デンマークにおける心血管スクリーニング検査は死亡リスクを低減できるのか?
死亡リスクに関して、集団ベースの心血管系疾患スクリーニングの有益性を示唆するデータは限られています。心血管系疾患のスクリーニングが有効であるかどうか検証が求められます。
そこで今回は、潜在性心血管疾患に対するスクリーニングが死亡リスクを低下できるか検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験において、デンマークの15市町村に住む65~74歳の男性を対象に、参加者は1:2の割合で、潜在性心血管疾患に対するスクリーニングを受ける群(招待群)と受けない群(対照群)にランダムに割り付けられました。ランダム化はコンピュータで作成された乱数に基づいて行われ、市町村によって層別化されました。
スクリーニングには、冠動脈カルシウムスコアを決定し、動脈瘤と心房細動を検出するための非造影心電図-ゲートCT、末梢動脈疾患と高血圧を検出するための足首上腕血圧測定、糖尿病と高コレステロール血症を検出するための血液サンプリングが含まれました。
本試験の主要評価項目は、あらゆる原因による死亡でした。
試験結果から明らかになったことは?
合計46,611例の参加者がランダム化を受けました。スクリーニングを受けるよう招待される前に死亡または移住した男性85例を除外した後、招待群には男性16,736例、対照群には男性29,790例が含まれ、招待群の男性のうち10,471例がスクリーニングを受けました(62.6%)。
招待群 | 対照群 | ハザード比 (95%CI) | |
死亡 | 2,106例 (12.6%) | 3,915例 (13.1%) | 0.95 (0.90〜1.00) P=0.06 |
Intention-to-treat解析では、中央値5.6年の追跡の後、招待群の2,106例(12.6%)と対照群の3,915例(13.1%)が死亡しました(ハザード比 0.95、95%信頼区間[CI] 0.90〜1.00;P=0.06)。
招待群におけるハザード比 (vs. 対照群) | |
脳卒中 | 0.93 (95%CI 0.86~0.99) |
心筋梗塞 | 0.91 (95%CI 0.81~1.03) |
大動脈解離 | 0.95 (95%CI 0.61~1.49) |
大動脈破裂 | 0.81 (95%CI 0.49~1.35) |
対照群と比較して、招待群における脳卒中のハザード比は0.93(95%CI 0.86~0.99); 心筋梗塞のハザード比は0.91(95%CI 0.81~1.03); 大動脈解離のハザード比は0.95(95%CI 0.61~1.49); 大動脈破裂のハザード比は0.81(95%CI 0.49~1.35)でした。
安全性については、グループ間で有意差はありませんでした。
コメント
潜在性心血管疾患に対するスクリーニングを受けることが、地域集団の予後を改善するかどうかは不明です。
さて、本試験結果によれば、5年以上にわたる包括的な心臓血管スクリーニングの受診勧奨は、65~74歳の男性におけるあらゆる原因による死亡の発生を有意に減少できませんでした。死亡原因の内訳をみてみると、脳卒中のハザード比は0.93(95%CI 0.86~0.99)ですので、脳卒中のスクリーニングについては有効かもしれません。
本試験結果から一様に包括的なスクリーニングを実施することは意義がなさそうですが、他の国や地域においても同様の結果が得られるのかについては不明です。
心血管リスクの高い集団におけるスクリーニングの効果については不明ですので、この点を明らかにした方が良いのかもしれません。
続報に期待。
✅まとめ✅ 5年以上経過しても、包括的な心臓血管スクリーニングの受診勧奨は、65~74歳の男性におけるあらゆる原因による死亡の発生を有意に減少させなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:死亡リスクに関して、集団ベースの心血管系疾患スクリーニングの有益性を示唆するデータは限られている。
方法:デンマークの15市町村に住む65~74歳の男性を対象に、集団ベースの並行群間ランダム化比較試験を実施した。参加者は1:2の割合で、潜在性心血管疾患に対するスクリーニングを受ける群(招待群)と受けない群(対照群)にランダムに割り付けられた。ランダム化はコンピュータで作成された乱数に基づいて行われ、市町村によって層別化された。対照群のみ試験群の割り当てを知らされなかった。スクリーニングには、冠動脈カルシウムスコアを決定し、動脈瘤と心房細動を検出するための非造影心電図-ゲートCT、末梢動脈疾患と高血圧を検出するための足首上腕血圧測定、糖尿病と高コレステロール血症を検出するための血液サンプリングが含まれた。
主要評価項目は、あらゆる原因による死亡であった。
結果:合計46,611例の参加者がランダム化を受けた。スクリーニングを受けるよう招待される前に死亡または移住した男性85例を除外した後、招待群には男性16,736例、対照群には男性29,790例が含まれ、招待群の男性のうち10,471例がスクリーニングを受けた(62.6%)。Intention-to-treat解析では、中央値5.6年の追跡の後、招待群の2,106例(12.6%)と対照群の3,915例(13.1%)が死亡した(ハザード比 0.95、95%信頼区間[CI] 0.90〜1.00;P=0.06)。対照群と比較して、招待群における脳卒中のハザード比は0.93(95%CI 0.86~0.99); 心筋梗塞のハザード比は0.91(95%CI 0.81~1.03); 大動脈解離のハザード比は0.95(95%CI 0.61~1.49); 大動脈破裂のハザード比は0.81(95%CI 0.49~1.35)であった。安全性については、グループ間で有意差はなかった。
結論:5年以上経過しても、包括的な心臓血管スクリーニングの受診勧奨は、65~74歳の男性におけるあらゆる原因による死亡の発生を有意に減少させなかった。
資金提供:デンマーク南部地域ほか助成
ISRCTN登録番号:ISRCTN12157806
引用文献
Five-Year Outcomes of the Danish Cardiovascular Screening (DANCAVAS) Trial
Jes S Lindholt et al. PMID: 36027560 DOI: 10.1056/NEJMoa2208681
N Engl J Med. 2022 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa2208681. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36027560/
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