IgA腎症患者におけるメチルプレドニゾロン経口投与による腎機能低下および腎不全に対する影響は?(DB-RCT; TESTING試験; JAMA. 2022)

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IgA腎症患者におけるメチルプレドニゾロンの影響は?

IgA腎症は糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続的にみられ、糸球体にIgAの優位な沈着を認め、その原因となりうる基礎疾患が認められないものと定義されています。IgAの沈着部位は主に腎糸球体のメサンギウム領域ですが、ヘンレ係蹄への沈着を認めることもあり、同時にC3の沈着も認めることが多いとされています。また、IgGやIgMの沈着も認めることがありますが、IgAが優位であるとされています。

IgA腎症は、日本をはじめアジア太平洋地域に多くみられ、遺伝的背景が想定されています。日本では、検尿による蛋白尿・血尿が発見動機の大多数を占め、急性上気道炎あるいは急性消化管感染症後に肉眼的血尿がみられることが報告されています。IgA腎症の治療は、いまだ確立された方法がなく、発症20年後には約40%が末期腎不全に至る予後不良な疾患であることが報告されています。

国内の診療ガイドラインによると、尿蛋白1g/日以上かつCKDステージ1~2のIgA腎症における腎機能障害の進行抑制ならびに尿蛋白の減少効果を有するためステロイド使用を推奨する(推奨グレード1B)、とされています。しかし、IgA腎症におけるグルココルチコイドの主要な腎臓アウトカムや有害事象に対する効果は充分に検討されていません。

そこで今回は、腎機能低下リスクが高いIgA腎症患者において、メチルプレドニゾロンの有効性と有害事象を評価したTESTING試験の結果をご紹介します。本試験は2012年5月から2019年11月までにオーストラリア、カナダ、中国、インド、マレーシアの67施設から、最適化されたバックグラウンドケアを3ヵ月以上行った後、IgA腎症、1日1g以上のタンパク尿、推定糸球体濾過量(eGFR)が20~120mL/min/1.73m2の503例を登録し、2021年6月までフォローアップした国際多施設、二重盲検、ランダム化臨床試験です。試験参加者は、経口メチルプレドニゾロン(当初0.6~0.8mg/kg/日、最大48mg/日、離脱は8mg/日/月:136例)またはプラセボ(126例)投与に1:1の割合でランダム化されました。262例がランダム化された後、重篤な感染症の過剰発生が確認されたため、後続の参加者に対し、減量(0.4mg/kg/日、最大32mg/日、離脱は4mg/日/月)とニューモシスチス肺炎の抗生物質予防投与が追加されました(メチルプレドニゾロン内服群 121例、プラセボ群120例)。本試験の主要エンドポイントは、eGFRの40%低下、腎不全(透析、腎移植)、腎臓病による死亡の複合でした。副次的評価項目は腎不全を含む11項目でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された503例(平均年齢38歳、女性198例[39%]、平均eGFR 61.5 mL/min/1.73 m2、平均蛋白尿 2.46g/日)中、493例(98%)が試験を完了しました。

メチルプレドニゾロン群プラセボ群
主要アウトカムの発生
eGFRの40%低下、腎不全(透析、腎移植)、
腎臓病による死亡の複合
74 例(28.8%)106 例(43.1%)
ハザード比 HRHR 0.53
(95%CI 0.39〜0.72
P<0.001
絶対年間イベント率差 -4.8%
(95%CI -8.0% 〜 -1.6%

平均4.2年の追跡期間中に、主要アウトカムは、メチルプレドニゾロン群の74 例(28.8%)に対して、プラセボ群の106 例(43.1%)で発生しました(ハザード比 [HR] 0.53 [95%CI 0.39〜0.72]; P<0.001; 絶対年間イベント率差 -4.8% [95%CI -8.0% 〜 -1.6%])。

主要アウトカムに対する効果は、各レジメンに採用されたプラセボ群の該当する参加者と比較して、各用量で認められました(異質性のP=0.11): 全用量HR 0.58(95%CI 0.41〜0.81); 減量HR 0.27(95%CI 0.11〜0.65)。

事前に規定した11の副次的エンドポイントのうち、腎不全(50 [19.5%] vs. 67 [27.2%]; HR 0.59 [95%CI 0.40〜0.87]; P=0.008; 年間イベント率の差 -2.9% [95%CI -5.4 〜 -0.3%] )を含む9つが、介入に有利な有意差が示されました。

重篤な有害事象は、メチルプレドニゾロンとプラセボの間でより頻繁に発生し(重篤な有害事象発生患者28例[10.9%] vs. 7例[2.8%])、主に高用量では、マッチするプラセボと比較して(22[16.2%] vs. 4[3.2%])、より頻繁でした。

