集中治療でのせん妄に対する予防的メラトニン投与は有効ですか?(RCT; Pro-MEDIC試験; Intensive Care Med. 2022)

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メラトニン予防投与はICU患者のせん妄を予防できるのか?

せん妄は高齢者のみならず、ICU入院患者や大手術を受けた患者など重症患者によく見られ、患者や家族などの介護者や医療従事者に大きな苦痛を与えます。また、せん妄は他疾患の併存率や死亡率を増加させる原因であることも報告されています。

メラトニン受容体刺激薬はせん妄の発生率を低下させることが日本を中心に報告されています。一方、多くの国や地域において、様々な患者群におけるメラトニンの予防的使用に関する研究結果は一貫しておらず、様々な結果が示されています。

そこで今回は、メラトニンの投与が重症患者におけるせん妄の有病率を低下させるかどうかを明らかにしたPro-MEDIC試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計847例の患者が試験に割り付けられ、841例がデータ解析に含まれました。参加者のベースライン特性はほぼ同様でした。

メラトニン群プラセボ群P値
平均せん妄フリー評価の割合79.280%p=0.547
ICU滞在時間(中央値)5日5日p=0.135
病院滞在時間(中央値)14日12日p=0816
90日を含むすべての時点の死亡率15.5%15.6%p=0.948

メラトニン群とプラセボ群では、患者1人あたりの平均せん妄フリー評価の割合に有意差はありませんでした(それぞれ79.2% vs. 80%、p=0.547)。ICU滞在時間(中央値:5日 vs. 5日、p=0.135)、病院滞在時間(中央値:14日 vs. 12日、p=0816)、90日を含むすべての時点の死亡率(15.5% vs. 15.6%、p=0.948)、睡眠の量や質などの副次的アウトカムにいずれも有意ではありませんでした。また、両群とも重篤な有害事象は報告されませんでした。

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メラトニンは不眠症治療だけでなく、せん妄の予防においても重要な役割を果たしていると考えられており、多くの臨床試験が実施されています。日本では「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」でのみ保険診療で処方されますが、成人に対する適応は有していません。

さて、本試験結果によれば、ICU入室後48時間以内に開始したメラトニン経腸投与は、プラセボと比較してせん妄の有病率を減少させませんでした。その他の評価項目においても同様に、群間差は認められませんでした。重症患者におけるメラトニンのルーチン使用はしない方が良いかもしれません。どのような患者でメラトニンが有用であるのか、検証が求められます。

一方、メラトニン受容体刺激薬であるラメルテオンについては、せん妄予防効果が示唆されていますので、こちらの続報に期待がかかります。

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✅まとめ✅ ICU入室後48時間以内に開始したメラトニン経腸投与は、プラセボと比較してせん妄の有病率を減少させなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:せん妄は重症患者によく見られ、患者や家族に大きな苦痛を与え、罹患率や死亡率を増加させる原因となる。様々な患者群におけるメラトニンの予防的使用に関する研究結果は、様々な結果を生み出している。本研究の目的は、メラトニンの投与が重症患者におけるせん妄の有病率を低下させるかどうかを明らかにすることであった。

方法:2016年7月から2019年9月にかけて患者を募集したオーストラリアのICU12施設にわたる多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検試験。予想滞在時間が72時間以上でICU入室を必要とする18歳以上の患者をICU入室後48時間以内に登録。識別可能な液体メラトニン(4mg、n=419)またはプラセボ(n=422)を14晩連続またはICU退院まで21時に経腸投与した。主要アウトカムは、せん妄の有病率の指標として、14日以内またはICU退室までにせん妄が発生しなかった評価の割合とした。せん妄は、Confusion Assessment Method for ICU(CAM-ICU)スコアを用いて1日2回評価した。副次的アウトカムには、睡眠の質と量、病院とICUの滞在時間、病院と90日死亡率が含まれた。

結果:合計847例の患者が試験に割り付けられ、841例がデータ解析に含まれた。参加者のベースライン特性はほぼ同じであった。メラトニン群とプラセボ群では、患者1人あたりの平均せん妄フリー評価の割合に有意差はなかった(それぞれ79.2 vs. 80%、p=0.547)。ICU滞在時間(中央値:5日 vs. 5日、p=0.135)、病院滞在時間(中央値:14日 vs. 12日、p=0816)、90日を含むすべての時点の死亡率(15.5 vs. 15.6% p=0.948)、睡眠の量や質などの副次的アウトカムにいずれも有意ではなかった。また、両群とも重篤な有害事象は報告されなかった。

結論:ICU入室後48時間以内に開始したメラトニン経腸投与は、プラセボと比較してせん妄の有病率を減少させなかった。これらの知見は、重症患者におけるメラトニンの早期ルーチン使用を支持するものではない。

キーワード:せん妄、集中治療、メラトニン、睡眠

引用記事

Prophylactic melatonin for delirium in intensive care (Pro-MEDIC): a randomized controlled trial
Bradley Wibrow et al. PMID: 35220473 DOI: 10.1007/s00134-022-06638-9
Intensive Care Med. 2022 Feb 27. doi: 10.1007/s00134-022-06638-9. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35220473/

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