80歳以上の高齢者における心血管イベントの一次予防に対するスタチンの有効性・安全性は?(システマティックレビュー; Am J Cardiol. 2023)

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高齢者(80歳以上)のおけるスタチンのリスク・ベネフィットはどのくらい?

高齢者(80歳以上)においては、参加者のリクルートなどの課題から臨床試験の実施が困難であり、エビデンスが限られています。高齢そのものが心血管イベントのリスク因子であり、また併存疾患を有する可能性が高いことから心血管疾患の管理が求められます。しかし、患者背景が異なることから、若年層からの医療行為の単純な外挿を避ける必要があります。さらに、スタチンが超高齢集団の一次予防に有用であるかどうかは充分に検討されていません。以上のことから、超高齢集団における特別な研究が必要とされています。

そこで今回は、80歳以上の高齢患者を対象に、スタチンの有効性・安全性を検証したシステマティックレビューの結果をご紹介します。

本試験における注目すべき3つの複雑な問題は、(1)80歳以上の被験者の死亡率および主要な有害心血管イベントに及ぼす高コレステロール血症の影響、(2)この年齢での心血管系イベントを予防するスタチンの効果、(3)この集団におけるスタチンの安全性と忍容性でした。

EMBASE、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceの各データベースで2021年1月までの出版物を含む検索を行い、3つのシステマティックレビューが実施されました。

試験結果から明らかになったことは?

特定された7,617件の文献のうち、最終的に29件が留保されました。

最初の目的(16試験、121,250例)については、7試験(10,241例)で、総コレステロール値および低密度リポタンパク質(LDL-C)値と80代における主要な心血管イベントの発生率増加との関連は見いだせれませんでした。

合計6件の研究(14,493例)では、コレステロールレベルの上昇がイベントに関連することが示されましたが、3件の研究(96,516例)では逆に、コレステロールレベルが低いほど主要な有害心血管イベントのリスクが高くなることが示されました。

スタチンの有効性を扱った8件の試験(436,005例)では、これらの被験者の主要な心血管イベントの発生率を有意に減少させることを示すものはほとんどありませんでした。

最後に、忍容性に関して(9試験、217,088例)、この集団における最も重要な副作用は、筋肉障害、肝障害、胃腸障害であり、これらの事象は、若年者集団に比べて発生頻度が高いことが示されました。

コメント

80歳を超える高齢者集団におけるスタチンの有効性・安全性に関するエビデンスは限られています。

さて、本試験結果によれば、説得力のある証拠がない限り、80歳以上の高齢患者の心血管イベント一次予防におけるスタチンの有用性は不確かなようです。本試験においてメタ解析は実施されていないことから、有効性・安全性の程度については不明です。推測となりますが、集められた試験間の異質性が高いため、あるいは試験間のアウトカムに統一性がなくメタ解析が困難であったのではないかと考えられます。

とはいえ、今のところ80歳以上の高齢集団におけるスタチンの有効性は不確かであり、ルーティンに使用する意義は低いと考えられます。併存疾患により心血管イベントの発生リスクが異なることから、どのような患者背景によりスタチンの有益性が最大化するのかの検証が求められます。

続報に期待。

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☑まとめ☑ 説得力のある証拠がない限り、80歳以上の高齢患者の心血管イベントの一次予防におけるスタチンの有用性は不確かなようである。

根拠となった試験の抄録

背景:高齢者(80歳以上)においては、心血管疾患の管理は、若年層からの医療行為の単純な外挿を避けるために、特別な研究が必要である。スタチンがこの集団の一次予防に有用であるかどうかは明らかではない。注目すべき3つの複雑な問題は、(1)80歳以上の被験者の死亡率および主要な有害心血管イベントに及ぼす高コレステロール血症の影響、(2)この年齢での心血管系イベントを予防するスタチンの効果、(3)この集団におけるスタチンの安全性と忍容性である。

方法:EMBASE、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceの各データベースで2021年1月までの出版物を含む検索を行い、3つのシステマティックレビューを実施した。

結果:特定された7,617件の文献のうち、最終的に29件が留保された。最初の目的(16試験、121,250例)については、7試験(10,241例)で、総コレステロール値および低密度リポタンパク質(LDL-C)値と80代における主要な心血管イベントの発生率増加との関連は見いだせなかった。合計6件の研究(14,493例)では、コレステロールレベルの上昇がイベントに関連することが示されたが、3件の研究(96,516例)では逆に、コレステロールレベルが低いほど主要な有害心血管イベントのリスクが高くなることが示された。スタチンの有効性を扱った8件の試験(436,005例)では、これらの被験者の主要な心血管イベントの発生率を有意に減少させることを示すものはほとんどなかった。最後に、忍容性に関して(9試験、217,088例)、この集団における最も重要な副作用は、筋肉障害、肝障害、胃腸障害であった。これらの事象は、若年者集団に比べて頻度が高かった。

結論:説得力のある証拠がない限り、かなり高齢の患者の一次予防におけるスタチンの有用性は確かなものではない。このような状況でのスタチンの処方は、生理学的状態、合併症、リスクの程度、予想される余命を考慮し、ケースバイケースで検討されるべきである。具体的な臨床試験が必要である。

引用文献

Statins in Primary Prevention in People Over 80 Years
Elodie Marcellaud et al. PMID: 36459749 DOI: 10.1016/j.amjcard.2022.10.015
Am J Cardiol. 2023 Jan 15;187:62-73. doi: 10.1016/j.amjcard.2022.10.015. Epub 2022 Nov 29.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36459749/

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