増悪リスクの高いCOVID-19患者におけるファビピラビル早期投与の有効性・安全性は?(非盲検RCT; Clin Infect Dis. 2021)

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COVID-19に対するファビピラビル早期投与の有効性・安全性は?

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症、通称、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国湖北省で出現しました(PMID: 31986264)。その後、2020年3月11日に世界保健機関(WHO)によって世界的な大流行(パンデミック)と宣言されました(PMID: 32112977)。2021年11月現在、世界で2億4900万人以上の感染者と500万人の死者が報告されています(WHO)。現在までに、少なくとも332の治療法と276のワクチンがCOVID-19のために調査中です(MILKEN INSUTITUTE)。最小限の酸素補給を行っている患者へのレムデシビルの条件付き使用(NIH)は別として、モルヌピラビルやパックスロビドなどの新しい抗ウイルス療法は、高リスクの患者への使用により入院と死亡率の減少を示しました(PMID: 34750163PMID: 34607801)。SARS-CoVや中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)のような他のコロナウイルスに対して試験された抗ウイルス剤は、SARS-CoV-2の主要酵素を標的とし、宿主細胞内のウイルスサイクルを妨げ、ウイルス量とウイルス排出を減少させて病期を短縮することが臨床研究により示されています(PMID: 32423024)。

ファビピラビルは、RNAウイルスに対して幅広いスペクトルの活性を有する経口RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤です(IJPST)。日本では、新型インフルエンザおよび再興パンデミックインフルエンザに対して承認されています(PMID: 32423024PMID: 33130203)。また、in vitro試験において、ファビピラビルはSARS-CoV-2感染に対して安全な治療量内で有効濃度を達成することができます(PMID: 32423024PMID: 33130203)。感染初期にファビピラビルを服用した患者では、ウイルス排泄期間とエフェクター免疫反応の強度が減少する可能性があります(PMID: 33097472)。 ファビピラビルは、ウイルス量を減少させ、臨床的および放射線学的転帰を改善することが報告されています(PMID: 32346491PMID: 32972430)。ファビピラビルはCOVID-19感染症の治療において安全かつ良好な忍容性を示しました(PMID: 33212256PMID: 32405421)。51歳以上のCOVID-19感染者で、慢性腎臓病や慢性肺疾患を基礎疾患とする患者は、重症化するリスクが有意に高いことが示されました(PMID: 33521741)。本研究では、高リスクのCOVID-19患者において、ファビピラビルの早期経口投与開始による非低酸素症から低酸素症への臨床病態進行の抑制効果を検討することを目的としました。

試験結果から明らかになったことは?

500例の患者(平均年齢 62.5歳[SD 8.0]、女性 258例[51.6%]、COVID-19肺炎 251例[50.2%])をランダム化し、487例(97.4%)が試験を完遂し増した。

ファビピラビル群標準治療群オッズ比(OR)
低酸素状態への臨床的進行46例(18.4%)37例(14.8%)OR 1.30
(95%CI 0.81〜2.09
P=0.28
機械的換気の導入6例(2.4%)5例(2.0%)OR 1.20
(95%CI 0.36〜4.23
P=0.76
院内死亡5例(2.0%)0例OR 12.54
(95%CI 0.76〜207.84
P=0.08

低酸素状態への臨床的進行は、ファビピラビル+標準治療群 46例(18.4%)、標準治療単独群 37例(14.8%)に認められました(OR 1.30、95%CI 0.81〜2.09、P=0.28) 。

事前に指定した3つの副次的評価項目はすべて、両群間で同様でした。機械的換気の導入は6例(2.4%) vs. 5例(2.0%)(OR 1.20、95%CI 0.36〜4.23、P=0.76)、ICU入院は13例(5.2%) vs. 12例(4.8%)、院内死亡は5例(2.0%) vs. 0例(OR 12.54、95%CI 0.76〜207.84、P=0.08) で発生しました。

コメント

マレーシアの14施設で実施されたファビピラビルの非盲検ランダム化比較試験の結果が公表されました。

さて、本試験結果によれば、増悪リスクの高いCOVID-19患者におけるファビピラビル使用は、標準治療単独と比較して、増悪抑制効果に差は認められませんでした。また、ハードアウトカムである院内死亡においても群間差がありませんでした。その他、機械的換気の導入やICU入院についても群間差がなく、効果推定値をみてみると、むしろリスク増加傾向でした。これまでの試験結果も踏まえると、重症化リスクの高いCOVID-19に対するファビピラビル使用は有効でないと考えられます。

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✅まとめ✅ 増悪リスクの高いCOVID-19患者におけるファビピラビル投与は、標準治療単独と比較して、増悪抑制効果に差はなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19におけるファビピラビルの病勢進行抑制効果は不明である。増悪リスクの高いCOVID-19患者において、非低酸素状態から低酸素状態への病勢進行を抑制する効果を明らかにすることを目的とした。

試験デザイン:2021年2月から6月にかけて、マレーシア国内の公立病院14施設において、50歳以上で1つ以上の併存疾患を有し、発病から7日以内に入院した症候性でRT-PCRにより確認されたCOVID-19患者500例を対象に実施した非盲検ランダム化臨床試験である。患者は1対1の割合で、ファビピラビルと標準治療の併用群と標準治療単独群にランダムに割り付けられた。初日に1,800mgを1日2回投与し,その後5日目まで800mgを1日2回投与した。主要評価項目は、非低酸素症から低酸素症への臨床的進行率とした。副次的評価項目は、人工呼吸、集中治療室(ICU)入室率、院内死亡率とした。

結果:500例の患者(平均年齢 62.5歳[SD 8.0]、女性 258例[51.6%]、COVID-19肺炎 251例[50.2%])をランダム化し、487例(97.4%)が試験を完遂した。低酸素症への臨床的進行は、ファビピラビル+標準治療群 46例(18.4%)、標準治療単独群 37例(14.8%)に認められた(OR 1.30、95%CI 0.81〜2.09、P=0.28) 。事前に指定した3つの副次的評価項目はすべて、両群間で同様であった。機械的換気は6例(2.4%) vs. 5例(2.0%)(OR 1.20、95%CI 0.36〜4.23、P=0.76)、ICU入院は13例(5.2%) vs. 12例(4.8%)、院内死亡は5例(2.0%) vs. 0例(OR 12.54、95%CI 0.76〜207.84、P=0.08) で発生した。

結論:COVID-19患者において、病勢進行リスクが高い場合、ファビピラビルの早期経口投与は非低酸素状態から低酸素状態への病勢進行を抑制しなかった。

キーワード:COVID-19、病勢進行、ファビピラビル、ハイリスクグループ、死亡率

引用文献

Efficacy of Early Treatment with Favipiravir on Disease Progression among High Risk COVID-19 Patients: A Randomized, Open-Label Clinical Trial
Chuan Huan Chuah et al. PMID: 34849615 DOI: 10.1093/cid/ciab962
Clin Infect Dis. 2021 Nov 19;ciab962. doi: 10.1093/cid/ciab962. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34849615/

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