進行した慢性腎臓病を有する高齢者における高用量フルオロキノロン療法と重篤な有害事象の関連性は?(コホート研究; JAMA Netw Open. 2022)

crop man doctor showing pills in clinic 07_腎・泌尿器系
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高齢のCKD患者における高用量フルオロキノロンは重篤な有害事象の発生と関連する?

フルオロキノロン系抗菌薬は、世界で最もよく処方される広域抗生物質の一つです(PMID: 23570031PMID: 31067381)。米国では、2018年に670万件のシプロフロキサシン処方と380万件のレボフロキサシン処方が行われました(clincalc)。これらの抗生物質の適応症は、尿路感染症、呼吸器感染症、消化管感染症、皮膚・軟部組織感染症などです(PMID: 23570031UpToDate)。フルオロキノロンの使用は、神経系および/または精神障害(例:せん妄または末梢神経障害による入院、UpToDatePMID: 29702230PMID: 25150290)、低血糖(UpToDatePMID: 23948133)およびコラーゲン関連有害事象(例:アキレス腱断裂、腹部大動脈瘤断裂)などの多くの稀だが重大な有害事象と関連しています(UpToDatePMID: 31077091PMID: 31270563PMID: 34728881)。これらのリスクは、集団ベース研究、ランダム化臨床試験および観察研究のメタアナリシスで報告されています(UpToDatePMID: 29702230PMID: 25150290PMID: 23948133PMID: 31077091PMID: 31270563PMID: 30368737PMID: 29095256PMID: 31514945)。米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロキノロン使用によるリスクについて、いくつかのブラックボックス警告を発表しています(FDAFDAFDAFDAFDAFDA)。

有害性の可能性を考慮し、フルオロキノロン系抗菌薬は通常、ベネフィットがリスクを明らかに上回る、より重度の細菌感染症の治療にのみ使用されます(UpToDate)。モキシフロキサシンを除き、フルオロキノロン系抗菌薬は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者では排泄が遅延します(PMID: 19909890PMID: 30862698)。製品情報概要および診療ガイドラインでは、腎機能が低下した患者、特に推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/min/1.73m2未満の患者にはフルオロキノロンを低用量で投与することが推奨されています(PMID: 24189475)。慢性腎臓病(CKD)患者におけるフルオロキノロン使用による有害事象は、30の症例報告および264,968例の血液透析患者のコホート研究1件で報告されています(PMID: 34668928)。

そこで今回は、進行したCKD患者におけるフルオロキノロンの安全な処方を知るために、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の高齢者(透析を受けている患者は除く)を対象とした集団ベース研究を行い、フルオロキノロンの投与量が高い患者と低い患者で重篤な有害事象のリスクを検討した試験の結果をご紹介します。

高用量のフルオロキノロンとして、シプロフロキサシン501~1000mg/日、レボフロキサシン501~750mg/日、ノルフロキサシン401~800mg/日、低用量のフルオロキノロンとして、シプロフロキサシン500mg/日、レボフロキサシン250~500mg/日、ノルフロキサシン400mg/日が定義されました。本試験の主要アウトカムは、神経系および/または精神障害,低血糖,膠原病関連事象による病院受診の 14日間のリスクでした。

試験結果から明らかになったことは?

解析に組み入れた11,917例(年齢中央値 83歳[IQR 77~89歳];女性 7,438例[62.4%];eGFR中央値25[IQR 21~28]mL/min/1.73m2)のうち、5,482例(46.0%)が高用量のフルオロキノロン、6,435例(54.0%)が低用量のフルオロキノロンを投与されていました。

高用量フルオロキノロン低用量フルオロキノロン
主要複合アウトカム*5,482例中68例(1.2%)5,516例中47例(0.9%)
加重リスク比加重リスク比 1.45
[95%CI 1.01〜2.08]
加重リスク差加重リスク差 0.39%
[95%CI 0.01%〜0.76%]
*神経系および/または精神障害、低血糖、膠原病関連事象による病院受診

重み付け後の主要複合アウトカム(神経系および/または精神障害、低血糖、膠原病関連事象による病院受診)は、高用量フルオロキノロンで治療した5,482例中68例(1.2%)で、低用量フルオロキノロンでは5,516例中47例(0.9%)で生じました(加重リスク比 1.45 [95%CI 1.01〜2.08]; 加重リスク差 0.39% [95%CI 0.01%〜0.76%] )。

