根拠となった試験の抄録
背景:医療では、高リスクの患者は治療から最も恩恵を受けるという暗黙の前提のもと、臨床医が個人を治療する(’high-risk approach’ ハイリスクアプローチ)。しかし、新しい機械学習法を用いて最も高い利益を推定した個人を治療すること(’high-benefit approach’ ハイベネフィットアプローチ)は、集団の健康状態を改善する可能性がある。
方法:本研究では、2件のランダム化比較試験(Systolic Blood Pressure Intervention Trial、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Blood Pressure)から、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満(集中治療)または140mmHg未満(標準治療)にランダム化した10,672例を対象とした。機械学習によるCausal Forestを適用し、3年後の心血管アウトカムの減少に対する集中的なSBPコントロールの個別化治療効果(ITE)の予測モデルを開発した。そして、ハイベネフィットアプローチ(ITE>0の人を治療する)とハイリスクアプローチ(SBP≧130mmHgの人を治療する)の性能を比較した。また、transportability formulaを用いて、National Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)1999-2018の米国成人14,575例を対象に、これらのアプローチの効果を推定した。
結果:SBP≧130mmHgの集団の78.9%がSBP集中コントロールの恩恵を受けていることがわかった。高ベネフィットアプローチは高リスクアプローチを上回った[平均治療効果+9.36(95%CI 8.33〜10.44) vs. +1.65(95%CI 0.36〜2.84)%ポイント、これら2つのアプローチ間の差、+7.71(95%CI 6.79〜8.67)%ポイント、P<0.001]。この結果は、NHANESのデータに移植した場合でも一貫していた。
結論:機械学習ベースのハイベネフィットアプローチは、より大きな治療効果を持つハイリスクアプローチを凌駕した。これらの結果は、従来のハイリスクアプローチよりもハイベネフィットアプローチの方が治療効果を最大化できる可能性があることを示しており、今後の研究において検証する必要がある。
キーワード:Causal Forest、血圧、心血管イベント、不均一な治療効果、ハイベネフィットアプローチ
引用文献
Machine-learning-based high-benefit approach versus conventional high-risk approach in blood pressure management
Kosuke Inoue et al. PMID: 37013846 DOI: 10.1093/ije/dyad037
Int J Epidemiol. 2023 Apr 4;dyad037. doi: 10.1093/ije/dyad037. Online ahead of print.
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