生活習慣への介入効果はどのくらいなのか?
2型糖尿病は遺伝的・環境的要因により発症する高血糖状態を伴う内分泌疾患です。持続的な高血糖状態は神経障害や網膜症、腎症の他、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こし、死亡リスクを高めます。
2型糖尿病における生活習慣(ライフスタイル)への介入は、高血糖患者の代謝コントロールを改善しますが、心血管死亡率および全死亡率に対する効果は充分に検討されていません。
そこで今回は、糖尿病予備軍(前症)あるいは2型糖尿病の心血管死亡および全死亡率に対する生活習慣への介入効果を明らかにしたシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。
本試験のデータソースはMEDLINE、Cochrane CENTRAL、Embase、Web of Scienceであり、日付/言語制限はなく、2022年5月15日まで検索されました。
対象となった試験は、糖尿病予備群および2型糖尿病患者における集中的な生活習慣介入と通常ケアを比較したランダム化臨床試験(RCT)であり、積極的介入期間は2年以上でした。
試験結果から明らかになったことは?
ライフスタイル介入による相対リスク(RR) vs. 通常ケア | |
心血管死亡率 | RR 0.99(95%CI 0.79~1.23) 中程度の確実性のエビデンス |
全死亡率 | RR 0.93(95%CI 0.85~1.03) 中程度の確実性のエビデンス |
ライフスタイルへの介入は、心血管死亡率(RR 0.99、95%CI 0.79~1.23)または全死亡率(RR 0.93、95%CI 0.85~1.03)の低下において通常のケアより優れていませんでした。
サブグループ解析、感度解析、メタ回帰分析では、介入の種類、平均フォローアップ期間、年齢、血糖状態、地理的位置、バイアスリスク、体重変化の影響は認められませんでした。これらの結果はすべて一般化線形混合モデルで確認されました。ほとんどの研究で、RoB 2.0ツールによるバイアスのリスクは低く、証拠の確実性は両方のアウトカムで中程度でした。
コメント
2型糖尿病の治療においては、まず食事・運動療法が実施されますが、これによる死亡リスクへの影響については充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、これまでに実施された集中的なライフスタイルへの介入は、糖尿病前症および2型糖尿病を有する対象者の心血管死亡率または全死亡率の低下において、通常ケアに対する優越性を示せませんでした。介入の種類、平均フォローアップ期間、年齢、血糖状態、地理的位置、バイアスリスク、体重変化など、これらの影響について認められないことから、結果の堅牢性が示されたことになります。
結果の区間推定値をみると、全死亡リスクについてはリスク低下傾向ですので、通常ケアと比較して、よりリスクを低下できる可能性があります。また、通常ケアとライフスタイル介入の併用効果については検証されていませんので、実臨床とはやや異なる状況であると考えられます。
続報に期待。
☑まとめ☑ これまでに実施された集中的なライフスタイルへの介入は、糖尿病前症および2型糖尿病を有する対象者の心血管死亡率または全死亡率の低下において、通常のケアに対する優越性を示さなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:生活習慣への介入は、高血糖患者の代謝制御を改善する。
目的:この集団における心血管死亡率および全死亡率に対する生活習慣への介入の効果を明らかにすることを目的とした。
データソース:MEDLINE、Cochrane CENTRAL、Embase、Web of Scienceで検索した(日付/言語制限なし、2022年5月15日まで)。
研究の選択:糖尿病予備群および2型糖尿病患者を対象とし、集中的な生活習慣介入と通常ケアを比較したランダム化臨床試験(RCT)を対象とし、積極的介入期間は2年以上とした。
データ抽出:選択された11件のRCTのデータを重複して抽出した。死亡率の相対リスク(RR)を推定するためにランダムエフェクトモデルを用いた頻度分析およびアームベースのメタ分析を行い、異質性はI2統計量により評価した。一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて確認した。
データの統合:ライフスタイルへの介入は、心血管死亡率(RR 0.99、95%CI 0.79~1.23)または全死亡率(RR 0.93、95%CI 0.85~1.03)の低下において通常のケアより優れていなかった。サブグループ解析、感度解析、メタ回帰分析では、介入の種類、平均フォローアップ期間、年齢、血糖状態、地理的位置、バイアスリスク、体重変化の影響は認められなかった。これらの結果はすべてGLMMで確認された。ほとんどの研究で、RoB 2.0ツールによるバイアスのリスクは低く、証拠の確実性は両方のアウトカムで中程度であった。
制限事項:ほとんどの研究は、RoB 2.0ツールによるとバイアスリスクが低く、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチにより、両方のアウトカムについてエビデンスの確実性が中程度であった。研究間のライフスタイルプログラムおよび通常のケアの違いは、結果の解釈において考慮されるべきである。
結論:これまでに実施された集中的なライフスタイルへの介入は、糖尿病前症および2型糖尿病を有する対象者の心血管死亡率または全死亡率の低下において、通常のケアに対する優越性を示さなかった。
引用文献
Long-term Effect of Lifestyle Interventions on the Cardiovascular and All-Cause Mortality of Subjects With Prediabetes and Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis
Kelly P Zucatti et al. PMID: 36318674 DOI: 10.2337/dc22-0642
Diabetes Care. 2022 Nov 1;45(11):2787-2795. doi: 10.2337/dc22-0642.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36318674/
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