敗血症、網膜剥離、全入院、全死亡、心臓突然死のリスクは、群間で有意差はありませんでした。

コメント

フルオロキノロン系薬(モキシフロキサシンを除く)は主に腎排泄されることから、腎機能に応じた投与用量の設定が求められます。CKD患者や高齢者では腎機能が低下しているため、フルオロキノロン系薬を使用する際に通常用量よりも減らす必要があります。しかし、過量投与となった際に、どのような事象が認められるのかについては、充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、フルオロキノロンを推奨用量よりも多く処方された高齢のCKD患者では、イベントの絶対リスクが2%未満であったものの、神経系および/または精神障害による入院、低血糖、または膠原病関連イベントの複合転帰を経験する可能性が有意に高いことと関連していました。ただし、一つ一つの事象を見ていくと、精神状態の変化を伴う病院受診のみでのリスク増加との関連性が示されています。低血糖/敗血症/網膜剥離による入院、全入院、全死亡、心突然死については群間差がありませんでした。また、本試験はカナダの一部地域のコホート研究の結果であることから、他の国や地域でも同様の結果が得られるのかについては不明です。

とはいえ、高齢のCKD患者におけるフルオロキノロン系薬の使用は、やはり慎重に用量設定を行った方が良さそうです。中枢神経系に影響が出ることは避けた方が良いと考えられます。

white and blue health pill and tablet letter cutout on yellow surface

✅まとめ✅ フルオロキノロンを推奨用量より多く処方された高齢のCKD患者は、これらのイベントの絶対リスクは2%未満であったが、複合転帰のうち精神状態の変化を伴う病院受診を経験する可能性が有意に高いことを示唆している。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:進行した慢性腎臓病(CKD)患者にフルオロキノロン系抗生物質を安全に処方するためには、母集団に基づくデータが必要である。

目的:高用量と低用量のフルオロキノロン系抗生物質を新たに処方された進行したCKD患者において、神経系および/または精神障害、低血糖、または膠原病関連イベントによる病院受診の14日間リスクを定量化することである。

試験デザイン、設定、参加者:カナダ・オンタリオ州におけるこの人口ベースのコホート研究(2008年1月1日~2020年3月17日)では、リンクされた医療データを用いて、フルオロキノロン系抗生物質の新規使用者を特定した。参加者は、66歳以上の進行したCKD(推定糸球体濾過量[eGFR<30 mL/min/1.73m2で透析を受けていない成人)である。データ解析は、2021年1月1日から4月30日まで実施した。

曝露:高用量フルオロキノロン(シプロフロキサシン 501~1000mg/日、レボフロキサシン 501~750mg/日、またはノルフロキサシン 401~800mg/日) vs. 低用量フルオロキノロン(シプロフロキサシン 500mg/日、レボフロキサシン 250~500mg/日、またはノルフロキサシン 400mg/日)への新規処方を受けること。

主要評価項目:主要評価項目は、神経系および/または精神疾患、低血糖、または膠原病関連イベントによる病院受診の14日間リスクとした。副次的アウトカムは、敗血症、網膜剥離、その他の腱鞘炎による入院、全入院、全死亡、心臓突然死などであった。ベースラインの健康状態について比較群のバランスをとるために、傾向スコアにおける治療の逆確率加重が用いられた。加重リスク比とリスク差は、それぞれ修正ポアソン回帰と二項回帰を用いて求めた。

結果:解析に組み入れた11,917例(年齢中央値 83歳[IQR 77~89歳];女性 7,438例[62.4%];eGFR中央値25[IQR 21~28]mL/min/1.73m2)のうち、5,482例(46.0%)が高用量のフルオロキノロン、6,435例(54.0%)が低用量のフルオロキノロンを投与されていた。重み付け後の主要複合アウトカム(神経系および/または精神障害、低血糖、膠原病関連事象による病院受診)は、高用量フルオロキノロンで治療した 5,482例中68例(1.2%)で、低用量フルオロキノロンでは5,516例中47例(0.9%)で生じた(加重リスク比 1.45 [95%CI 1.01〜2.08]; 加重リスク差 0.39% [95%CI 0.01%〜0.76%] )。敗血症、網膜剥離、全入院、全死亡、心臓突然死のリスクは、群間で有意差はなかった。

結論と関連性:これらの知見は、フルオロキノロンを推奨用量より多く処方された高齢のCKD患者は、これらのイベントの絶対リスクは2%未満であったが、神経系および/または精神障害による入院、低血糖、または膠原病関連イベントの複合転帰を経験する可能性が有意に高いことを示唆している。

引用文献

Association of Higher-Dose Fluoroquinolone Therapy With Serious Adverse Events in Older Adults With Advanced Chronic Kidney Disease
Flory Tsobo Muanda et al. PMID: 35917124 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.24892
JAMA Netw Open. 2022 Aug 1;5(8):e2224892. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.24892.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35917124/

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