英国における心不全および鉄欠乏症患者に対するデリソマルトース第二鉄の静脈内投与の効果はどのくらい?(PROBE; IRONMAN試験; Lancet 2022)

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心不全を有する鉄欠乏症患者におけるデリソマルトース第二鉄静注(商品名:モノヴァー)は心不全による入院の再発や心血管死の発生を防げるのか?

心不全、左室駆出率低下、鉄欠乏症の患者に対して、カルボキシマルトース第二鉄(商品名:フェインジェクト)の静脈内投与は、短期的にQOLと運動能力を改善し、1年以内の心不全入院を減少させることが報告されています。しかし、デリソマルトース第二鉄静注(商品名:モノヴァー)の効果については充分に検証されていません。

そこで今回は、心不全患者における心血管系イベントに対するデリソマルトース第二鉄静注の長期的な効果を評価したIRONMAN試験の結果をご紹介します。

IRONMAN試験は、英国の70の病院で行われた前向きランダム化オープンラベル盲検エンドポイント試験です。18歳以上の心不全患者(左室駆出率45%以下)で、トランスフェリン飽和度20%以下または血清フェリチン100μg/L以下の患者を対象としました。参加者は、募集状況や試験実施施設によって層別され、Webベースのシステムを使って、デリソマルトース第二鉄の静脈内投与と通常ケアにランダム(1:1)に割り付けられました。本試験はオープンラベルであり、アウトカムの判定は盲検下で行われました。デリソマルトース第二鉄の静脈内投与は、患者の体重とヘモグロビン濃度により決定されました。

本試験の主要アウトカムは心不全による入院の再発と心血管死であり、有効なランダム割付を行った全患者を対象に評価しました。安全性は、デリソマルトース鉄剤に割り付けられ、少なくとも1回の注入を受けたすべての患者と、通常ケアに割り付けられたすべての患者で評価されました。

本試験では、2020年9月30日にフォローアップを打ち切るCOVID-19感度分析が事前に指定されていました。

試験結果から明らかになったことは?

2016年8月25日から2021年10月15日の間に、1,869例の患者が適格性をスクリーニングされ、そのうち1,137例がデリソマルトース第二鉄の静脈内投与(n=569)または通常ケア(n=568)にランダムに割り付けられました。追跡期間中央値は2.7年(IQR 1.8〜3.6)でした。

デリソマルトース第二鉄群通常ケア群率比 RR
(95%CI)
主要エンドポイント
心不全による入院の再発と
心血管死
336件
(22.4/100人・年)
411件
(27.5/100人・年)
RR 0.82
0.66〜1.02
p=0.070
COVID-19感度解析による
主要エンドポイント
210件
(22.3/100人・年)
280件
(29.3/100人・年)
RR 0.76
0.58~1.00
p=0.047
心不全による入院250
(16.7/100人・年)
313
(20.9/100人・年)


RR 0.80
0.62〜1.03
p=0.085
心血管死119
(21%)
138
(24%)
RR 0.86
0.67〜1.10
p=0.23
死亡184
(32%)
193
(34%)
RR 0.95
0.78〜1.17
p=0.64

デリソマルトース第二鉄群で主要エンドポイントが336件(22.4/100人・年)、通常ケア群で411件(27.5/100人・年)発生しました(率比[RR] 0.82 [95%CI 0.66〜1.02]; p=0.070)。

COVID-19感度解析における主要評価項目は、デリソマルトース第二鉄群で210件(22.3/100人・年)、通常ケア群で280件(29.3/100人・年)発生しました(RR 0.76[95%CI 0.58~1.00];p=0.047)。

死亡や感染症による入院にグループ間の差は認められませんでした。

心疾患の重篤な有害事象は、デリソマルトース第二鉄群で200例[36%]であり、通常治療群では243例[43%]と、介入群でより少ないことが示されました(差 -7.00%[95%CI -12.69 ~ -1.32];p=0.016)。

コメント

AHA2022 米国心臓協会学術集会(AHA22)において、モノヴァーの有効性を検証したIRONMAN試験が公表されました。

本試験結果によれば、心不全、左室駆出率の低下、鉄欠乏を有する幅広い患者に対して、デリソマルトース第二鉄(モノヴァー)の静脈内投与は、通常ケアと比較して、心不全による入院および心血管死のリスク低下と関連していることが明らかとなりました。本試験により、この集団における鉄補給の有益性がさらに支持されることになりました。

