COVID-19に対する経口抗ウイルス薬の効果はどのくらい?
COVID-19非入院(外来)患者に対する経口抗ウイルス薬の有効性が示されています。しかし、入院患者にCOVID-19経口抗ウイルス薬が有効であるかどうかについては結論が得られていません。
そこで今回は、オミクロンアウトブレイク時のCOVID-19入院患者に対するモルヌピラビルとニルマトレルビル-リトナビルの実臨床での有効性を検討したターゲットトライアルエミュレーション研究の結果をご紹介します。
本試験では、香港の電子健康データベースが利用されました。モルヌピラビルの模倣試験には、2022年2月26日から7月18日の間に18歳以上のCOVID-19を発症した入院患者(n=16,495例)が、ニルマトレルビル-リトナビル模擬試験には、2022年3月16日から7月18日の間に18歳以上のCOVID-19の入院患者(n=7,119)が含まれていました。
本試験の介入として、COVID-19の入院から5日以内にモルヌピラビルまたはニルマトルビル-リトナビルを開始した場合と、モルヌピラビルまたはニルマトルビル-リトナビルを開始しない場合とが比較されました。
本試験のアウトカムは、28日以内の全死亡、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸器使用に対する有効性でした。
試験結果から明らかになったことは?
モルヌピラビル群 | ニルマトレルビル-リトナビル群 | |
全死亡 | HR 0.87 [95%CI 0.81~0.93] | HR 0.77 [95%CI 0.66~0.90] |
ICU入室 | HR 1.02 [95%CI 0.76〜1.36] | HR 1.08 [95%CI 0.58~2.02] |
人工呼吸器サポートの必要性 | HR 1.07 [95%CI 0.89~1.30] | HR 1.03 [CI 0.70~1.52] |
COVID-19の入院患者における経口抗ウイルス薬の使用は、全死亡リスクの低下と関連していました(モルヌピラビル:ハザード比[HR]0.87[95%CI 0.81~0.93]; ニルマトレルビル-リトナビル:HR 0.77[CI 0.66~0.90])。しかし、ICU入室(モルヌピラビル:HR 1.02 [CI 0.76〜1.36]; ニルマトレルビル-リトナビル:HR 1.08 [CI 0.58~2.02])または人工呼吸器サポートの必要性(モルヌピラビル:HR 1.07[CI 0.89~1.30];ニルマトレルビル-リトナビル:HR 1.03[CI 0.70~1.52])に関しては有意なリスク低減は認められませんでした。
薬剤治療とCOVID-19ワクチンの接種回数の間に有意な交互作用は認められず、ワクチン接種の有無にかかわらず経口抗ウイルス薬の有効性が支持されました。ニルマトレルビル-リトナビル投与と年齢、性別、シャルソン併存疾患指数との間に有意な交互作用は認められませんでしたが、モルヌピラビルは高齢者ほど有効である傾向が示されました。
コメント
経口抗ウイルス薬はCOVID-19非入院患者に使用されています。これは、入院患者に対して点滴静注製剤が用いられること、経口抗ウイルス薬による有効性が示されなかったことなどに起因しています。しかし、ウイルスは日々変異していることから、定期的に薬剤の有効性を検証する必要があります。
さて、目標臨床試験模倣デザインを用いた試験結果から、モルヌピラビルおよびニルマトレルビル-リトナビルは、ワクチン接種およびワクチン未接種の入院患者の両方で、全死亡率を減少させました。一方、ICU入室や人工呼吸器サポートの必要性の有意な減少は認められませんでした。
本試験は観察試験結果やデータベースを用いて、別の臨床試験デザインに模倣するターゲットトライアルエミュレーション研究です。したがって、未知の交絡因子が残存しています。より質の高いランダム化比較試験の実施が求められます。
続報に期待。
コメント