チョコレート摂取量と認知機能、ノーベル賞受賞者の関係性は?(N Engl J Med. 2012)

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相関関係と因果関係、そこに関連する因子とは?〜チョコレート消費量とノーベル賞受賞者を例に〜

植物性食品に豊富に含まれる食物性フラボノイドは、認知機能を改善することが示されています。特に、認知症リスクの減少、いくつかの認知テストの成績向上、軽度障害のある高齢者患者の認知機能の改善は、フラボノイドの定期的な摂取と関連しています(PMID: 19056649PMID: 22892813)。ココア、緑茶、赤ワイン、いくつかの果物に広く含まれるフラバノールと呼ばれる亜種は、老化に伴う認知能力の低下を遅らせる、さらには逆転させる効果があると考えられています。また、食物性フラバノールは、末梢血管系および脳において血管拡張を引き起こすことにより、内皮機能を改善し、血圧を低下させることが示されています(PMID: 19289648PMID: 18728792)。

チョコレートの摂取は、個人だけでなく集団全体の認知機能を向上させる可能性があるため、ある国のチョコレート消費量とその集団の認知機能に相関関係が得られる可能性があります。国民全体の認知機能に関するデータは公開されていませんが、国民一人当たりのノーベル賞受賞者数を、認知機能が優れている人の割合を代替指標とすることで、その国全体の認知機能を知ることができると考えます。

そこで今回は、国民一人当たりのノーベル賞受賞者数でランク付けした国のリストと22ヵ国の一人当たりの年間チョコレート消費量について検証した試験結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

23ヵ国において、1人当たりのチョコレート消費量と1000万人当たりのノーベル賞受賞者数には、密接かつ有意な線形相関(r=0.791、P<0.0001)が認められました。スウェーデンを除外して再計算すると、相関係数は0.862に増加しました。また、ノーベル賞受賞者数、チョコレート消費量ともにスイスがトップでした。

回帰直線の傾きから、ある国のノーベル賞受賞者数を1人増やすには、国民1人当たり年間約0.4kgのチョコレートが必要であると推定されます。チョコレートの最小有効摂取量は年間2kg程度と思われ、用量反応曲線から、最も多い年間11kgの摂取量でもノーベル賞受賞者数の上限は明らかでないことが明らかとなりました。

コメント

リテラシー(ある分野における読解記述力。適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する活用力)を高めるには、相関関係と因果関係について分けて考える必要があります。医学論文では、試験デザインにより、しばしば相関関係が報告されることがあります。あくまでも相関関係が示されているため、要因Xが結果Yを引き起こすかどうかは不明ですが、ニュースなどの一般向けの内容では、しばしば因果関係があるように、つまり要因Xがあたかも原因因子であるように扱われてしまいます。このような情報、誤報に対して、国民一人一人が気がつけるようにするためにリテラシーの向上が求められます。

今回ご紹介したチョコレート消費量と各国のノーベル賞受賞者数の関連性について検証した試験では、チョコレート消費量とノーベル賞受賞者数に強い相関関係が認められました。研究の背景として、一部のチョコレートに含まれる食物性フラバノールが認知機能を向上させるデータが紹介されていました。つまり、本試験の著者としては、チョコレート消費量が多い国→(認知機能が高い集団が多い国を調査)→結果としてノーベル賞受賞者数が多い国、というストーリーを展開していることになります。

しかし、本試験で示されたのは、あくまでも相関関係であり、たまたまノーベル賞受賞者数が多い国でチョコレート消費量が多かった可能性が高いです。また、本試験ではチョコレート消費と認知機能の向上については検証していません。

ノーベル賞受賞者数が多い国では、国全体として認知機能を向上させるような政策を行っている可能性が高く、教育体制の強化に注力していると考えられますので、チョコレート消費以外の要因として、教育体制、識字率、出生数など、さまざまな要因について調整する必要があると考えられます。

著者も述べているように、因果関係を検証するためにはランダム化比較試験の実施が求められますが、現実的には困難であることから、本試験の追試は困難であると考えられます。

相関関係と因果関係を考察する上で、本試験は貴重な報告であると考えられます。ぜひ、ご活用ください。

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✅まとめ✅ チョコレート消費は、各国のノーベル賞受賞者数と相関しているようであるが、多くの要因が関与していることから、前向きのランダム化比較試験の実施が求められる。本試験は相関関係と因果関係を考察する上での良い教材になりうる。

根拠となった試験の抄録

背景:植物性食品に豊富に含まれる食物性フラボノイドは、認知機能を改善することが示されている。特に、認知症のリスクの減少、いくつかの認知テストの成績の向上、軽度障害のある高齢者患者の認知機能の改善は、フラボノイドの定期的な摂取と関連している(PMID: 19056649PMID: 22892813)。ココア、緑茶、赤ワイン、いくつかの果物に広く含まれるフラバノールと呼ばれる亜種は、老化に伴う認知能力の低下を遅らせる、さらには逆転させる効果があると考えられている。また、食物性フラバノールは、末梢血管系および脳において血管拡張を引き起こすことにより、内皮機能を改善し、血圧を低下させることが示されている(PMID: 19289648PMID: 18728792)。カカオポリフェノール抽出物の投与による認知能力の向上は、老化Wistar-Unileverラットにおいても報告されている(PMID: 18179729)。
チョコレートの摂取は、個人だけでなく集団全体の認知機能を向上させる可能性があるため、ある国のチョコレート消費量とその集団の認知機能に相関関係が得られる可能性がある。知る限り、国民全体の認知機能に関するデータは公開されていない。しかし、国民一人当たりのノーベル賞受賞者数を、認知機能が優れている人の割合を示す代替指標とすることで、その国全体の認知機能を知ることができると考える。

