腎機能別のステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の有効性・安全性は?(大規模RCTのメタ解析; JACC HF 2022)

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腎機能障害患者の各eGFRにおけるMRAの有効性・安全性はどのくらい?

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、腎機能障害患者において充分に使用されておらず、慢性腎臓病(CKD)患者におけるその有効性は不明です。

そこで今回は、腎機能障害患者の各推定糸球体濾過量(eGFR)におけるMRAの有効性・安全性について検証した大規模ランダム化比較試験のメタ解析の結果をご紹介します。

本研究では、RALES(Randomized Aldactone Evaluation Study)、EMPHASIS-HF(Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure)、TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure With an Aldosterone Antagonist)、EPHESUS(Eplerenone Post-AMI Heart Failure Efficacy and Survival Study)試験に参加した、心不全(HF)や心筋梗塞、進行CKD患者を対象に調査が実施されました。治療とeGFRの相互作用を有する試験で層別化したCoxモデルを用いた個人患者データのメタ解析が行われました。eGFRはChronic Kidney Disease Epidemiology Collaborationのクレアチニン公式を用いて再計算されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計12,700例の患者が対象となり、そのうち331例(2.6%)がeGFR≦30mL/min/1.73m2でした(平均eGFR 26.8±3.2mL/min/1.73m2)。

心血管死またはHF入院の複合疾患に対する
プラセボイベント発生率(100人・年当たり)
eGFR>90mL/min/1.73m2の患者14.6
eGFR≦30mL/min/1.73m2の患者41.6

CKDが進行した患者では、すべての試験結果において年換算したイベント発生率が高いことが示されました。心血管死またはHF入院の複合疾患に対するプラセボイベント発生率は、eGFR>90mL/min/1.73m2の患者に比べ、eGFR≦30mL/min/1.73m2の患者では100人・年当たり14.6 vs. 41.6と約3倍高いことが示されました。

心血管死またはHF入院の複合疾患
90mL/min/1.73m2HR 0.62(95%CI 0.49〜0.78
61〜90mL/min/1.73m2HR 0.69(95%CI 0.61〜0.77
46〜60mL/min/1.73m2HR 0.84(95%CI 0.74〜0.95
31〜45mL/min/1.73m2HR 0.79(95%CI 0.68〜0.91
30mL/min/1.73m2以下HR 0.96(95%CI 0.70〜1.32

MRA(vs. プラセボ)は心血管死またはHF入院の複合疾患を減少させましたが、その効果はeGFRの低下とともに減弱し、eGFRカテゴリー別の対応するHRは次の通りでした;90mL/min/1.73m2を超える場合のHR 0.62(95%CI 0.49〜0.78)、61〜90mL/min/1.73m2の場合のHR 0.69(95%CI 0.61〜0.77)、46〜60mL/min/1.73m2の場合のHR 0.84(95%CI 0.74〜0.95)、31〜45mL/min/1.73m2を超える場合のHR 0.79(95%CI 0.68〜0.91)、30mL/min/1.73m2以下の場合のHR 0.96(95%CI 0.70〜1.32)(治療とeGFRに対する傾向の交互作用P=0.033)。

治験責任医師が報告した高カリウム血症および腎機能の悪化は、MRA使用者でより頻繁に認められ(2~3倍)、高カリウム血症はeGFRが低下するとより頻繁に認められました(治療とeGFRの傾向の交互作用のP=0.002)。

コメント

添付文書上、MRAはeGFRが30(あるいは10)mL/min/1.73m2未満の患者に禁忌とされています。しかし、これは作用機序や臨床試験から除外されていることに起因しており、腎機能障害患者における検討は充分に行われていません。

さて、本試験結果によれば、ステロイド系MRAは、eGFRの幅広い範囲でHF入院と死亡を減少させました。しかし、eGFRが低い患者、特に30mL/min/1.73m2以下の患者においては、有益性の低下と安全性の悪化により、その使用が制限される可能性が示されました。とはいえ、eGFR 30mL/min/1.73m2以下の患者は全体の2.6%であることから、データが少なく、充分に検討されているとはいえません。追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ステロイド系MRAは、eGFRの幅広い範囲でHF入院と死亡を減少させた。しかし、eGFRが低い患者、特に30mL/min/1.73m2以下の患者においては、有益性の低下と安全性の悪化により、その使用が制限される可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、腎機能障害患者において十分に使用されておらず、慢性腎臓病(CKD)患者におけるその有効性は不明である。

研究の目的:本研究の目的は、ランダム化比較試験において、推定糸球体濾過量(eGFR)の範囲におけるステロイド系MRAの有効性と安全性を解析することであった。本研究では、RALES(Randomized Aldactone Evaluation Study)、EMPHASIS-HF(Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure)、TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure With an Aldosterone Antagonist)、EPHESUS(Eplerenone Post-AMI Heart Failure Efficacy and Survival Study)試験に参加した、心不全(HF)や心筋梗塞、進行CKD患者を対象に調査を実施した。

方法:本研究では、治療とeGFRの相互作用を有する試験で層別化したCoxモデルを用いた個人患者データのメタ解析を行った。eGFRはChronic Kidney Disease Epidemiology Collaborationのクレアチニン公式を用いて再計算された。

結果:合計12,700例の患者が対象となり、そのうち331例(2.6%)がeGFR≦30mL/min/1.73m2であった(平均eGFR 26.8±3.2mL/min/1.73m2)。CKDが進行した患者では、すべての試験結果において年換算したイベント発生率が高かった。心血管死またはHF入院の複合疾患に対するプラセボイベント発生率は、eGFR>90mL/min/1.73m2の患者に比べ、eGFR≦30mL/min/1.73m2の患者では100人・年当たり14.6 vs. 41.6と約3倍高くなった。MRA(vs. プラセボ)は心血管死またはHF入院の複合疾患を減少させたが、その効果はeGFRの低下とともに減弱し、eGFRカテゴリー別の対応するHRは次の通りであった;90mL/min/1.73m2を超える場合のHR 0.62(95%CI 0.49〜0.78)、61〜90mL/min/1.73m2の場合のHR 0.69(95%CI 0.61〜0.77)、46〜60mL/min/1.73m2の場合のHR 0.84(95%CI 0.74〜0.95)、31〜45mL/min/1.73m2を超える場合のHR 0.79(95%CI 0.68〜0.91)、30mL/min/1.73m2以下の場合のHR 0.96(95%CI 0.70〜1.32)(治療とeGFRに対する傾向の交互作用P=0.033)であった。治験責任医師が報告した高カリウム血症および腎機能の悪化は、MRA使用者でより頻繁に(2~3倍)認められ、高カリウム血症はeGFRが低下するとより頻繁に認められた(治療とeGFRの傾向の交互作用のP=0.002)。

結論:ステロイド系MRAは、幅広いeGFRの範囲でHF入院と死亡を減少させた。しかし、eGFRが低い患者、特に30mL/min/1.73m2以下の患者においては、有益性の低下と安全性の悪化により、その使用が制限される可能性がある。

引用文献

Steroidal MRA Across the Spectrum of Renal Function: A Pooled Analysis of RCTs
João Pedro Ferreira et al.
J Am Coll Cardiol HF. Sep 07, 2022. Epublished DOI: 10.1016/j.jchf.2022.06.010
— 読み進める www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2022.06.010

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