動脈硬化性心疾患(ASCVD)患者におけるロスバスタチン10mgとエゼチミブ併用療法 vs. ロスバスタチン20mg、どちらが良さそうですか?(Open-RCT; RACING試験; Lancet. 2022)

white and brown eggs on brown wooden tray 05_内分泌代謝系
Photo by Felicity Tai on Pexels.com
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

ASCVD患者の心血管イベントに対するロスバスタチン10mgとエゼチミブ併用療法 vs. ロスバスタチン20mg、どちらが良いのか?

心血管イベントは患者予後を悪化させることから発症予防が重要です。動脈硬化性心疾患(ASCVD)患者では、心血管イベントの発症リスクが高いことから、血圧コントロール、そして脂質コントロールが求められます。

治療に際しては、1つの薬剤を増量するよりも、異なる作用機序の薬剤を併用する方が、より高い有効性と低リスクを達成することができると報告されています。したがって、高強度スタチン単剤療法の代替として、中強度スタチンとエゼチミブ併用療法を実施することで、副作用を軽減しながら効果的にLDLコレステロール値を低下させることができます。しかし、長期的な臨床転帰を比較するランダム化試験によるエビデンスが必要です。

そこで今回は、ランダム化非盲検非劣性デザインを用いて、韓国の26の臨床センターで動脈硬化性心疾患(ASCVD)患者を、中強度スタチンとエゼチミブの併用療法(ロスバスタチン10mg+エゼチミブ10mg)または高強度スタチン単独療法(ロスバスタチン20mg)にランダム(1:1)に割り付けたRACING試験の結果をご紹介します。

本試験の主要評価項目は、intention-to-treat集団における3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死性脳卒中の複合でした(非劣性マージン:2.0%)。

試験結果から明らかになったことは?

2017年2月14日から2018年12月18日の間に、3,780例の患者が登録されました。併用療法群に1,894例、高強度スタチン単剤療法群に1,886例が登録されました。

併用療法群
(1,894例)
高強度スタチン単剤療法群
(1,886例)
絶対差
主要評価項目*172例
(9.1%)
186例
(9.9%)
-0.78%
(90%CI -2.39 〜 0.83
*主要評価項目:3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死性脳卒中の複合

主要評価項目は、併用療法群172例(9.1%)、高強度スタチン単剤療法群186例(9.9%)で発生しました(絶対差 -0.78%、90%CI -2.39 〜 0.83)。

(LDL-C濃度70mg/dL未満の達成率)併用療法群高強度スタチン単剤療法群
1年後73%
(p<0.0001)
55%
2年後75%
(p<0.0001)
60%
3年後72%
(p<0.0001)
58%

1年、2年、3年後のLDLコレステロール濃度70mg/dL未満は、併用療法群で73%、75%、72%、高強度スタチン単剤療法群で55%、60%、58%に認められました(いずれもp<0.0001)。

不耐性による試験薬の中止または減量
併用療法群88例(4.8%)
(p<0.0001)
高強度スタチン単剤療法群150例(8.2%)

不耐性による試験薬の中止または減量は、それぞれ88例(4.8%)、150例(8.2%)に認められました(p<0.0001)。

コメント

ASCVD患者におけるLDL-C値のコントロール戦略において、スタチンの単独療法あるいはスタチン+エゼチミブ併用療法が用いられますが、心血管イベントへの影響は充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、ASCVD患者において、ロスバスタチン10mgとエゼチミブ併用療法はロスバスタチン20mgに比べ、3年間の複合アウトカム(心血管死、主要心血管イベント、非致死性脳卒中の複合)は非劣性でした。一方、ロスバスタチン10mgとエゼチミブ併用療法はロスバスタチン20mgに比べ、LDLコレステロール濃度が70mg/dL未満の患者割合が高く、不耐性による薬剤の中断や減量が少ないことが示されました。

ストロングスタチンの高用量は、低・中用量と比較して、不耐性による薬剤の中断や減量が多いことが報告されています。これらのことから、ASCVD患者の治療戦略として、中強度スタチンとエゼチミブの併用は有効かもしれません。

続報に期待。

medical stethoscope with red paper heart on white surface

✅まとめ✅ ASCVD患者において、ロスバスタチン10mgとエゼチミブ併用療法はロスバスタチン20mgに比べ、3年間の複合アウトカムは非劣性であったが、LDLコレステロール濃度が70mg/dL未満の患者割合が高く、不耐性による薬剤の中断や減量が少なかった。

根拠となった試験の抄録

背景:1つの薬剤を増量するよりも、薬剤を併用する方が、より高い有効性と低リスクを達成することができる。したがって、高強度スタチン単剤療法の代替として、中強度スタチンとエゼチミブ併用療法は、副作用を軽減しながら効果的にLDLコレステロール濃度を低下させることができる。しかし、長期的な臨床転帰を比較する無作為化試験によるエビデンスが必要である。

方法:このランダム化非盲検非劣性試験において、韓国の26の臨床センターで動脈硬化性心疾患(ASCVD)患者を、中強度スタチンとエゼチミブの併用療法(ロスバスタチン10mg+エゼチミブ10mg)または高強度スタチン単独療法(ロスバスタチン20mg)にランダム(1:1)に割り付けた。主要評価項目は、intention-to-treat集団における3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死性脳卒中の複合とし、非劣性マージンは2.0%とした。本試験はClinicalTrials.gov, NCT03044665に登録され、終了している。

所見:2017年2月14日から2018年12月18日の間に、3,780例の患者が登録された。併用療法群に1,894例、高強度スタチン単剤療法群に1,886例が登録された。主要評価項目は、併用療法群172例(9.1%)、高強度スタチン単剤療法群186例(9.9%)で発生した(絶対差-0.78%、90%CI -2.39 〜 0.83)。1年、2年、3年後のLDLコレステロール濃度70mg/dL未満は、併用療法群で73%、75%、72%、高強度スタチン単剤療法群で55%、60%、58%に認められた(いずれもp<0.0001)。不耐性による試験薬の中止または減量は、それぞれ88例(4.8%)、150例(8.2%)に認められた(p<0.0001)。

解釈:ASCVD患者において、中強度スタチンとエゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法に比べ、LDLコレステロール濃度が70mg/dL未満の患者の割合が高く、不耐性による薬剤の中断や減量が少なく、3年間の複合アウトカムで非劣性であった。

資金提供:韓美製薬

引用文献

Long-term efficacy and safety of moderate-intensity statin with ezetimibe combination therapy versus high-intensity statin monotherapy in patients with atherosclerotic cardiovascular disease (RACING): a randomised, open-label, non-inferiority trial
Byeong-Keuk Kim et al. PMID: 35863366 DOI: 10.1016/S0140-6736(22)00916-3
Lancet. 2022 Jul 30;400(10349):380-390. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00916-3. Epub 2022 Jul 18.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35863366/

コメント

タイトルとURLをコピーしました