枕の高さを厳密に調整すると首の痛みや体感症状にどのように影響しますか?(非対照前向き研究; J Phys Ther Sci. 2023)

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枕の高さ調節を厳密に行うことによる臨床アウトカムへの影響とは?

就寝中に頭部を支えているのは枕のみです。枕の高さを調節することで身体にどのように影響するのかについては充分に影響されていません。

そこで今回は、Set-up for Spinal Sleep法を用いて枕の高さを厳密に調整することで、首の痛みや身体症状などの臨床転帰が改善されるかどうかを確認した非対照前向き研究の結果をご紹介します。

本試験では、肩こりや首の痛みを主訴とする84例を対象に、numerical rating scale(NRS)とSomatic Symptom Scale-8(SSS-8)を用いて、枕の高さを調整したベースライン時、2週間後、3ヵ月後のデータを質問紙で収集されました。

試験結果から明らかになったことは?

肩こりや首の痛みを主訴とする成人
(84例)
年齢50.1±14.0歳
女性60例(71.4%)
BMI21.7±3.2kg/m2
首の痛み(NRS)6.8±1.9
SSS-813.2±4.8
主訴が認められる期間103.8±124.8ヵ月
喫煙5例(5.9%)
平均±SD
首の痛み(NRS)SSS-8スコア
ベースライン6.813.2
2週間5.19.9
3ヵ月4.18.2
いずれも数値が低いほど疼痛レベルが低い

42例(50%)において首痛の数値評価スケールが3点以上減少し、臨床的に重要な最小限の差(MCID)を達成しました。

ベースライン時の首の疼痛スコアは、MCIDを達成した群で有意に高いことが示されました。首の疼痛と身体症状評価尺度(Somatic Symptom Scale-8)の3ヵ月間の変化は、治療に満足している参加者で有意に大きいことが示されました。NRSスコアの改善とSomatic Symptom Scale-8の3ヵ月後の改善との間には、有意な正の相関が認められました。

コメント

Set-up for the Spinal Sleep法を用いた枕の高さの厳格な調整により、身体的な頸部痛と心理的・社会的問題に関連する身体症状の両方が有意に改善されました。しかし、臨床的に意義のありそうな効果が認められたのは試験参加者の半数でした。さらに、本試験は小規模かつ非対照、非ランダム化比較試験であることから追試が求められます。

本試験の解析で用いられているのは、単変量傾向検定の一つであるJonckheere-Terpstra trend testです。これは従属変数が連続変数であるときに用いられます。傾向検定では、ある連続的な値に対する平均値の傾向が、母集団にもみられるかを目的として実施されます。あくまでも傾向を見ていることから、ややpilot的な立ち位置にあると私は捉えています。

より試験規模が大きく、非盲検であっても対照群を設定したランダム化比較試験での検証が求められます。

続報に期待。

Field containing pillow mounds, Little Sodbury

☑まとめ☑ Set-up for the Spinal Sleep法を用いた枕の高さの厳格な調整により、身体的な頸部痛と心理的・社会的問題に関連する身体症状の両方が有意に改善されたが、臨床的に意義のありそうな効果が認められたのは試験参加者の半数であった。小規模な非対照、非ランダム化比較試験であることから追試が求められる。

枕の調節法Set-up for Spinal Sleep法(SSS法)とは?

SSS法は、16号整形外科院長の山田朱織氏が考案した睡眠姿勢を整える方法です(頚椎病変を有する関節リウマチに対する睡眠中の枕調節法. 東日本整形災害外科学会誌 18; 460-465: 2006)。

仰臥位で頭部から体幹の中心線が臥床面に水平となり、仰臥位で臥床面と傾斜する頸椎のなす角度(仰臥位頸椎傾斜角」が15度前後となるよう枕を調節する方法と定義されています。

根拠となった試験の抄録

目的:本研究の目的は、Set-up for Spinal Sleep法を用いて枕の高さを厳密に調整することで、首の痛みや身体症状などの臨床転帰が改善されるかどうかを確認することである。

参加者と方法:肩こりや首の痛みを主訴とする84例を対象に、numerical rating scaleとSomatic Symptom Scale-8を用いて評価した。枕の高さを調整したベースライン時、2週間後、3ヵ月後のデータを質問紙で収集した。

結果:42例(50%)が首痛の数値評価スケールが3点以上減少し、臨床的に重要な最小限の差を達成した。ベースラインの首の疼痛スコアは、臨床的に重要な最小限の差異を達成した群で有意に高かった。首の疼痛と身体症状評価尺度(Somatic Symptom Scale-8)の3ヵ月間の変化は、治療に満足している参加者で有意に大きかった。numerical rating scaleスコアの改善とSomatic Symptom Scale-8の3ヵ月後の改善との間には、有意な正の相関があった。

結論:Set-up for the Spinal Sleep法を用いた枕の高さの厳格な調整により、身体的な頸部痛と心理的・社会的問題に関連する身体症状の両方が有意に改善された。

キーワード:頸部痛、枕、身体症状

引用文献

Changes in neck pain and somatic symptoms before and after the adjustment of the pillow height
Shuori Yamada et al. PMID: 36744195 PMCID: PMC9889209 DOI: 10.1589/jpts.35.106
J Phys Ther Sci. 2023 Feb;35(2):106-113. doi: 10.1589/jpts.35.106. Epub 2023 Feb 1.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36744195/

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