心不全合併の心房細動患者におけるアブレーションに基づくリズムコントロール vs. レートコントロール(PROBE; RAFT-AF試験; Circulation. 2022)

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心不全合併の心房細動患者におけるアブレーションに基づくリズムコントロールとレートコントロール、どちらが優れているのか?

心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば共存し、治療が困難となることがあります。心房細動の薬物療法によるリズムコントロールがレートコントロールより優れていることは証明されておらず、ハードアウトカムを含め予後について差がないことが示されています。しかし、アブレーションによるリズムコントロールとの比較は充分に行われていません。

そこで今回は、心不全を合併する心房細動を有する患者において、アブレーションによるリズムコントロールとレートコントロールを比較し、心房細動の臨床的予後が改善するかどうかを検討したRAFT-AF試験の結果をご紹介します。本試験は多施設共同オープンラベルで、中央判定委員会による盲検下でアウトカムが評価されました。試験対象者は高負荷の発作性(6ヵ月間に4回以上)または持続性(3年未満)のAF、NYHAクラスII~IIIのHF、NT-proBNP高値の患者であり、アブレーションによるリズムコントロールまたはレートコントロールにランダムに割り付けました。

本試験の主要アウトカムは、全死亡と全HFイベントの複合でした。最低2年間、追跡されました。本試験はデータ安全性モニタリング委員会により明らかに無益であると判断されたため、早期に中止されました。

試験結果から明らかになったことは?

2011年12月1日から2018年1月20日までに、411例の患者がアブレーションに基づくリズムコントロール(214例)またはレートコントロール(197例)にランダムに割り付けられました。

リズムコントロール群
(214例)
レートコントロール群
(197例)
ハザード比
(95%CI)
主要アウトカム50例(23.4%)64例(32.5%)HR 0.71
0.49〜1.03
p=0.066

主要アウトカムは、アブレーションベースのリズムコントロール群50例(23.4%)、レートコントロール群64例(32.5%)で発生しました(ハザード比 0.71、95%CI 0.49〜1.03、p=0.066)。

左室駆出率(LVEF)はアブレーションを受けた群で増加し(10.1±1.2% vs. 3.8±1.2%、p=0.017)、6分間歩行距離の改善(44.9±9.1m vs. 27.5±9.7m、p=0.025)、NT-proBNPの減少(平均変化率 -77.1% vs. -39.2% p<0.0001)が認められました。さらにQOLの指標であるMinnesota Living with Heart Failure Questionnaire(MLHFQ)は、アブレーションによるリズムコントロール群で大きな改善を示し(LSMD -5.4、95%CI -10.5 〜 -0.3、p=0.0036)、AF Effect on quality of life(AFEQT)スコア(LSMD 6.2、95%CI 1.7〜10.7、p=0.0005)も同様でした。

重篤な有害事象は両群とも50%に認められました。

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心房細動に対する治療として、抗不整脈薬によるレートコントロールあるいはリズムコントロールが予防的に行われます。
レートコントロール:心拍数があまり早くならないようする治療
リズムコントロール:発作的に生じる心房細動自体を起こさなくしようとする治療

不整脈薬には多数の種類がありますが、その効果は完全ではありません。したがって、服薬していても充分に心房細動をコントロールできないケースもあります。心房細動にはもともと薬が効きづらく、また、一時的に心房細動の発作予防に有効であっても、時間経過とともに薬の効果が弱まってしまう現象も知られています。さらに、抗不整脈薬は心臓および全身に副作用を生じる傾向も低くありません。一方、カテーテルアブレーションは、発作が起こる根本的な伝導路を焼却するため、根治的に治療できる可能性があります。しかし、手術による侵襲があるため患者負担を考慮すると、初回から選択されるケースは少ないです。心房細動の症状が強く、薬物によるコントロールが困難な患者に対して選択されます。

心不全は心房細動に高率に合併し、しばしば患者予後を悪くする因子として知られていますが、この心不全を合併する心房細動患者に対して、カテーテルアブレーションによるリズムコントロールとレートコントロールの効果比較は充分に行われていません。

さて、本試験結果によれば、高負荷心房細動と心不全を有する患者において、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して全死亡や心不全(HF)イベントに統計的な差はありませんでした。一方、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して有意ではないものの患者予後を改善する傾向がみられました。ただし、主要評価項目(アウトカム)は全死亡とHFイベントの複合であり、その内訳については抄録に記載されていません。どちらの治療が、全死亡イベントの発生をより抑えるのか、知りたいところです。

患者負担を考慮すると、やはり薬物治療が第一選択になると考えられます。カテーテルアブレーションについては、患者の症状や患者負担を考慮し選択した方が良さそうです。

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✅まとめ✅ 高負荷心房細動と心不全を有する患者において、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して全死亡やHFイベントに統計的な差はなかった。一方、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して有意ではないものの予後を改善する傾向がみられた。

根拠となった試験の抄録

背景:心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば共存し、治療が困難となることがある。心房細動の薬物療法によるリズムコントロールがレートコントロールより優れていることは証明されていない。そこで、心房細動を有する患者において、アブレーションによるリズムコントロールとレートコントロールを比較し、心房細動の臨床的予後が改善するかどうかを検討した。

方法:多施設共同オープンラベル試験で、中央判定委員会による盲検下でアウトカムを評価した。高負荷の発作性(6ヵ月間に4回以上)または持続性(3年未満)AF、NYHAクラスII~IIIのHF、NT-proBNP高値の患者をアブレーションによるリズムコントロールまたはレートコントロールにランダムに割り付けた。
主要アウトカムは、全死亡と全HFイベントの複合とし、最低2年間の追跡を行った。副次的アウトカムは、左室駆出率(LVEF)、6分間歩行試験、NT-proBNPとした。QOLはMinnesota Living with Heart Failure Questionnaire (MLHFQ) とAF Effect on quality of life (AFEQT) を用いて測定された。
主要解析はCox比例ハザードモデリングによるtime-to-eventとした。本試験はデータ安全性モニタリング委員会により明らかに無益であると判断されたため、早期に中止された。

結果:2011年12月1日から2018年1月20日までに、411例の患者がアブレーションに基づくリズムコントロール(n=214)またはレートコントロール(n=197)にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、アブレーションベースのリズムコントロール群50例(23.4%)、レートコントロール群64例(32.5%)で発生した(ハザード比 0.71、95%CI 0.49〜1.03、p=0.066)。LVEFはアブレーションを受けた群で増加し(10.1±1.2% vs. 3.8±1.2%、p=0.017)、6分間歩行距離は改善し(44.9±9.1m vs. 27.5±9.7m、p=0.025)、NT-proBNPは減少した(平均変化率 -77.1% vs. -39.2% p<0.0001)。MLHFQはアブレーションによるリズムコントロール群で大きな改善を示し(LSMD -5.4、95%CI -10.5 〜 -0.3、p=0.0036)、AFEQTスコア(LSMD 6.2、95%CI 1.7〜10.7、p=0.0005)も同様であった。重篤な有害事象は両投与群とも50%に認められた。

結論:高負荷心房細動とHFを有する患者において、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して全死亡やHFイベントに統計的な差はなかった。また、アブレーションによるリズムコントロールはレートコントロールと比較して有意ではないものの予後を改善する傾向がみられた。

引用文献

Randomized Ablation-Based Rhythm-Control Versus Rate-Control Trial in Patients with Heart Failure and Atrial Fibrillation: Results from the RAFT-AF trial
Ratika Parkash et al. PMID: 35313733 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057095
Circulation. 2022 Mar 22. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057095. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35313733/

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