コメント

国内の診療ガイドラインによると、尿蛋白1g/日以上かつCKDステージ1~2のIgA腎症における腎機能障害の進行抑制ならびに尿蛋白の減少効果を有するためステロイド使用を推奨する(推奨グレード1B)、とされていますが、エビデンスの質は中程度であり、充分に検討されているとは言えません。そのため、リスクベネフィットの評価が求められています。

さて、本試験結果によれば、進行リスクの高いIgA腎症患者において、メチルプレドニゾロンの6~9ヵ月間の経口投与は、プラセボと比較して、腎機能低下、腎不全、または腎臓病による死亡の複合アウトカムのリスクを有意に減少させました。ただし、高用量を使用した場合に、重篤な感染症を含め重篤な有害事象の発生リスクが高いことが示されました。そのため、本試験で用いられた低用量(0.4mg/kg/日、最大32mg/日、離脱は4mg/日/月)を目安にした方が良いと考えられます。

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✅まとめ✅ 進行リスクの高いIgA腎症患者において、メチルプレドニゾロンの6~9ヵ月間の経口投与は、プラセボと比較して、腎機能低下、腎不全、または腎臓病による死亡の複合アウトカムのリスクを有意に減少させた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:IgA腎症におけるグルココルチコイドの主要な腎臓アウトカムや有害事象に対する効果は不明であった。

目的:腎機能低下のリスクが高いIgA腎症患者において、メチルプレドニゾロンの有効性と有害事象を評価すること。

試験デザイン、設定、参加者:2012年5月から2019年11月までにオーストラリア、カナダ、中国、インド、マレーシアの67施設から、最適化されたバックグラウンドケアを3ヵ月以上行った後、IgA腎症、1日1g以上のタンパク尿、推定糸球体濾過量(eGFR)が20~120mL/min/1.73m2の503例を登録し、2021年6月までフォローアップした国際多施設、二重盲検、ランダム化臨床試験である。

介入:参加者は、経口メチルプレドニゾロン(当初0.6~0.8mg/kg/日、最大48mg/日、離脱は8mg/日/月:136例)またはプラセボ(126例)投与に1:1の割合でランダム化された。262例がランダム化された後、重篤な感染症の過剰発生が確認されたため、後続の参加者に対し、減量(0.4mg/kg/日、最大32mg/日、離脱は4mg/日/月)とニューモシスチス肺炎の抗生物質予防投与を追加した(メチルプレドニゾロン内服群 121例、プラセボ群120例)。

主要アウトカムと測定法:主要エンドポイントは、eGFRの40%低下、腎不全(透析、腎移植)、腎臓病による死亡の複合とした。副次的評価項目は腎不全を含む11項目であった。

結果:ランダム化された503例(平均年齢38歳、女性198例[39%]、平均eGFR 61.5 mL/min/1.73 m2、平均蛋白尿 2.46g/日)中、493例(98%)が試験を完了した。平均4.2年の追跡期間中に、主要アウトカムは、メチルプレドニゾロン群の74 例(28.8%)に対して、プラセボ群の106 例(43.1%)で発生した(ハザード比 [HR] 0.53 [95%CI 0.39〜0.72]; P<0.001; 絶対年間イベント率差 -4.8% [95%CI -8.0% 〜 -1.6%])。主要アウトカムに対する効果は、各レジメンに採用されたプラセボ群の該当する参加者と比較して、各用量で認められた(異質性のP=0.11): 全用量HR 0.58(95%CI 0.41〜0.81); 減量HR 0.27(95%CI 0.11〜0.65)。事前に規定した11の副次的エンドポイントのうち、腎不全(50 [19.5%] vs. 67 [27.2%]; HR 0.59 [95%CI 0.40〜0.87]; P=0.008; 年間イベント率の差 -2.9% [95%CI -5.4 〜 -0.3%] )を含む9つが、介入に有利な有意差であった。重篤な有害事象は、メチルプレドニゾロンとプラセボの間でより頻繁に発生し(重篤な有害事象発生患者28例[10.9%] vs. 7例[2.8%])、主に高用量では、マッチするプラセボと比較して(22[16.2%] vs. 4[3.2%])、より頻繁であった。

結論と関連性:進行リスクの高いIgA腎症患者において、メチルプレドニゾロンの6~9ヵ月間の経口投与は、プラセボと比較して、腎機能低下、腎不全、または腎臓病による死亡の複合アウトカムのリスクを有意に減少させた。しかし、経口メチルプレドニゾロンでは、主に高用量投与時に重篤な有害事象の発生率が増加した。

臨床試験の登録 ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01560052。

引用文献

Effect of Oral Methylprednisolone on Decline in Kidney Function or Kidney Failure in Patients With IgA Nephropathy: The TESTING Randomized Clinical Trial
Jicheng Lv et al. PMID: 35579642 DOI: 10.1001/jama.2022.5368
JAMA. 2022 May 17;327(19):1888-1898. doi: 10.1001/jama.2022.5368.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35579642/

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