コクラン・レビューで検証されたほとんどの医療介入は、質の高いエビデンスによれば有効ではない(J Clin Epidemiol. 2022)

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有効な医療介入はどのくらいあるのか?

エビデンスレベルが高いとされているシステマティックレビュー・メタ解析(SR&MA)は、個々の研究結果を統合することで、現時点における医療介入による治療効果、あるいは害の大きさについて推し量ることができる方法です。

コクランレビューは、メタ解析に組み入れる研究選択において、より厳格な基準を設けていることから研究結果の妥当性、得られる結論の高さに期待が寄せられています。しかし、コクランレビューであっても組み入れられた元研究の妥当性が高くない可能性もあるため、あくまでも得られた結果の質が高いのか低いのかを把握できる程度に過ぎません。つまり、全てのコクランレビューで得られた結果のエビデンスレベルが全て高いわけではないといいうことです。

そこで今回は、コクランレビューで検証された医療介入のうち、質の高いエビデンスに基づき有効であるとされる割合を推定した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

1,567件の適格な介入のうち、87件(5.6%)は、最初に挙げた主要アウトカムに関する質の高いエビデンスを有し、統計的に有意な正の結果を示し、レビュー著者によって有益であると評価されたものでした。

害は577件(36.8%)の介入について測定され、そのうち127件(8.1%)は害の統計的に有意なエビデンスを有していました。

コクラン著者の評価(GRADE評価を含む)の信頼性に依存することは、本研究の潜在的な限界でした。

コメント

患者に対する医療介入は、善意により行われていますが、その効果を継続的に検証する必要があります。なぜなら時代の変化に伴う環境の変化や医療提供体制の変化により、医療介入の効果が変化するためです。

さて、2008年1月1日から2021年3月5日の間に出版されたコクランレビューにおいて、1,567件の適格な介入のうち主要アウトカムに関する質の高いエビデンスを有し、統計的に有意な正の結果を示し、レビュー著者によって有益であると評価されたものは87件(5.6%)でした。一方、害については577件(36.8%)の介入について測定され、そのうち127件(8.1%)は害の統計的に有意なエビデンスを有していました。

医療介入の関心は効果に偏っているようでしたが、実際に有益とされたものは5.6%と、かなり低い値でした。医療介入の妥当性は、リスクベネフィットの評価が求められると考えます。害についても検証され、事象とリスクの程度、そして効果に対してどの程度許容できるのか判断する必要があると考えます。

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✅まとめ✅ 最近のコクランレビューで研究されたほとんどの医療介入は、質の高いエビデンスによってサポートされておらず、害は十分に報告されていなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:コクランレビューで検証された医療介入のうち、質の高いエビデンスに基づき有効であるとされる割合を推定すること。

研究デザインと設定:2008年1月1日から2021年3月5日の間に出版されたすべてのコクランレビューの中から2,428件(35%)をランダム抽出した。これらのレビューの中で、プラセボ、または無治療と比較され、そのアウトカムの質がGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)を用いて評価された介入についてデータを抽出した。
我々は、その有効性がGRADEに従った高品質のエビデンスに基づき、統計的に有意な正の効果を有し、レビューの著者によって有益であると判断された介入の割合を計算した。また、有害性が示唆された介入の割合も算出した。

結果:1,567件の適格な介入のうち、87件(5.6%)は、最初に挙げた主要アウトカムに関する質の高いエビデンスを有し、統計的に有意な正の結果を示し、レビュー著者によって有益であると評価されたものであった。害は577件(36.8%)の介入について測定され、そのうち127件(8.1%)は害の統計的に有意なエビデンスを有していた。コクラン著者の評価(GRADE評価を含む)の信頼性に依存することは、本研究の潜在的な限界であった。

結論:最近のコクランレビューで研究されたほとんどの医療介入は、質の高いエビデンスによってサポートされておらず、害は十分に報告されていない。

キーワード:エビデンス、疫学、害、質、安全性、システマティックレビュー

引用文献

Most healthcare interventions tested in Cochrane Reviews are not effective according to high quality evidence: a systematic review and meta-analysis
Jeremy Howick et al. PMID: 35447356 DOI: 10.1016/j.jclinepi.2022.04.017
J Clin Epidemiol. 2022 Apr 18;S0895-4356(22)00100-7. doi: 10.1016/j.jclinepi.2022.04.017. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35447356/

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