方法:国民一人当たりのノーベル賞受賞者数でランク付けした国のリストをWikipediaからダウンロードした(http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_Nobel_laureates_per_capita)。その国の人口1,000万人に対するノーベル賞受賞者数を算出した。
2011年10月10日までに授与されたすべてのノーベル賞受賞者を対象とした。22ヵ国の一人当たりの年間チョコレート消費量については、Chocosuisse (www.chocosuisse.ch/web/chocosuisse/en/home), Theobroma-cacao (www.theobroma-cacao.de/wissen/wirtschaft/international/konsum), Caobisco (www.caobisco.com/page.asp?p=213.) からデータを取得した。1ヵ国(スイス)は2011年から、15カ国は2010年から、5カ国は2004年から、1カ国は2002年からデータが入手可能だった。

結果:23ヵ国において、1人当たりのチョコレート消費量と1000万人当たりのノーベル賞受賞者数には、密接かつ有意な線形相関(r=0.791、P<0.0001)が認められた。スウェーデンを除外して再計算すると、相関係数は0.862に増加した。また、ノーベル賞受賞者数、チョコレート消費量ともにスイスがトップであった。回帰直線の傾きから、ある国のノーベル賞受賞者数を1人増やすには、国民1人当たり年間約0.4kgのチョコレートが必要であると推定される。チョコレートの最小有効摂取量は年間2kg程度と思われ、用量反応曲線から、最も多い年間11kgの摂取量でもノーベル賞受賞者数の上限は明らかでないことがわかる。

考察:本研究の主要な発見は、一人当たりのチョコレート摂取量と各国のノーベル賞受賞者数との間に驚くほど強力な相関があることである。もちろん、XとYの相関は因果関係を証明するものではなく、XがYに影響を与えているか、YがXに影響を与えているか、XとYが共通の基礎的なメカニズムによって影響を受けているかのいずれかを示している。しかし、チョコレートの摂取が認知機能を向上させることが証明されていることから、チョコレートの摂取が用量依存的にノーベル賞受賞者の萌芽に必要な豊かな土壌を提供している可能性は高いように思われる。もちろん、これらの知見は仮説に過ぎず、前向きなランダム化試験で検証されなければならない。
本結果の中で唯一、スウェーデンが異常値であると思われる。一人当たりのチョコレート消費量が年間6.4kgであることから、スウェーデンのノーベル賞受賞者数は約14人と予測されるが、実際には32人である。これは、ストックホルムのノーベル賞委員会がノーベル賞候補者の評価に愛国的なバイアスをかけているか、あるいは、スウェーデン人がチョコレートに特別敏感で、微量でも認知力を大きく向上させるためではないか、という考えから抜け出せないのである。
第二の仮説として、認知能力の向上が国全体のチョコレート消費を刺激するという逆因果も考えなければならない。認知機能の高い人(=コグニッシェンティ)は、ダークチョコレートに含まれるフラバノールが健康に良いということを意識して、消費量を増やす傾向にあるということが考えられる。ノーベル賞を受賞したことで、全国的にチョコレートの摂取量が増えるということは考えにくいが、このユニークな名誉に関連した祝賀イベントが、広範囲に、しかしおそらくは一過性に増加するきっかけになるかもしれない。
最後に、第三の仮説として、チョコレートの消費量とノーベル賞受賞者の数を長年にわたって増加させるような、もっともらしい共通因子を特定することは困難である。国による社会経済的地位の違い、地理的・気候的要因などが考えられるが、このような密接な相関を説明するには不十分である。

研究の限界:今回のデータは各国の平均値であり、過去および現在のノーベル賞受賞者個人の具体的なチョコレート摂取量は不明である。また、ストックホルムへの出張を要請される確率を十分に高めるために必要なチョコレートの累積摂取量も不明である。ノーベル賞受賞者数、チョコレート摂取量ともに時間依存変数であり、年ごとに変化するため、この研究は発展途上にある。

結論:チョコレート消費は、ノーベル賞受賞の必須条件である認知機能を高め、各国のノーベル賞受賞者数と密接に相関している。チョコレートの摂取が、認知機能の向上と観察された関連性の基礎となるメカニズムであるかどうかは、まだ解明されていない。

引用文献

Chocolate consumption, cognitive function, and Nobel laureates
Franz H Messerli et al. PMID: 23050509 DOI: 10.1056/NEJMon1211064
N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1562-4. doi: 10.1056/NEJMon1211064. Epub 2012 Oct 10.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23050509/

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