肝硬変患者の腹水管理におけるスピロノラクトンとエプレレノン、どちらが良いですか?(RCT; Eur J Gastroenterol Hepatol. 2020)

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肝硬変患者の腹水管理におけるスピロノラクトン vs. エプレレノン

肝硬変診療ガイドライン2020では、肝硬変の腹水に対する単剤治療を開始する際には、第一選択薬としてスピロノラクトンを投与するよう記載されています。また、スピロノラクトン単剤で治療効果が不十分な場合には、高用量投与に伴う副作用を防ぐためにスピロノラクトン・ループ利尿薬併用療法が推奨されています。

スピロノラクトンは実臨床における使用実績が豊富であり、有効性・安全性のデータが充分に蓄積されています。女性化乳房は、スピロノラクトンの特徴的な副作用の一つであり、場合によっては治療中止の一因となります。したがって、より副作用リスクを抑えた肝硬変患者の腹水管理が求められています。

MR拮抗薬として、日本ではスピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノン、フィネレノンの4種類が販売されていますが(2022年11月時点)、女性化乳房などの副作用プロファイルについての比較は充分に行われていません。

そこで今回は、肝硬変患者の腹水管理におけるスピロノラクトンとエプレレノンの有効性と副作用を比較するために実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験では、肝硬変による腹水症患者105例を35例ずつ3群にランダムに割り付けました。
 I群 :スピロノラクトン100mg
 II群 :エプレレノン100mg
 III群:エプレレノン50mg

全例に塩分制限食(ナトリウム2g以下)を摂取させ、ループ利尿剤は使用しませんでした。ベースラインから7日後、その後3ヵ月間、隔週で患者を追跡調査し、体重、腹囲の連続測定と副作用、特に女性化乳房、乳房痛、高カリウム血症の発生率が記録されました。

Child-Turcotte-PughスコアC、大量の腹水、肝性脳症、Hepatorenal症候群、心臓、腎臓、悪性腫瘍による腹水がある患者は除外されました。

試験結果から明らかになったことは?

女性化乳房の発生率高カリウム血症
I群 :スピロノラクトン100mg14.28%2.8%
II群 :エプレレノン100mg0%
P<0.001
0%
P≧0.05
III群:エプレレノン50mg0%
P<0.001
0%
P>0.05

体重減少の平均値はI群とII群で有意差はありませんでしたが、I群とIII群、II群とIII群で有意差が認められました(それぞれP≦0.001、P<0.001)。

I群では女性化乳房の発生率は14.28%でしたが、II群およびIII群では女性化乳房の症例は認められませんでした(P<0.001、P<0.001)。

高カリウム血症は、I群では1例(2.8%)でしたが、II群およびIII群では発症しなかった(P≧0.05、P>0.05)。

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2022年11月現在、4種類(スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノン、フィネレノン)のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が販売されていますが、その比較検討は充分に行われていません。

さて、本試験結果によれば、エプレレノンとスピロノラクトンは肝硬変による腹水の管理に同等の効果があるものの、副作用プロファイル(特に女性化乳房)はエプレレノンがスピロノラクトンより優れていることが示されました。

肝硬変診療ガイドライン2020では、肝硬変の腹水に対する単剤治療を開始する際には、第一選択薬としてスピロノラクトン投与が推奨されていること、また実臨床における使用実績から、スピロノラクトンが第一選択薬で良いと考えます。ただし、忍容性が低い場合は、エプレレノンへの変更を検討しても有効性・安全性に問題はなさそうです。他のMR拮抗薬との比較結果も気になるところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ エプレレノンとスピロノラクトンは肝硬変による腹水の管理に同等の効果があるが、副作用プロファイル(特に女性化乳房)はエプレレノンがスピロノラクトンより優れていることが示された。

根拠となった試験の抄録

はじめに:本研究は、肝硬変の腹水管理におけるスピロノラクトンとエプレレノンの有効性と副作用を比較するために実施されたものである。

材料と方法:肝硬変による腹水症患者105例を35例ずつ3群にランダムに割り付けた。I群にはスピロノラクトン100mg、II群にはエプレレノン100mg、III群にはエプレレノン50mgが投与された。全例に塩分制限食(ナトリウム2g以下)を摂取させ、ループ利尿剤は使用しなかった。ベースラインから7日後、その後3ヵ月間、隔週で患者を追跡調査し、体重、腹囲の連続測定と副作用、特に女性化乳房、乳房痛、高カリウム血症の発生率を記録した。結果を比較した。Child-Turcotte-PughスコアC、大量の腹水、肝性脳症、Hepatorenal症候群、心臓、腎臓、悪性腫瘍による腹水がある患者は除外された。

観察結果:体重減少の平均値はI群とII群で有意差はなかったが、I群とIII群、II群とIII群で有意差が認められた(それぞれP≦0.001、P<0.001)。I群では女性化乳房の発生率は14.28%であったが、II群およびIII群では女性化乳房の症例は認められなかった(P<0.001、P<0.001)。高カリウム血症は、I群では1例(2.8%)であったが、II群およびIII群では発症しなかった(P≧0.05、P>0.05)。

結論:エプレレノンとスピロノラクトンは肝硬変による腹水の管理に同等の効果があるが、副作用プロファイルはエプレレノンがスピロノラクトンより優れていることが示された。

引用文献

Comparative study of spironolactone and eplerenone in management of ascites in patients of cirrhosis of liver
Rishabh Sehgal et al. PMID: 32044820 DOI: 10.1097/MEG.0000000000001678
Eur J Gastroenterol Hepatol. 2020 Apr;32(4):535-539. doi: 10.1097/MEG.0000000000001678.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32044820/

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