血液透析患者における穿刺時痛にはどのスプレーが良いのか?
血液透析を行うための穿刺時痛(穿刺時疼痛)は主な課題であり、患者の快適性のために疼痛管理技術を必要とする共通の問題です。この問題に対して、鎮痛薬や麻酔薬を含む貼付薬やスプレーが利用されています。
スプレーは、麻酔薬を含む軟膏と比較して即効性があり、効果を得るために注射をする必要がなく、医療スタッフの手に針が刺さる危険性が少ないなど、他の方法と比較して優れています。しかし、これらのスプレーの鎮痛効果はまだ議論の余地があり、相反する報告がなされています(PMID: 27113639、PMID: 28285862)。さらに、冷却スプレーの有用性に関する報告があるものの、これは中程度の品質であり、さらなる検証が求められています(PMID: 27113639)。
そこで今回は、血液透析患者の穿刺時疼痛に対する冷却スプレーとリドカインスプレーの効果を比較したランダム化クロスオーバー試験の結果をご紹介します。本試験では、包含基準に従って血液透析患者がコンビニエンスサンプリング*で選択され、ブロックランダム化法を用いて3つの介入群にランダムに割り当てられました: 冷却スプレー、10%リドカインスプレー、プラセボスプレー。
各介入の間には、2週間のウォッシュアウトタイムが設けられました。疼痛スコアは、Numerical Rating Scaleにより、各患者について4回測定されました。
*コンビニエンスサンプリング(便宜的抽出法):最もアクセスしやすい集団に実施するサンプリング。大抵の場合、最も簡単に実施でき、コストも抑えられる。このような母集団は決してランダムに選ばれてはいないが、調査者が集めたいデータの種類によってはさほど問題ではない。企業が提案された製品の実現可能性や人気を確かめるためのパイロット調査などでよく利用される。ただし、ランダム抽出よりもバイアスが入り込みやすいことは念頭に置きたい。
試験結果から明らかになったことは?
41例の血液透析患者が対象でした。その結果、時間とグループの間に有意な交互作用が認められたため(p<0.05)、ベースライン値を調整したTIME 1の観測値のみを用いて、介入の効果が評価されました。
冷却スプレー vs. プラセボスプレー | 冷却スプレー vs. リドカインスプレー | |
疼痛スコア (Numerical Rating Scale) | -2.29 (95%CI -4.17 〜 -0.43) p<0.05 | 1.61 (95%CI -0.26 〜 3.48) p>0.05 |
冷却スプレーを受けた患者は、プラセボと比較して平均で2.29点痛みが少ないと報告されました(B= -2.29、95%CI -4.17 〜 -0.43; p<0.05); また、冷却スプレーを受けた患者は、リドカインスプレーを受けた患者より1.61点痛みが少ないことが示されましたが、この差異は統計的に有意ではありませんでした(95%CI -0.26 〜 3.48; p>0.05)。
コメント
透析患者における穿刺時疼痛は共通の課題であり、疼痛コントロールが求められます。スプレータイプの製剤は、他のタイプの製剤と比較して即効性があり、さらに針刺し事故などのリスクがないことから、期待が寄せられています。
さて、ランダム化クロスオーバー試験の結果、冷却スプレーは、プラセボスプレーと比較して、血液透析患者における穿刺時疼痛の軽減に有効でした。また、リドカインスプレーと比較して、穿刺時疼痛の軽減傾向が示されました。
ただし、本試験はコンビニエンスサンプリング、クロスオーバーデザイン、さらに持越効果が示されていることから、パイロット試験と捉えておいた方が良いでしょう。さらなる検証が求められます。
続報に期待。
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