ただし、個々の構成要素をみてみると、群間差は認められていません。心不全による入院の再発と
心血管死の複合(COVID-19感度分析)イベントのリスク低下が示されたことになります。

鉄の値が基準値以下(トランスフェリン飽和度20%以下または血清フェリチン100μg/L以下)であるため、治療として鉄補充を行うことは当然ではありますが、治療の根拠として本試験結果は有用です。

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✅まとめ✅ 心不全、左室駆出率の低下、鉄欠乏を有する幅広い患者に対して、デリソマルトース第二鉄(モノヴァー)の静脈内投与は、心不全による入院および心血管死のリスクの低下と関連し、この集団における鉄補給の有益性をさらに支持するものであった。

根拠となった試験の抄録

背景:心不全、左室駆出率低下、鉄欠乏症の患者に対して、カルボキシマルトース第二鉄の静脈内投与は、短期的にはQOLと運動能力を改善し、1年以内には心不全による入院を減少させる。我々は、心不全患者における心血管系イベントに対するデリソマルトース第二鉄静注の長期的な効果を評価することを目的とした。

方法:IRONMAN試験は、英国の70の病院で行われた前向きランダム化オープンラベル盲検エンドポイント試験である。18歳以上の心不全患者(左室駆出率45%以下)で、トランスフェリン飽和度20%以下または血清フェリチン100μg/L以下の患者を対象とした。参加者は、募集状況や試験実施施設によって層別され、Webベースのシステムを使って、デリソマルトース第二鉄の静脈内投与と通常ケアにランダム(1:1)に割り付けられた。本試験はオープンラベルで行われ、アウトカムの判定は盲検下で行われた。デリソマルトース第二鉄の静脈内投与は、患者の体重とヘモグロビン濃度により決定された。
主要アウトカムは心不全による入院の再発と心血管死であり、有効なランダム割付を行った全患者を対象に評価した。
安全性は、デリソマルトース鉄剤に割り付けられ、少なくとも1回の注入を受けたすべての患者と、通常ケアに割り付けられたすべての患者で評価された。
2020年9月30日にフォローアップを打ち切るCOVID-19感度分析が事前に指定されていた。IRONMAN試験はClinicalTrials.gov(NCT02642562)に登録されている。

所見:2016年8月25日から2021年10月15日の間に、1,869例の患者が適格性をスクリーニングされ、そのうち1,137例がデリソマルトース第二鉄の静脈内投与(n=569)または通常ケア(n=568)にランダムに割り付けられた。追跡期間中央値は2.7年(IQR 1.8〜3.6)。デリソマルトース群で主要エンドポイント336件(22.4/100人・年)が、通常ケア群で411件(27.5/100人・年)発生した(率比[RR] 0.82 [95%CI 0.66〜1.02]; p=0.070)。COVID-19感度解析における主要評価項目は、デリソマルトース第二鉄群で210件(22.3/100人・年)、通常ケア群で280件(29.3/100人・年)発生した(RR 0.76[95%CI 0.58~1.00];p=0.047)。死亡や感染症による入院にグループ間の差は認められなかった。心疾患の重篤な有害事象は、デリソマルトース第二鉄群の200例[36%]であり、通常治療群の243例[43%]より少なかった(差 -7.00%[95%CI -12.69 ~ -1.32];p=0.016)。

解釈:心不全、左室駆出率の低下、鉄欠乏を有する幅広い患者に対して、デリソマルトース鉄剤の静脈内投与は、心不全による入院および心血管死のリスクの低下と関連し、この集団における鉄補給の有益性をさらに支持するものであった。

資金提供:British Heart Foundation、Pharmacosmos

引用文献

Intravenous ferric derisomaltose in patients with heart failure and iron deficiency in the UK (IRONMAN): an investigator-initiated, prospective, randomised, open-label, blinded-endpoint trial
Prof Paul R Kalra et al.
Lancet 2022. Published:November 05, 2022 DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)02083-9
ー 続きを読む https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)02083-9/fulltext

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