズムコントロールの効果は?
EAST-AFNET 4(Early Treatment of Atrial Fibrillation for Stroke Prevention Trial)のサブ解析では、心房細動で合併症負荷が高い患者において、合併症負荷が低い患者と比較して早期リズムコントロール(ERC)の有用性が強いことが示唆されています。しかし、あくまでも仮説生成的な結果であることから、さらなる検証が求められます。
そこで今回は、米国と英国のデータベースを使用し、早期リズムコントロールと合併症(併存疾患)負荷の程度がハードアウトカムとどのように関連しているのか検証したデータベース研究の結果をご紹介します。
本試験では、米国の大規模な非識別化行政請求データベース(OptumLabs)において新たに心房細動と診断された患者109,739例、および人口ベースのUKB(UK Biobank)において患者11,625例が同定されました。早期リズムコントロール(ERC)は、心房細動診断後1年以内の心房細動アブレーションまたは抗不整脈薬治療と定義されました。
患者は、(1)ERCで併存疾患負荷が高い(CHA2DS2-VAScスコア≧4)、(2)ERCで併存疾患負荷が低い(CHA2DS2-VAScスコアスコア2-3)、(3) ERCなし、併存疾患負荷高い、(4) ERCなし、併存疾患負荷低いに分類されました。
※併存疾患負荷が高くない患者(CHA2DS2-VAScスコアスコア0-1)は除外された。
本試験の主要アウトカムは全死亡、脳卒中、心不全・心筋梗塞による入院の複合でした。安全性の主要アウトカムとしては、死亡、脳卒中、ERCに関連する重篤な有害事象でした。
※患者のバランスをとり、群を比較するために、傾向スコア重複加重およびCox比例ハザード回帰が用いられた。
試験結果から明らかになったことは?
ERCと主要アウトカム発生との関連性 (全死亡、脳卒中、心不全・心筋梗塞による入院の複合) | OptumLabsコホート | UKBコホート |
合併症負担が大きい患者 | ハザード比 0.83 (95%CI 0.72〜0.95) P=0.006 | ハザード比 0.77 (95%CI 0.63〜0.94) P=0.009 |
合併症負担が少ない患者 | ハザード比 0.92 (95%CI 0.54〜1.57) P=0.767 | ハザード比 0.94 (95%CI 0.83〜1.06) P=0.310 |
両コホートにおいて、早期リズムコントロール(ERC)は、合併症負担が大きい患者における主要複合アウトカムのリスク低減と関連していました(OptumLabs:ハザード比 0.83、95%CI 0.72〜0.95、P=0.006; UKB:ハザード比 0.77、95%CI 0.63〜0.94、P=0.009)。
合併症の負担が少ない患者では、アウトカムの差は有意ではありませんでした(OptumLabs:ハザード比 0.92、95%CI 0.54〜1.57、P=0.767; UKB:ハザード比 0.94、95%CI 0.83〜1.06、P=0.310)。
併存疾患負担は、UKBではERCと交互作用を示しましたが(交互作用P=0.027)、OptumLabsでは見られませんでした(交互作用P=0.720)。ERCは、主要な安全性アウトカムのリスク上昇とは関連していませんでした。
コメント
心房細動患者の予後管理において、リズムコントロールとレートコントロールに差はないとされています。しかし、レートコントロールの方が副作用などの患者負担が少ないことから、リスクベネフィットの観点からレートコントロールが選択されるようです。
一方、2020年ごろから早期のリズムコントロールの有用性が示されたことから注目されており、さらなる検証が求められています。
さて、英国と米国のデータべースを用いた本試験結果によれば、早期リズムコントロールは安全であり、合併症の負担が大きい患者(CHA2DS2-VAScスコア4以上)の集団ベースのサンプルではより好ましい可能性が示されました。
あくまでも相関関係が示されたに過ぎないことから、ランダム化比較試験など、より因果関係を検証できるデザインでの試験実施が求められます。
続報に期待。
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